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あ、これ詰んだわ

遅刻遅刻!

私ユメヤ、普通のなろう二年生!

今日は始業式の日……なんだけど、朝から早速寝坊しちゃった♪


と、まあ遅刻しました。

ごめんなさい。


「会ってもらいたい人がいるの」


そう行って連れて来られた王城のとある一室。

勇者はお呼びではないのか城に入る前に、彼はどこかに追い払われた。

そんなわけで、コユキちゃんがその「会ってもらいたい人」を連れてくるまでの間、俺はこの妙に可愛らしい部屋で一人出された紅茶を飲みながら彼女が帰ってくるのをひたすら待っているのだった。


「しかし……これはコユキちゃんの趣味なのだろうか?」


ピンクの壁紙が貼られた部屋のあちこちに置いてあるクマの縫いぐるみ。

それも、デフォルメされたものではなく、超リアルな物が原寸大から小さい物までいくつもあった。

なんともまぁ、ミスマッチだと思う。


「……………………」


そんな風に思考を巡らせる俺の耳に、何か声らしきものが聞こえたような気がした。

部屋を見渡すが残念なことに声を発したと思われる人物はいない。

きっと空耳だろう。


「…………………」


「…………………」


やっぱ何か聞こえる。

なんだ?ここはあれか?

幽霊屋敷的な何かなのだろうか?

取り敢えずは挨拶だけしておいた方がいいかな?


「どうも、『フレイヤ相談所』所長のツユリ・ヨウです。以後お見知り置きを………って一人で何を言っているのやら………」


側から見たら完全に痛い人だ。

この部屋に他に誰もいなくてよかった。


「あっ……はい……よろしく…です」


女の子の声が聞こえた。

やっぱなんかいる!?


「えっと、できれば姿を見せてくれると話しやすいんだけど……。このままだと俺、電波受信してる痛い人になっちゃうから」


せっかくコユキちゃん達の失った信頼を巧みな口上で取り戻したというのに、また変なレッテル貼られたらもう立ち直れないぞ?


「で、でも……わかりました」


そう言うと、原寸大のクマが急に動き出した。


「解除します」


しかし、原寸大のクマは少女の声をきっかけにその姿を歪めていく。

そしてクマの姿が溶けていき、その中から現れたのは……。


「え、えとえと、初めまして。ユキヒメです」


メイド服を着た小さな銀髪碧眼の幼女だった。


「ユキヒメ……?」


なんかまた日本名っぽいニュアンスで来たな…。

まさか………いやまさかな……。


「で、キミはこんなところで一体なにをしていたんだ?」


「貴方の方こそ、どうしてこのお城にいらっしゃったのですか?」


「俺?俺はまあアレだ。なぜかと言われると、分からんとしか返せない。だって会って欲しい人がいるということ以外になんでここに連れて来られたのかその理由をまだ聞いてないんだもん」


「………だもん?」


「そういえばコユキちゃん、なかなか帰って来ないけどどうしたんだ?」


「…………コユキちゃん!?」


「あっ」


ミスった。

この城で、『コユキちゃん』は流石にまずいだろ。

しかもバッチリ聞かれてるし……。

これは本格的に不敬罪で殺されるルートか!?

嫌だ!まだ死にたくない!

って、もう何十回と死んでるんだけどね?

てへっ♪


「え、えっと……キミ、今のは聞かなかったことにして欲しいのだけど……」


「ユキヒメ」


「へ?」


「お姉様のように名前で、ユキヒメと呼んでください」


そう言ってきゅっと俺の服の裾を握るメイドさんもといユキヒメちゃん。

涙を溜めた瞳で上目遣いというひどくあざとくも強烈な攻撃を前に、俺は成すすべもなく縦に首を振っていた。

これはもう男の性だから仕方がない。

そんなことよりも、なにかものすごく重要なカミングアウトを聞いたような気がするんだけど……………まあいいや。

大事なことならその内思い出すだろう。


「それよりも貴方は外からいらしたのですよね?」


「まあそうなるかな」


「是非!私に外のお話を聞かせください!」


「お、おぅ」


最初の大人しそうな印象は何処へやら。

瞳をキラキラと輝かせてせがむ彼女の姿は、先ほどのイメージと打って変わって年相応の普通の女の子に思えた。


「よし分かった。外の話どころか異世界の話までしてやろう!」


「異世界……ですか?」


「うん、異世界。俺、異世界からやって来た異世界人」


「本当ですか!?」


「おうとも」


「す、すごいです………っ。是非お話を聞かせてください!」


「いいだろう。いいか、まず俺がいたのは地球っていう惑星の日本っていう国の…………」


俺はユキヒメちゃんに俺の元いた世界のことを話し始めた。

俺の話を聞くユキヒメちゃんは、それはもう瞳をキラキラと輝かせ、身を乗り出す勢いだった。

特に、科学サイドの話になると積極的に質問をしてくるまでに至り、俺もまた地球の科学技術の結晶の話を鼻高々にしたのだった。

え?お前が開発したわけじゃないだろって?

そうだけど、同じ地球人が開発したんだから胸を張ってもいいじゃん。

そんなこんなで話しは進み、地球のゲームの話になった。


「お兄様の世界はすごく娯楽に溢れた文化なのですね」


「あぁ、近代のものだとVR………ヴァーチャル・リアリティーっていうんだけど、これがまたすごいんだよ」


「ど、どんな風にすごいんですか……?」


ユキヒメちゃんはゴクリと息を呑み、真剣な眼差しを俺に向ける。

つられて俺もシリアス顔で頷いた。


「この技術のすごいところは、特殊なゴーグルを装着するだけでまるでゲームの中に入ったような体験ができるんだ」


「げ、ゲームの……?」


「そう、その世界では俺たちは何にでもなれるし、なんだってできる。まさに今までの『ゲームとは操作するもの』という概念を根本から覆した技術とも言える」


「ほわぁ…」


実際に頭の中でイメージしているのだろうか?

ユキヒメちゃんはうっとりした顔で奇妙な声をあげた。

……………冷静に考えたら、こんな小さな子に一体何を語っているのだろうか?


「そうだ。なにか簡単なゲームでもしないか?」


「簡単なゲームですか?」


「そう。ちなみにユキヒメちゃんはこんなゲームを知っているか?」


俺の言葉に期待を寄せるユキヒメちゃん。

可愛いな……。

いや、妹的な意味でね?

決して恋愛対象としてじゃないからね?

……………まあ信用できないって言われたら何も言い返せないんだけど。


「俺の世界にはこんなゲームがあった。その名をリバーシという」


要はオセロだ。

交互に盤面へ石を打ち、相手の石を挟むと自分の石の色に変わり最終的に石の多い方が勝ち(wiki参照)という至極簡単なルール。


「リバーシ………?」


コクリと首を傾げる姿がまたすごく愛らしいが、ここでは敢えて触れないでおこう。


「先ずは盤面作りと石作りからかな。なにか色を統一できそうな物ってないかな?できれば二色あるといいんだけど」


この世界では紙というのは貴重だ。

日本のようにホイホイと使い捨てられる物ではない。

きっとこの世界の人がポケットティッシュを配っている光景を目撃すれば、その表情は驚愕に染まることだろう。

というわけで、紙で作ればいいじゃん。とかいう無粋なことは言わないよ。


「あ、それなら……」


と、数分後。

思いの外簡単に物は揃った。

でも……。


「でも、やっぱり本物を再現はできないよな…」


できたのはリバーシとは呼べない代物だった。

だって、ひっくり返らないんだもん。

でもまあそれについては、石を挟んだら自分の色の石と交換すればいいだけの話だ。


「そんなことよりも、………こんなに高級なリバーシセットってなかなかないよな……」


「?なにか変でしたか?」


「変……ではないんだけどね?」


でもさ、まさかこの人生において宝石でリバーシをする日が来るとは思わなかったよ………。


俺たちの手元にあるのは、透き通るまでの透明度を誇るルビーとサファイアだった。

しかもそれが六十四個ずつ。

盤面も黒曜石線を引いて代用。

…………ヤベェな。いろんな意味で。


というか、一使用人がなんでこんなに高価なもの持ってるの?

なんだろう………この何度も経験したことのある、なにかものすごく取り返しのつかないことをしているようなこの感覚。

……やめよう。

考えれるから気になるんだ。

今は目の前の女の子と楽しく遊ぶことだけに集中していればいいんだ。


そう思うと、少しだけ心が軽くなった。

ような気がした。


「じゃあルール説明な?こうして交互に石を置いていって、最終的に盤が全部埋まった時に相手の石より多ければ勝ちという簡単なゲームだ。ちなみにここからが細かいルールなんだけど…………………」


どうやらユキヒメちゃんはとても賢い子らしく、今の話の内容をたったの三分で覚えてしまった(俺の説明時間も含まれます)。

どこの料理番組だよ。


「それじゃあ、始めよう。ゲームスタート!」


一時間後…


「負けました…」


「勝ちました!」


はい、ここに居ますは初心者、しかも幼女相手に全力で挑んでボロボロにやられた最低野郎でございます。

もうこの子後半なんてずっと俺のターンをやってたし。

泣きたいよ……。

泣きたいよっ!


「お兄様!もう一度やりましょう!」


「ユキヒメちゃん、少しだけ休ませて…。お兄様はもう疲れたよ……主に心が」


というわけで小休憩……に入ったその時だった。

我らのコユキちゃんが帰ってきた。


「ごめんね〜、お待たせして悪いんだけど、あの子まだ見つからないのよ…………ってヒメちゃん?」


一人で石並べをしていたユキヒメちゃんは、お目々をパチクリさせるコユキちゃんを見つけると、大きな爆弾を落とした。


「あ、ユキお姉様!」


………………………。




「……………おねえさま?」


その瞬間とある記憶が蘇った。


『「お姉様のように名前で、ユキヒメと呼んでください」』


あ、あはぁ〜〜〜。

…………あ、これ詰んだわ。

さて、ヨウくんがコユキちゃんを呼ぶ時の呼称とユキヒメちゃんがヨウくんを呼ぶ時の呼称の件でとても気になる方もいると思いますが、それについてはいつか語りましょう。

…………いつかがあれば……ですけどね。


余談ですが、今作品とうとう十万文字を超えました。

長かったですねー。


もう一つ余談ですが、総pvが10000を超えました。

え?たったのそれだけwwwwwww

とかお思いでしょうが、それでも私としては記念すべき10000pvなので、祝ってくれるとありがたいです。


では、また会いましょう!

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