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兄さんが最低だなんてことずっと前から知ってたし

なんと第1章も残すところあと2話(これも含めて)

というわけで、クライマックスキャンペーンを実施いたします。

今日と明日も最新話公開しちゃおうって思った。



きっかけがあったわけじゃない。


昔読んだ物語のお姫様のように危機から救ってもらったわけでもなく、特別に優しくしてもらったというわけでもない。


むしろあの人が私にした事といえば、セクハラしたり、私の着替えを覗いたり、ブルマを被って居たりと最低な事この上なかった。


けれど、彼が私に向ける感情(もの)はとても温かかった。


最低な人だったけれど、いつでもさり気なく私の事を考えてくれていた。


時には喧嘩したり、時には一緒に怒られたり、時には勉強を教えてくれたり、いつでも私の近くにいて、一緒に居てくれた。


そして気がつけば、いつの間にか好きになってしまっていた。


最低だけど、なぜか頭が良くて、なのにバカで、鈍感で、人の事を楽しそうに貶すけど、それでも一緒に居て温かい気分になれる異世界から来た少年の事を、私はいつの間にか…………。


ーーーーーーーーーーシャルロットーーーーーーーーー


「見つけた……」


背後からの聞き覚えのある声に振り返る。

そこには、月明かりに照らされて、ここには居ないはずの人が息を切らせながら立っていた。


「なんで……?」


なんでここに?そう言おうとしてふと先日の喧嘩別れを思い出す。

『兄さんのバカ!アホ!鈍感!変態!………大嫌い!』

なんであんな心にもない事を言ってしまったのか。

でも、あの時の兄さんの言葉を思い出すとキュッと胸が苦しくなる。

いくら兄さんが鈍感だからって、少しくらいは気付いてくれていると思っていた。

だからこそ、私に縁談が嫌なのかと訊いた兄さんがどうしても許せなくなった。

でも、それはただの私のエゴだった。

はっきりと『好きだ』と伝えたわけでもないのに、そんな事で怒るのは筋違いだ。

それなのに私は勝手に傷ついて、勝手に落ち込んで兄さんを心配させてしまった。

恥ずかしくて合わせる顔もない。


「なんでって、そりゃお前の親父さんに連れ戻してくれって依頼されたからかな?」


依頼されたから………ねぇ。

できれば、進んで捜しに来て欲しかった。

そんな私の心情を読んだかのように兄さんは早口にフォローの言葉を紡ぐ。


「あ、いや……その…もちろん依頼なんてなくても捜しに行くつもりだったよ」


「そ、そうなんだ…」


月明かりに照らされる兄さんは耳まで赤くなっていた。

きっと私も同じようなことになっているだろう事は、顔の熱さで簡単に分かってしまう。

こんな些細な事で赤くなってしまう。

あぁ、やっぱり好きだなぁ。

そんな風に思うと同時に、我ながらチョロいなぁ。と苦笑いを浮かべた。


「分かってる。うん、ちゃんと帰るよ。だから心配しないで」


「あぁうん。それはそれで安心なんだけどね。そう、この機会にちょっと聞いてほしいことがあるんだよ」


「………聞いてほしいこと?」


「そう、ちょっとした昔話。具体的には四年近く前のことなんだけど、シャルには聞いて知っておいて欲しんだ」


それが俺からのシャルに対する誠意だから。とぼそりと呟いた。

その言葉で私は気がついた。

兄さんは私の気持ちに気が付いている。

だからきっとこれから兄さんが語ろうとしている事は兄さんが私に対して鈍感でい続けた理由なんだろう。


「うん、聞かせて」


私がそう言うと、兄さんは頭の後ろをポリポリと掻くと、噛みしめるように語り出した。


ーーーーーーーーーーーー耀くんーーーーーーーーーーー


「というわけだ。俺は未だにいなくなった幼馴染を想い続けている。そうすることで彼女がそこに居たという証を残そうとした」


語り終えると、あたりはしんと静まり返ってしまった。

けれどまだ言うべきことがある。

懺悔の時間はまだ終わってなどいない。

ここまでくる中で、俺は己の正体に気が付いた。


「でもさ、実はそれさえも建前でしかなかったんだよ。結局のところさ、俺はただ怖かっただけなんだよ。人を好きになって、また失ってしまうことが怖かった。実際簡単だったよ。俺に好意を向ける女の子は誰もいなかったから、俺が関わっていかなければいいだけ。そうやって向こうの世界では妹以外の異性とは全く関わらずに生きて来た。シャルを妹扱いするのだって、そうすることでシャルを女の子として意識しないように予防線を張った。そう、シャルから向けられる好意に気が付きながらな。だからシャルから向けられる好意は全て、妹が兄に向ける好意だとずっと誤魔化してきた。その結果、俺はシャルを傷付けた。最低で自分勝手、自分が傷つかないためには平気で他人を言い訳にする。それこそが俺の正体なんだ」


今度こそ終わった。

さっきよりも一層重い沈黙。

でも決して後悔はない。

たとえこれで俺が傷付こうともそれは自業自得、因果応報、身から出た錆。

今までズルをしてきたんだから、その報いを受けなければならない。

仮にこれでシャルに嫌われようと構わない。

むしろここに至って嫌ってくれることを心のどこかで望んでいる。

嫌ってさえくれれば、俺は今まで通りの俺で居られるから。

でも、もしもシャルが変わらずに好きで居てくれるのだとしたら、俺は変われるのだろうか?長い長い停滞から動き出すことができるのだろうか?

長い沈黙の後、シャルが出した答えは。


「ふぅ〜ん。それで?」


だった。


「それで?っておい。もっと他になにかないのか?」


「他にって?」


「いやほら、最低だとか思わなかったのか?」


「もちろん思ったよ?」


"何を言っているんだこの男は?"と言わんばかりの顔で即答された。


「でも兄さんが最低だなんてことずっと前から知ってたし」


「さり気なく酷いな」


「そう言われて当然のことをしたと自覚があるんじゃなかったけ?」


「…………はい、もちろんです」


ダメだ。目を合わせられない。

ニコニコとしているシャルが………怖い。

こんなことならマールを追いかえさなければよかった。


「だからね、今更兄さんを嫌いになる事はないから。もうバレちゃってるみたいだからこの際はっきり言う。私は兄さんが、ヨウさんが好きです。それがたとえ、兄さんが私の気持ちに応えてくることがないとしても」


待て、待て待て待て。

それは………それじゃあまるで。

まるで俺と同じ……。


「これでお揃い。同じ、自分のエゴのために自分に好意を向ける人を傷つけていく仲間。ひとまずアーシラくんを思いっきり傷つけてきます」


ニコリと女神のように眩しくて可愛らしい笑顔を向けながら、シャルを俺にそう宣言した。


「………その道は辛く苦しいぞ?」


「知ってる」


「誰からも喜ばれないぞ」


「覚悟の上」


「報われるとは限らない」


「それでも好き」


「俺が変われると思うか?」


「頑張る」


頑張るって……。

それはどうなんだろうな。


「最後に、お前の家族は絶対に反対するぞ」


「説得する。それでもダメなら出て行ってやる」


俺は悟った。

シャルロット・スターロットという少女は、どうしようもなく手遅れなのだと。


「……はぁ。わかったわかった、俺の負けだ。もう好きにしてくれ」


両手を上げて降伏を示す。

どうやら俺は失念してしまっていたようだ。

この少女は、どうにもならないくらいの頑固者だった。


「本当に好きにしてもいいの?」


シャルはニヤリと蛇のような笑みを浮かべて、ずいっと近づいてくる。

一歩後ずさる。

シャルが一歩近づく。

後ずさる。

そうしていく内に俺の背中は壁に当たった。


「なんで逃げるの?」


「だってなんか怖いし」


「いいから大人しくしてて」


「はい」


言われるがままに抵抗をやめる。

そもそも好きにしろと言ったのは俺だ。

なにをされようと文句は言えないのだった。

じっと見つめ合う。

シャルの吸い込まれそうなほどに澄んだ瞳が、不意に空に向いた。


「あっ」


「シャルの声に釣られて空を見上げる」


しかしあるのはただの星空。

特別目を引くものはなにもなかった。

一体なにを見つけたのか、シャルに聞こうと頭を下げた時だった。


「_____っ」


「!?」


唇に当たる柔らかい感触。

目の前にドアップで表示されるシャルの赤らんだ顔。

俺は一瞬なにをされたのか理解ができず、しかしすぐに思考が追いついてきた。

そしてなにをされているのかを理解した時にはもうそれは離れてしまった後だった。


「な、お、おまっ!なにを!?」


「聞かないでよ!バカ!うぅ〜恥ずかしいぃ」


キス……だよな。あれって。

改めて確認すると、顔が熱くなる。

さっきから心臓がうるさいくらいに脈打っている。

いつか感じた気持ち。

いつの頃からか避けてきたこの気持ち。

こんなの、これじゃあまるで……。

いや、きっとそうなのだろう。

変われるかもしれないなんて思ったけど、実のところもうすでに俺は変わってしまっていたのかもしれない。

だからあんなに必死になってシャルの気持ちを誤魔化してきたのだろう。

また傷つくかもしれない。

また失うかもしれない。

でもビビってばかりじゃいつまで経っても進めない。

ならば俺の答えはそう…


「シャル」


「は、はひっ!」


「俺も好きだ」


「………………………い、今なんて?」


「俺も好きだ。三度も言うつもりはないからなっ」


うわぁ、やばいやばいやばい!

なにこれ恥ずかしい!

穴があったら今すぐ入りたい!

全てを忘れて眠りたい!


「ふふっ、兄さん顔真っ赤」


「う、うるさいな。俺にはそう言う日もあるんだよ。それに、そう言うシャルだって真っ赤だろ」


「私にもそう言う日があるんです」


ふわりと心が浮かぶようだ。

失いたくないこの笑顔を護る。

自分自身にそう約束した。

あ、そう言えば忘れてた。


「シャル、今までごめん」


「許さない」


「え"」


「許して欲しかったら、もう一回キスして。今度は兄さんから」


あぁ、俺の彼女は本当に可愛いなっ!

俺は奪うようにシャルにキスをするのだった。


この夜、俺とシャルはめでたく結ばれた。


ベットの中で、シャルの寝顔を眺めながら、スターロット家の面々にどう報告をしようか、頭を悩まされたのは言うまでもない。

えっと…、薄々感じている方もいらっしゃると思われますが、自分でも気づきました。

「あれ、タイトルと内容が一致しないんですけど!?」

日常生活だとか言っておきながら言っておきながら全然日常生活してないじゃん!と気づいてしまったのです。

このままではタイトル詐欺と言われてもしかたがない。

というわけで、タイトルに(仮)を付けました!

この先、もしかしたらふとした瞬間にタイトルが変わっているかも……。

もしそうなっていても離れないでいてくれると嬉しいです。


あ、それと現在募集集中の「HJ大賞」というものにこの作品をぶっこもうと思っています。

よろしければ応援よろしくお願いします。


最後になりますが、感想、ブクマ、評価を付けてもらえると、大変励みみなります。

少しでも面白いなと思っていただけたのなら付けてもらえると嬉しいです。

では、また明日

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