か、勘違いしないでよ?私はただドレッドさんが心配だっただけなんだからねっ!
「で、結局今日一日何もしなかった事について何か感想は?」
「…………特に」
すいーっと目線をそらしながら返事を返してくる。
うん、ぶっちゃけ誰のせいだと話すと全てウォレットが悪い。
「そもそも、なんで私ばかりが悪いみたいな言い方をされないといけないんですか?ツユリさんだって事の一端を担ってるんですよ?」
「いや、そもそもと言うのであれば、わざわざ突っかかってくるのを全部相手にしようとするからだろ!?」
そう、あの後も案の定俺たちはチンピラ達に絡まれた。
別に無視してやればいいものを、ウォレットはその全てをことごとく返り討ちにして行った。
きっと最初の鬱憤を晴らしきれていなかったのだろう。
で、その結果大して仕事が進展することもなく今日という日が終わりを告げてしまった。
「ツユリさんだってノリノリだったじゃないですか!」
「何を言う!俺はただどさくさに紛れてウォレットのおっぱいを揉んだだけだ!」
極上の柔らかさだったことは言うまでもない。
その後のバラバラ制裁さえ無ければ天国だった。
まあ、その制裁があったからこそチンピラ達も簡単に逃げ去ってくれたわけなんだけどね。
「殺したい……なのに死なないとかどういうイジメですか……」
「俺を殺したければ七つの心臓を同時に潰すことだな」
「………心臓、七つあるんですか?」
「もちろんありませっ!?」
「気持ちの悪い笑顔を向けないでください!殺しますよっ!?」
「だからさ、首を跳ね飛ばした後だから」
と、お約束のネタを済ませると俺は真面目に向き合った。
あんまり遊んでると本当に仕事が進まないからな。
「とりあえず、最終目標の確認なんだけど、最終目標は相手の子なんて言ったっけ………そう、アーシラ・へルミナスの本性を調べ上げ、スターロット家に報告することで認識はいいか?」
「はい、問題はありません」
「で、差し当たった問題としては、どうやってへルミナス家に近寄るか、だよな?」
「ですから忍び込めばいいじゃないですか」
「それだと捕まった時のリスクが高いし、不法侵入は犯罪になるからウチの社訓に反するから却下」
「…………」
「…………」
二人して黙り込む。
しかしどれだけ唸ったところで妙案は出てこない。
素の姿を見るためという目的のためにはスターロット家の名前は出せないし。
二人して唸っていると宿の戸が叩かれた。
はて、こんな時間に誰だろうと思って出て見ると、そこにいたのはなんとマール・エマールとシャルロット・スターロットの二人だった。
「なに?二人してこんな時間に何の用?まさか………夜這いっ!?」
「そんなわけないじゃないですか!バカなんですか!バカなんですか!!」
それも耳まで真っ赤になってシャルが怒り出す。
ちょっとからかっただけなのに………ぐすん。
「夜這いじゃないとしたら他に何の用があるんだ?」
「そ、それは……あれです!兄さんがドレッドさんに変なことしていないかチェックしに来たんです!」
明らかな嘘だ。
しかし必死に言い訳する姿を見ていると少し虐めたくなってきた。
「なるほど。でも、仮に俺とドレッドが変なことしてる真っ最中だったらどうするつもりだったんだ?」
「あ……え…それは…」
「第一、俺もドレッドもこの世界ではもう結婚できる年齢だ。しかも二人ともちゃんと働いていて経済的にも自立している。つまりお互いが同意の上ならそういう事だってしても問題はないと思うんだけどどうかな?」
「そ、それは………そうなんだけど…」
あれ?なんかシャルがどんどん落ち込んでいく。
もしかしてやりすぎた?
「はぁ………ヨウさん。シャルロットさんをあまり虐めないであげてください。シャルロットさん、大丈夫です。この男にそんなことする度胸もなければドレッドさんのような美人に相手にされるほどの魅力もありませんから」
「おい、なんか今聞き捨てならん発言が聞こえたんだが?」
「そう……ですね。ドレッドさんみたいな綺麗な人が兄さんなんかを相手にするわけがないですもんね」
「二人とも、チクチクと俺を攻撃するのやめようよ」
心が折れちゃうから。
「で、結局何しにきたんだよ」
「それはですね、シャルロットさんがどうしてもヨウさんに会いたいって言うから遠路遥々やってきたんですよ」
「遠路遥々って、そんなに遠く離れてないよな?」
しかし、シャルが会いたいと。
うん、なんか嬉しいな。
「か、勘違いしないでよ?私はただドレッドさんが心配だっただけなんだからねっ!」
そう言いながらプイッとそっぽを向いてしまった。
「テンプレをなぞるようなツンデレをありがとう。そしてそろそろ入ったらどうだ?外は寒かろう」
そうして二人を招き入れた。
続きます




