再会
なんで今こんな状況になったんだろう。
僕に抱きついて生きてて良かったよと言いながら号泣している女の子と、その後ろでお前のことだから大丈夫だと思っていたよと言って目を潤ませながら笑っている男の子。
そして、僕にこの人たち知り合い?と目で聞いてくるレナと周りで今の状況についていけずポカンとしているこれから同じ寮に住む人たち。
‥‥‥一体なんでこうなったんだろ。
この出来事が起こる数十分前、僕はレナと夜ご飯に食べるカレーに何を入れるのかというある意味下らない論争をしながら歩いていた。
まぁ、論争よりただ自分の好きな具才を言い合ってるだけなのだけれど。
「「やっぱり豚(牛)でしょ!」」
そんな無駄な論争(?)をしながら歩くと、寮の近くまで来ていた。
「この話はあとにするか」
「そうだね」
二人は寮の呼び鈴を鳴らして、数分待つと寮のドアから一人の男が出てきた。
「おや?君たちは‥‥‥レナさんとロイ君かな?よく来たね。さぁ、寒いだろうから早く入りな」
そうニコニコしながら男は言った。
僕はその顔に警戒をした。この人はニコニコしている顔の奥で、僕たちを観察しているような気がした。
でも、すぐに警戒を解いた。
なぜと言われたら、警戒している僕の顔を見て少し柔らかくなった気がしたからだ。
それに、この人は僕やレナより桁外れに強いとあの顔から感じた。
僕が何か不審な行動をしたらすぐに取り押さえられる気がしたからだ。
僕たちは男の後を追って寮に入った。
「さて、ようこそクロウ寮へ、僕の名前はミハール。寮に住む子からはミハールさんって呼ばれているけど、好きな呼び方でいいですよ」
「私の名前はレナです。よろしくお願いします」
「‥‥‥僕の名前はロイです。よろしくお願いします」
そう言ってミハールさんと握手をすると、二階に上がる階段から声がした。
「ミハールさーん、その子達って新しく来た子ですか?」
後ろを振り向くと女の子と男の子が下りてきていた。
女の子はどこか良いところのお嬢様なのか上品な佇まいをしている。逆に男の子の方は女の子を護衛しているかのように後ろについている。
「えぇ、この子達が今日最後に来た子達今日最後に来た子達ですよ。自己紹介は皆集まってる時にやるとして、先にこの子達の部屋を案内させてやってください。部屋は二階の奥の部屋なので。私は夜ご飯の準備をしますので」
ミハールさんが奥に行こうとした時、レナが僕の耳元で囁いた。
「ねぇ、市場で買ってきた具材ミハールさんに渡さない?」
僕はそこで異空間保管から今日買ってきたカレーの具材をミハールさんに渡した。
ミハールさんは渡した材料を見て、僕たちが何を作ろうとしたのかすぐに気付いて、今日はカレーにでもしましょうかねと言った。
僕たちは階段から下りてきた二人の後を追って二階へと上がった。
軽く自己紹介をしようかと思ったけど、後でやるし何より女の子に付き添っている男の子がずっと僕を睨んでいて緊張してしまう。
レナはもう女の子と楽しく会話をしていた。
そんな風にしていると二階の奥の部屋に連れてこられた。
「ここがあなたたちが使う部屋よ。中はそれほど広くないけど二人で過ごすなら問題ないはずよ」
えっ!?ちょっと待って。それって‥‥‥
「やったね、ロイ。三年間一緒に住めるね♪」
僕はそこで膝をついて震えた。三年間もレナと同じ部屋で過ごすのか‥‥‥。
いや、レナと一緒は嬉しいんだけど男の子的にちょっと緊張するんだよな。
レナと女の子は何があったんだろうと首を傾げてた。男の子は僕と同じ境遇か同情の目で見ていた。
この人も同じ目に合ったんだと思った。
二人はこれから用事があるらしくまた後でと言って階段を下りていった。
レナはもう部屋のドアを開けて中に入っていった。僕もそれに続いて部屋に入った。
部屋はリビング的な広い部屋が一つに小さい個部屋が三つあった。
「オリバーさんな所ほどではないけどここも充分に広いね」
そう言うとレナは自慢するように胸を張って言った。
「ロイと一緒に寮生活過ごしたいって、おじさんに我が儘言ったの」
こんな状況したのはあんたのせいか!と思わず心の中で突っ込んだ。
部屋には最低限生活できる程度の家具しか置いてなかった。
とりあえず僕とレナはどの個部屋を使うか話した。二つをそれぞれ個人の部屋として使い残りの部屋を物置部屋として使うことになった。
僕はレナから預かってた荷物を返して自分が使う部屋に入った。
個部屋にはベッドと机に椅子、クローゼットがあった。
僕はクローゼットに今日買ってきた服を収納して部屋を出た。
レナはまだ荷物の整理が終わってないのか、部屋からまだ出てきてなかった。
レナを待つためリビングにあったソファーに座り天井を見つめた。
今日は昨日より忙しかったけど明日はもっと忙しくなるのだろうと考えていた。
すると、廊下の扉からコンコンとノックがされた。いますよーと返事をすると声が聞こえてきた。
「え、えーと、ミハール先生が皆を集めて自己紹介を兼ねた歓迎パーティーを開くから呼んできてと言われたので呼びに来ました」
僕は直ぐに行くと言って、レナを呼ぶためにレナの部屋の扉をノックしようと立ち上がるとレナが部屋から出てきた。
レナにこれから自己紹介を兼ねた歓迎パーティーをすると言うと、レナはパーティーという単語に反応して早く行こうと急かしてきた。
部屋を出ると部屋の前には気の弱そうな女の子が待っていた。
女の子に待たせてごめんねと言うと、い、いえ、待ってませんと逆に謝られた。
女の子の後に続いて階段を下りて、一階の食堂に連れてってもらった。
食堂に入ると数十名しかいないが色々な種族がいた。
皆が僕とレナに気づくと、勢い良く近づいて質問をして来た。
名前は?とか、出身は?とか様々な質問が飛んできた。
僕とレナが一つずつ答えようとしたとき、後ろから人が入ってくる気配がした。
振り替えるとそこには、僕たちを部屋に案内した二人組と黒髪の男女が立っていた。
黒髪の二人組を見ていると、少し懐かしい感じがした。てか、この二人組ってたしか‥‥‥
すると、黒髪の女の子が僕に向かって歩いてきた。
僕の周りに群がってた子達も少し離れた。
僕の前まで来ると潤んだ目で僕の顔を見た。
そして‥‥‥
「生きてて、生きてて良かったよぉ」
僕に抱き付いて泣き始めた。
ほんとなんでこうなったんだろ。