首が折れたぞぉぉぉぉぉ
「ここがボクの家だよ‼」
テトラの家はそれなりに大きい。てか看板がある辺り飲食店だろう。テトラについていき中に入った。
「ただいま~」
「テ……テトラ‼三日もどこに行ってたのよ‼パパ‼テトラが帰ってきたわよ‼」
「よかったわね。パトラ‼テトラちゃん帰ってきたのね」
「テトラちゃん帰ってきたのか‼よかったな探しても見つからないから心配したぞ‼」
テトラに綺麗な金髪のエプロンを着けたパトラという女性が大きな声を出しながら近づく。周りで食事をしていた人達も騒ぎ始めた。すると厨房からか包丁を持った大男が出てきた。鑑定スキルで名前がテクス・ストライザーとなっているので父親だろう。レベルが18と高めだ。
「テトラ何で帰ってこなかったんだ?まさか隣の奴等とずっと遊び歩いていたのか?」
「違うよ‼ボクは……」
やはり拐われましたとは言いづらいらしくシロが口を開けた。
「すまん。彼女は街の外で犯罪者達に拐われていたんだ。許してやってくれ」
「フン。どこの誰かも知らん奴にそんなことを言われてもなぁ‼」
「パパほんとだよ‼」
シロはこの状況がめんどくさかったらしく出ていこうする。
「じゃ、確かに送り届けたから俺達は出ていくわ」
するとテクスが背中を向けたシロの顔の真横に包丁が飛んできた。
「テトラに手を出してただで済むと思っているのか!?」
「俺に手を出してただで済むと思ってるのか?」
(これが主人公なんて私思いたくないなぁ)
テトラは二人を鎮めようとしているが、二人の気迫に押し潰されそうになっている中、クロのんきにそんなことを思っていた。
「表へ出ろ。相手してやるよ」
シロは外へ出ながらテクスに中指を立てて挑発していた。
「レベル3のガキが調子に乗りやがって。すぐにその鼻をへし折ってやるよ」
シロが外へ出るとテクスも出て二人は向かい合う形になり、その周りに人が集まってきていた。
「テクスに勝てるわけねぇよ。アイツは元C級冒険者でレベル16だぞ。D級冒険者でレベル3が勝てる訳がねぇ」
「仕事に就いて調子のってるバカなガキだろ」
周りの声が聞き耳スキルで耳に入る。そんな声が聞こえたので自分のステータスを鑑定スキルでみるとD級冒険者とかかれている欄が増えていた。
(へぇ、鑑定スキルで何級の冒険者かわかるのか)
シロはそんなことを考えているとテクスは走りだしこちらに殴りかかってきたのでそこに軽く拳を合わせ受け止める。
「なっ……」
「嘘だろ‼テクスの拳と同等だと‼」
拳を止められたテクスと周りが驚くがクロは当たり前よとでも言いたげな顔をしていた。シロは何か思いついたような顔をして、峰打ちスキルでテトラの腹を蹴り距離を取らせる。シロはまた殴る蹴るのコンビネーションを繰り出すテクスに対し避けたり受け流す。するとテトラの力を込めた一撃がシロの頬に直撃する。
「グハッ‼」
ーーグキッ
鈍い音がシロから聞こえた。そのあとの光景に周りの人達は絶句していた。クロやテトラまで驚いた顔を隠せなかった。シロの顔が百八十度ほど回転して後ろに倒れていた。
「テクス‼首折り曲げるほど本気で殴るやつがいるか!」
妻のパトラが言うがテクスも予想外だったようで驚いた顔を隠せない。テトラも顔を真っ青にして泣きそうになっていた。
「フハハハハハハハ‼あぁ腹痛い‼アハハハハ」
首が回ったシロが倒れた状態で笑い転げていた。シロは足を上げて手で体を押し上げ体を跳ね上げると顔を両手でグキッと戻す。
「クロ‼お前が驚くなんて珍しいな‼心配したか?心配したか?」
「す、するわけないでしょ‼」
「グェッ‼」
シロはクロ近づきながら煽っていたが、クロが怒りながらシロの腹にアッパーが入ると体が空高く飛びテトラの家にドゴォンと音を立てて落ちた。普通ではない光景を見て周りの人達は困惑していた。
「あっ……ホントスイマセン」
クロはテクスにそれは見事な土下座を見せた。
◇
夕日が沈み始めた頃やっとテクスもパトラも話を聞いてくれ納得してくれたらしい。助けてくれたお礼に家の天井の穴を開けた事は無かったことにしてもらった。
「お前ら住む場所はあるのか?人拐いなんてもんがいるなら泊まった方がいいぞ」
テトラが今までとはあり得ない優しい顔で言ってくるので言葉に甘え泊まることにした。
「ほんとにシロとクロは同じ部屋でいいのか?」
「いいわよ。襲ってきても私の方が強いし」
「襲うか‼誰がお前みたいなキュッキュッキュッ女‼」
「誰がキュッキュッキュッ女よ‼」
テクスの発言によりシロとクロが喧嘩するがパトラがテトラの妹パトスが泣くからやめてと言うのでクロが一撃でシロを気絶させ終わった。
結果シロとクロ一つの部屋で泊まることになった。
◇
風呂を済ませてシロが部屋に戻るとクロとテトラが俺より先に風呂に二人で入っていたので先に待っていた。それからはいろんな話をした。
「あの首が回るやつどうやったのよ‼」
クロが気になったらしく聞いてきた。
「空手はどの流派も体が柔らかくなくちゃいけないんだよ」
シロはそういいながら開脚して体を前に倒し床にくっつける。
「キモッ」
「何年も柔軟体操し続けて得た技術だぞ。そんな風に言うな」
クロは引きながら言うがシロは怒りながら言った。
「ボクは全然つかないや」
「私もつかないわね」
二人も始めたがテトラは胸があるので頑張ればそのうちつきそうだがクロは絶壁によりつく気配はない。
「お前は胸がないからつかねぇよ」
「あんたもないでしょうが‼」
三人ともしばらく続けたが疲れがたまっていたので明日は二人で屋根の修理代を稼ぎにクエストをすると決めて寝るとした。
◇
「おはようシロくん。こっちに来てから楽しそうだね」
青髪に褐色の肌の男が話しかける。シロは目を覚ますと草木の生えた空間にいた。
「異世界にきて始めて魔法を使った感想はどうだい?気持ちよかったろ。山を一つ消し飛ばすなんて普通はできないよ」
「爽快感が無かったと言うと嘘になるが魔物達が可愛そうになるな」
「大丈夫。魔物はどんどん殲滅した方が僕達神は喜ぶよ」
金色の林檎がなる木の下にいるクロノスは笑顔でそういう。
(神は喜ぶ?僕達?神は複数いるのか?確かに魔法を使うときアレスだの言っていたが)
シロはそんなことを思っていたがクロノスは近づき笑顔で言った。
「あの魔法が無詠唱で撃てたらかなり便利だと思わないか?」
「嫌だ」
シロは即答しクロノスはその言葉に驚いた。
「なぜだ?無詠唱が使えれば時間ロスもないし効率的じゃないか」
「あんなかっこい詠唱を飛ばすなんて勿体ないだろ」
「マジスカ」
シロの言葉に力なく棒読みでクロノスが言った。
「ならしょうがない。なら君には面白いものをあげるよ」
クロノスは青い焔をシロの胸に押し込んだ。
「起きると面白いものを得ているはずだ。あと仕事を決めたらしいね。あれは僕の使いと悪魔殺者は得た方がいいよ。」
「なぜだ?」
「そのときが来てからの秘密だよ」
そういいながらクロノスはシロにウィンクをしながら手を伸ばす。
「君達のこれからの活躍を期待しているよ」
そうクロノスが言うとシロの意識が遠くなる。
「……ろーーー!」
「……きろーーー!」
「起きろって言ってるでしょ‼」
「グハッ‼」
起床とともに耳障りな声と共にビンタがシロに炸裂すると軽く吹き飛ぶ。
「何すんだよ‼」
「何すんだよ‼じゃないわよ‼今日はクエストに行くって言ったじゃない‼もうお昼過ぎよ‼」
「マジか。お昼寝しよう」
クロが怒っているがシロは二度寝をすると二度目のビンタが炸裂する。
◇
「働きたくないでござる‼働きたくないでござる‼」
「現実をみなさい」
クロに引っ張られシロが叫ぶ。ギルドにつくとクロは仕事を決める水晶に手を翳した。
「わぁ、いっぱい仕事があるね」
「何でジョブを増やすんだ?」
「寝た後クロノスに会って悪魔殺者と神の使いは得った方がいいって言われたのよ」
そういえばそんなことがあったなと思いながらシロはクロに仕事の効果を聞く。悪魔殺者は悪魔に特攻がつく。神の使いは体力、魔力、攻撃力、魔法攻撃力、耐久力、器用、敏捷、運のステータスが5%ほど上がる効果だ。
「は?まだ強くなるのかよ‼」
焦ったシロは水晶に手を翳し悪魔殺者と神の使いを追加する。
「よし!クエストを受けましょう‼」
クエストボードに向かうと三十枚ほどクエストがあったがD級冒険者が受けれるクエストは縛られているようだ。
「これなんかどう?受けれるなかで一番高いわよ」
クロが取った紙を見ると近場の洞窟に住み着くゴブリンの討伐だった。
「そのクエストはやめた方がいいぞC級冒険者二人ととD級冒険者が三人で失敗したクエストだ。恐らくそのうちC級かB級クエストに上がるだろう」
そう言い止めてくる中年の男をシロが鑑定スキルで見るとレント、レベル18、B級冒険者と出る。
「忠告どうも、よし行くぞ‼」
シロはレントの話を聞き流しクエストを受けようとする。するとレントはシロの肩を掴み、引っ張り振り替えさせようとする。だがシロは少しも動かずにいた。
「その程度か?さっさと消えろ」
「D級が舐めた口聞きやがって‼ティファー訓練所借りるぞ‼ボコボコにしてやるよ」
レントはそう言うとギルドのクエストボードの横の通路を歩いていった。
「よし!クエスト受けるか‼」
「いや戦ってあげなよ‼」
シロはそのままクエストを受けようとするとクロ言われすごく怠そうな顔をした。
「頑張れよ‼応援してるぜ‼」
そんな声を聞き振り向くと赤髪の少年がいた。オルファス、レベル6、D級冒険者と出る。
「昨日のテトラとの戦い見てたぜ。強いんだなお前‼」
「なぁ、変わりに受けてきてくれないか?」
笑顔でいたオルファスがシロ言葉に顔を青くした。
「彼はあれでもこの街でそれなりに名が通った冒険者で、倒せる可能性があるのはテトラさんか同等に戦ったシロぐらいだよ」
オルファスがそう言うのでシロはため息を吐きながら歩き出した。
「しょうがねぇなー‼まぁジョブを試すのにちょうどいいだろ」
そう言い通路を通り訓練所に入る。そこは闘技場のようになっていて真ん中でレントは待っていた。闘技場の周りに観客席がありそこに何人か冒険者がいた。レントに追い出されたらしい。さっきから愚痴がシロの耳に入る。
「逃げずに来たようだな‼誉めてやるよ‼」
「はっ、お前みたいな雑魚に逃げるはずないだろ‼バァーカ‼」
「バカは言ったやつがバカなんだよ‼バーカ‼」
二人の会話に観客席にいるクロが呆れる。
「低脳の会話だ……」
「うるせぇー‼聞こえてんだよ‼」
クロの発言を聞き取ったシロが叫ぶ。
「んで?やるんだろ?さっさとしろよ」
「いいのか?お前武器持ってないじゃねぇか。剣と杖どちらがいい。やるよ」
そう言うとレントは小袋から剣と杖を出す。この小袋はアイテムポーチといい空間魔法の魔法陣が埋め込められており、見た目より収納量が多い冒険者には必須アイテムだ。
レントは剣と杖を投げシロは杖を掴みとり剣を峰打ちスキルを使い軽く投げ返す。杖は魔法攻撃力を上げたり消費魔力を軽減する武器だ。
シロは杖をレントに構えレントは剣を構え走り出す。シロはレントに向け唱える。
「火を司る大神アレスよ。火の魔導書第一章を開け‼火球‼」
大賢者の高速詠唱スキルにより若干詠唱を早く発音する。さらに峰打ちスキルで火力を調整し手のひらサイズに魔法陣を抑え放つ。するとレントが唱える。
「水を司る大神ネプチューンよ。水の魔導書第二章を開け‼水壁‼」
すると水の壁が現れレントを包み火球が水に包まれ消される。
(よし‼水魔法ゲット‼)
シロはステータスを見て早速水魔法を唱える始める。
「水を司る大神ネプチューンよ。水の魔導書第一章を開け‼水球」
「土を司る大神ガイアよ。土の魔導書第二章を開け‼土壁‼」
レントは相性がいい魔法を使い上手く防ぎ続けていた。
「シロ絶対魔法覚える気満々よね」
クロ言う通りシロは盗み土魔法の詠唱を始める。
「土を司る大神ガイアよ。土の魔導書第一章を開け‼土球‼」
「風を司る大神アテナよ。風の魔導書第二章を開け‼風球‼」
レントが唱えるが風の壁は現れず土球が飛んでくるがとっさに剣で弾く。シロが鑑定スキルを見る魔力ほぼなかった。魔素切れだろう。そのまま剣で斬りかかるレントに対しシロは詠唱を始める。
「風を司る大神アテナよ。風の魔導書第一章を開け‼」
シロの握りしめた右手に臼緑の魔法陣が現れる。
「付加‼」
シロは拳に風の魔法を付加させ降り下ろされた剣を体を傾け避けると、顔に叩き込む。
「ガハッ‼」
拳を叩き込まれたレントは吹き飛ばされる。
「チッ!光と闇魔法も覚えたかったのに‼まぁ鑑定スキルと峰打ちスキルがレベル3になったからいいとするか」
シロは倒れた気絶し白目を向いているレントに手を伸ばし言った。
「ありがとな。お前の事は三日程度は忘れないぜ」
そう言うとシロは伸ばした手でレントの瞼を閉じた。
「死んでねぇよ‼勝手に殺すな!」
レントは目を覚まし体を起こす。起こすとため息を吐きながら言った。
「お前思ったより強いな‼お前らならゴブリン達も倒せるだろ。頑張って来いよ」
ーーォオオオオオオオォォォォォォォォォ‼‼
「あのレントを倒しやがった!」
「あのガキやるじゃねぇか‼」
そうレントが言うと立ち上がり訓練所を出ていった。観客席にいた冒険者も歓声を上げた。
「ツンデレント」
クロはそんなことを呟きながらシロと訓練所を出てティファーにクエストを受けに行った。
五話更新でーす。文章を五千文字を越えるようにしました。長かった。これからも越えるよう頑張っていきます!