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多分、今俺が一番悲しいと思うよ…

新章開始ですよ〜。


「お兄ちゃん!すごいの!すごいんだよ!」


ローロちゃんのテンションがやたら高い。

普段のテンションの高さを一とするのなら、今のそれは八くらいだろう。

ピョンピョン跳ねながら俺の手を嬉しそうに引くローロちゃんはすごく可愛い。

しかしローロちゃん。

俺も今や恋人がいる身なんだ。

もう少し自重してくれないと、俺のロリコン疑惑に更に尾ひれがついてしまいそうなんだよ。


「すごいのは分かったけど、一体なにがすごいんだ?」


「お仕事が来たの!」


「おー、それは確かにすごいな」


ウチの事務所に客が来るなんて、あのワズリットの件以来だから、ざっと二ヶ月ぶりじゃないか?


「所長さんがそんなこと言ってるからお客さんも来ないんだよ」


「え、マジで?ウチが売れないのって俺がいけなかったの?」


「うん!ステラお姉ちゃんが所長さんをやってればもっと繁盛してるよ絶対!」


満面の笑顔でなかなかにひどい事を言ってくれる。

でも、俺もそう思っちゃってるからなぁ。

そもそも、なんでルールさんは俺に事務所を託したのだろう?

まあ、あのなんでも見通す町一番の占い師のやる事だからきっと意味があるのだろうけれど、少なくとも今の所は全く理解できかねている。

いや、もしかしたら単に俺がルールさんの思う以上にダメなやつなのかもしれない。


「ローロちゃん。ごめんな、こんなダメな兄で……」


「お兄ちゃん、それは言わない約束でしょ?…………事実なだけに悲しくなっちゃうから」


「多分、今俺が一番悲しいと思うよ…」


と、軽く小芝居を打っていると懐かしい顔が歩いて来た。


「あれ、店長じゃないか」


「お、変態ストーカー勇者じゃないか」


そう、それはちょっと前にウチにストーカー依頼に来た変態もとい、勇者クロウ・メニアだった。


「ちょっ、やめてくれよ。こんなところでそういう事ういうのはさ。これでも俺にだって立場ってものがあるんだから」


「立場……ねぇ。そういえばあれからエルマくんとはどうなったんだ?」


「ああ!そうだった聞いてくれ!実は俺たち真剣に付き合うことになったんだ!」


…………………………え"?


「ま、待ってくれ!なにをどうしたらあの状況からそんなことになるんだよ!?完全に嫌われてたじゃないか!?」


「そこはあれだ。愛の力?ってやつで」


胡散臭い力だな!おい!?

愛の力以前に、エルマくんからは愛の『あ』の字さえ感じられなかったぞ!


「第一エルマくんって好きな子がいたはずだろ!?」


「なんかフラれたって言ってた」


「はい、フリました!」


「え?」


クロウにとってはここで初めて明かされる事実。

そう、何を隠そうエルマくんの好きな子とは、今目の前にいるローロ・ルルール・ルーラーちゃんその人なのだ。


「でもびっくりしました。ちょっときつくフっただけで泣いて帰ってしまったあのエルマくんから、恋人ができたと聞いて所詮は自分を好きだという人に簡単になびいてしまうクソ野郎だと思っていましたけど、まさかそれが男でしかも勇者様だったなんて。二人のその変態的性壁に本当にびっくりしました」


「そうだね。俺もローロちゃんのあまりの容赦の無さに思わずびっくりだよ。ちなみに、ちょっときつくフったって言ってたけどなんてフったのかな?」


「えっとねー、確か『うーん、気持ちは嬉しいけど、流石に十歳の女の子相手に本気で告白するとかあり得ないし、そもそもエルマくんみたいな男なのか女なのかよく分からない生物はちょっとタイプじゃないかな。それにね、私将来結婚してあげないといけない人がいるから誰とも付き合う気は無いんだー。というわけだから今後、なにがあったとしても私がエルマくんを男の子として意識することは永遠にないから他の恋を探すといいよ。じゃあね!』だった気がする」


「本当にその容赦の無さにびっくりだよ!?」


そりゃ泣いて帰っちゃうよ。

俺だって好きな子に勇気を出して告白して、そんな返事が返ってきたら泣くよ!

というか永遠に立ち直れないし、トラウマになるよ!

そう考えると、エルマくんがゲイになっちゃった理由もよくわかった。


「それで話を戻すけど、わざわざエルマくんと付き合い出したことを報告し、且つ、エルマくんが容赦無くフラれたって話を聞くためだけに俺の前に現れたわけじゃないんだろ?」


「後半は俺の意思は関係ない気がするけど、もちろんその通りさ。実はまた店長に世話になりたくてな」


「先に言っておくけど、犯罪はNGだからな?」


「分かってるよ。前回のは流石にマズかったと今は反省しているんだ。それに、今回は多分(・・)


なんですか?その不吉な言葉。

いやだなぁ、聞きたくないなぁ。

というか事務所にはステラ姉がいるんだからそっちに話してくれればよかったのに………。


「なんでわざわざ俺を捜しに来たんだよ」


「ステラさんが『所長が来るまで待ってください』って言うから捜しに来たんだ」


「ステラ姉……」


よほど一人でこの変態を相手にしたくなかったんだな…。

だからって俺を巻き込まないでくれよ…。

それこそドレッドにでも同席させればいいのに。


「そういうわけだから早く来てくれ。あまりお待たせするわけにはいかないからな」


……『お待たせ』?

なんだよその言葉遣い。

ひしひしといやな予感がするんですけど……。


「ちなみに、その依頼主っていうのは一体どこの誰さんなんだ?」


「あぁ、そういえばまだ言ってなかったっけか?」


そう前置きした変態勇者は、俺にちょいちょいと手招きをした。

どうやら耳を貸せと言いたいようだ。

正直あまり近寄りたくはないが、渋々近づくとクロウは依頼主の正体を告げた。


「第一王女様だ」


……………マジで?



「えっと……それで姫様、ウチみたいな売れない何でも屋に一体なにを申し付けようというのでしょうか?」


「そんなに堅くならなくてもいいのよ?今の私は第一王女ではなくただのコユキとしてここにいるのだから」


困ったように笑うコユキ・フローティア・ナガセ様。

その容姿はまるで女神そのものだ。

しかし……


「この髪の色が気になるのかしら?」


「え、えぇ」


そう、コユキ様の髪は艶やかな黒髪だった。

俺が知る限りでは、この世界で俺以外の黒髪の人はいない。

それに、コユキ様の名前。

コユキが『小雪』だとして、ナガセが『長瀬』なのだとしたならば、コユキ様の名前は『長瀬小雪』という日本名になる。

日本名……つまり、コユキ様血筋に日本人がいる可能性が高い。


「この髪の色はね、この国の王族特有の色なの。本当かどうかは分からないけど私の曽祖父が異世界からやって来た人だって噂があるの」


「!?」


やっぱり!

この世界には俺以外の日本人が来ていたんだ!


「でも驚いたわ。だって、ツユリ・ヨウさん。貴方は王族でもないのに私と同じ黒髪を持っているのだもの」


「俺のことをご存知なんですか?」


「知ってるわよ。色々とクロウ様に聞きましたから」


ギロリとクロウを睨み付けると、両手を合わせて『悪りぃ悪りぃ』アピールをして来る。

絶対許さないからな?

いつか忘れた頃に仕返ししてやる。


「それでは、改めて自己紹介させてもらうわね。私はコユキ・ナガセ。この国の第一王女のコユキ・フローティア・ナガセはただのそっくりさんよ。よろしくね、ヨウくん」


「えっと、『フレイヤ相談所』所長、ツユリ・ヨウです。至らぬ点もあると思いますが誠心誠意努めさせて頂く所存です」


「だ・か・ら、堅いって言ってるでしょ?もっとフレンドリーに接してもらってもいいのよ?だって私は第一王女のそっくりさんなのだから!」


「は、はぁ」


まあ本人がそう言うのならいいんだけどね?

あとで不敬罪とかで殺されないよね?

不死身なのバレるの嫌だよ?


というのを二ヶ月前くらいにも思ったっけ。


「で、肝心の依頼なんだけどね?ちょっと王宮まで来て欲しいのよ」


「王宮に……ですか?」


「そうそう、事情があってそこでじゃないとちゃんと説明ができそうにないの。だから、ね?」


「分かりました。その依頼謹んでお受けいたします」


「だから堅いってば……」


こうして俺の王都行きが決まった。

王都はこの街から場所に揺られて三日の場所にあるため、面倒くさがりの俺としては進んで行こうと思うような場所ではなかったため、これはいい機会かもしれない。

俺は少しだけ胸を高鳴らせて、明日の出発を待つのだった。

次回予告

「……………あっ」です。


どうやらヨウくんが何かを忘れてしまっているようですよ。


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