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自分、異世界で従者として働きます。  作者: Hirota
第一章 従者として
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異世界からの召喚者たち 前編

  「修学旅行楽しかったな」

  「でも、帰ったら高校受験かー。やだなー、俺絶対受からねぇよ。原田と同じ高校行けねぇよ」

  「そうだぞ、特に渡辺。お前は明後日の放課後から特別補修だ。原田と同じ高校に行きたかったら逃げるなよ」


  先生の言った渡辺いじりによって、バスに乗っているほとんどのクラスメイトが笑った。


  渡辺君はそりゃないっすよ~と言って場を盛り上げていた。


  今私たちは楽しかった修学旅行から帰ってきているところ。


  周りでは修学旅行での思い出などで盛り上がっていた。


  私はバスから降りるまで寝ようとした時、隣に座っている優衣ちゃんから話し掛けられた。何故か呆れた顔で。

 

  「‥‥‥ねぇ、ユキ。あんたいつあいつにちゃんと告白するのよ。結局、修学旅行中に告白しなかったじゃない」

  「ちょっ、優衣ちゃん。そのことは聞かないでよ」


  優衣ちゃんは小さい頃からの幼なじみで色々なことの相談にのってくれたりしてくれている。


けど、今その話題を振られると恥ずかしくなった。


  顔を赤くしていると、優衣ちゃんはバスの通路を挟んで座っている二人を見た。


  二人はイヤホンとヘッドホンをつけて気持ち良さそうに寝ている。


  優衣ちゃんはそこでため息を吐くと私に説教をし始めた。


  「せっかくケンジに頼んで、絶好のシチュエーションを作ってやったというのにあそこでへたれるなんて‥‥‥。なんで、あそこで高校受験こ話をして終わっちゃうの!?向こうは呆れてたよ!?だいたい、ユキは━━━」


  優衣ちゃんの説教を受けていると、突然今まで生きていて受けたことのない衝撃が体を襲った。


  窓の外を見ると、道路ではないところを走っている‥‥‥いや、落ちている。


  今さっきの衝撃はバスがガードレールに衝突して飛び越えた時のものらしい。


  皆が悲鳴を上げていたり泣いたりしている中、私は涙を流しながら悔やんだ。


  あの時、私がへたれないで告白すれば良かったと。


  もし、話すことが出来るなら、ちゃんとこの私の想いを伝えようと。でも、もうそんな機会はもうないのだろうと心の中で呟いた。


  目を閉じると涙が次々と溢れ頬をつたった。


  そして、時間がゆっくりに感じ始め走馬灯みたいなものが流れ始めた。


  私が初めて好きになった彼と修学旅行先の宿で話したときのシーンだ。


  せっかく優衣ちゃんとケンジ君に手伝ってもらって彼と話せる機会を作ってもらったのに、高校受験の話をしてしまったのだ。


  その時の彼は苦笑いをしながら、私の話に付き合ってくれた。


そのあと部屋に戻るとジト目で優衣ちゃんが迎えて説教が始まったのは言うまでもない。


  私は最後に心の中で呟いた。


  ━━う君、好きだったよ。


  目を開けるとそこはバスとは違う私たちが知らない場所だった。


  周りには今さっきまで一緒にバスに乗っていたクラスメイトと先生。


そして、黒いローブを羽織っている見知らぬ人たちと背中にマントをつけて目立っている男の人。


  クラスメイト全員がバスで事故に合ったのに何故生きているのだとパニックになり始めた。


  だが、先生が直ぐにパニックを治めクラスメイトの人数確認をし始めた。


  すると、マントをつけて目立っている男が私たちの前に出た。


  「初めまして、そしてようこそ異世界の召喚者たちよ。我はシューラ王国の王をしている、ヘルベルド・C・シューラだ。まずは君たちを強制的に召喚してしまったことについて謝ろう」


  私たちが落ち着き始めた頃に自分のことを王と言った男が軽い自己紹介と謝罪をしてきた。


  私たちは状況がわからず、混乱し始めた。中には夢にまで見た異世界だと興奮している人もいた。


  王様は場所を変えて改めて話をしようと言って、部屋を出た。


  皆が部屋を出て王様についていくなか私は彼が居ないことに気がついた。


  優衣ちゃんとケンジ君も彼を見ないことに気がついて辺りをキョロキョロと見回した。が、それでも彼を見つけることは出来なかった。


  私は泣きそうになった。せっかくあの状況から生きたのに肝心な彼がいないのだから。


  先生もクラスメイトの確認をしていて彼がいないことに気がついたのか、私たちに近づいて彼を見ていないよなと確認をしてきた。


  私たちはうんと頷くと、先生はそうかと言って部屋を出た。


  私たちも置いて行かれないよう部屋を出た。


  王様の後を追って歩くと、ここが異世界なんだと見せつけられる。


  すれ違うメイドたちが王様や私たちにお辞儀をしたり、兵士と思われる人たちが剣術の練習をしたり魔法の練習をしたりしている。


  それを見る度にクラスメイトたちはおぉーと感動している。


  でも、私はそんな風に思えなかった。彼と一緒にいたらならそう思えたかも知れないけど、彼は今いない。


  優衣ちゃんとケンジ君は私が考えてることがわかったらしく、私を安心させようと小声で話しかけてきた。


  「大丈夫だよ、ユキ。彼ならこの世界にいるって」

  「そうだな。あいつ一人だけ死んでいるわけないだろ。あいつのことだから、生きようと必死にやってるさ」

  「‥‥‥そうだね。私たちだけってわけじゃないよね。ありがとう。優衣ちゃん、ケンジ君」


  優衣ちゃんとケンジ君のおかげで少し前向きになった。

 

  そのあと少し歩くと王様が一つの部屋の前で止まった。


  「この先は玉座の間でな。これより君たちを配下の者と会わせる。君たちは部屋の真ん中で止まってほしい」


  そう言って、王様は玉座の間と呼ばれる部屋に入っていった。


  私たちが入っていくと、中に十数名の部下らしき人たちがいた。


  そして、そこは中世の城と神殿を掛け合わせた感じの美しく威厳を感じさせる部屋だった。


  主に白を基調とした柱と壁、床は大理石らしきものを使い、扉から玉座までを赤いカーペットが引かれていた。


  クラスメイト全員がその美しさに目を引かれていると、王様が大きな声で部下たちに言った。


  「この者たちはこの国に従えているなかで上位の魔術士たちによって召喚された者たちだ。我はこの者たちを客人として迎え、いずれ来るであろう災厄から助けてもらおうと考えている。異論が有るものは前に出よ!」



  王様がそう言うと、部下たちは異論がないと表すようにその場に膝まずいた。


  そして、王様は今度は私たちに私たちを召喚した経緯について話した。

 

  百年に一度、魔王がこの世に顕現して世界を魔人だけの理想郷を作ろうとこの世を破壊しようとすること。


 魔王が復活する際に、必ず魔物の増加や凶暴化が起き、それが最近増えていて各国が慌て始めたこと。


 それを抑えるため召喚術を使って、異世界から勇者と呼ばれる者を召喚したということ。

  全てを話した後、王様は頭を下げてから私たちに頼み込んだ。


  「君たちが平和な世界から来たことは知っている。争いや殺しあいを知らない子供たちを戦いの場に送りたくはないが、我々だけでは力が足りない。どうかこの世界を救うために君たちの力を貸してくれ」


  王様がまた頭を下げると、後ろにいた部下たちも頭を下げた。


  すると私のクラスの一人が代表して答えた。


  「‥‥‥頭を上げてください、王様。他の皆がどうするかわかりませんが、僕はこの世界を救うためだったら僕のこの力を貸そうと思います」


  彼の名前は原田優斗。学校ではかなり有名で、イケメンで勉強にスポーツなどをこなせる男の子。


  原田君がそう言うと、彼の近くにいたところから声が上がった。その声は原田君と親友である渡辺君だった。


  「しょうがねぇな。優斗が行くって言ってるんだから俺も行かなきゃな。なんたって俺はお前の数少ない親友なんだから、近くに居ねぇと寂しいと思うだろうし」


  世界を救うことに渡辺君も参加することを言うと、他の皆も自分の力が役に立つならと、少しずつ原田君たちと一緒に参加することを決めていった。


  優衣ちゃんも参加することを決めて残ったのは私とケンジ君。そして、先生だった。


  私とケンジ君がどうするか考えていると、先生が一歩前に出て王様に向かってこう言った。


  「王様、俺はこいつらの教師だ。そして、俺はこいつらを守らなきゃいけない義務がある。だから、俺はあんたの口から聞きたい言葉がある‥‥‥。こいつらを死なせるような無茶なことはさせないという誓いだ。それをあんたの口から宣言しない限り、俺はこいつらを連れていかせない。あと、一人生徒が見つからないから出来る範囲で良いから探してほしい」


  先生の言い方は自分たちの王様に対して無礼な言い方だったらしい。


玉座の間にいた兵士が殺気を立たせながら腰の剣に手をかけようとしていた。


  が、王様はそれをやめさせ先生を正面から見た。


  「お主に絶対とは言えんが、この子供たちを死なせるような無茶なことは我、ヘルベルド・C・シューラとして約束しよう。それと見つからないという子はあとで他の者に捜索させるよう伝えとく。これでよろしいか、先生殿」


  先生はそれを聞いて納得したのか下がって、目を瞑った。


クラスメイトは小さい声で、先生カッコいいとか、やっぱあいついないんだとか話していた。


  兵士たちは王様にやめろと命令されて、剣に手をかけていないが、自分たちの王に対して無礼だったのに謝罪も入れないことに先生を睨んでいた。


  先生が今何を考えているのかわからないけど、私たちのことを思って言ってくれたのが嬉しかった。


  そして、残った私たちを王様はじっと見てきた。君たちはどうする?と。


  すると、ケンジ君が一歩前に出て言った。


  「王様、俺もこの世界を救いたいと思ったが、俺の親友が見つかるまで待ってほしい。親友が見つかるまではちゃんと世界を救うことはするが、俺はあいつと一緒にこの世界を楽しみたい。あいつが世界を救いたいと言えば一緒に参加するし、この世界を見て回りたいと言えば一緒に見て回りたいと考えている。だからあいつと会ってあいつがこれからどうするかを聞くまで待ってください」


  私はいかにもケンジ君らしいと思った。彼と遊び始めてからケンジ君はよく彼とつるんでいた。


  彼といればどこで遊ぼうと楽しかったからだ。


  ケンジ君の意見を聞いてから、私はどうしようかと考えた。が、答えは直ぐに出た。


  「王様、私は━━━━」

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