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異世界の日常

「え~、ではこれから会議をはじめます」

 

そう宣言すると、三人は思い思いに抗議の声をあげた。


「いや、意味わからないから」


ジト目でこちらを睨む茶髪の彼女はシャルロット・スターロット。

種族は人族、十五歳。

くるんとカールしている毛先と百五十にも満たない身長が チャームポイントな女の子だ。

いろいろあって今は俺と一つ屋根の下に暮らしている。

 

「シャルロットさんと同感です。そもそもなにか会議する

ようなことがありましたっけ?」


訝し気な瞳を向けてくる彼女はマール・エマール。

種族は天界人、年齢不詳。

目が覚めるほどに輝く金髪と背中の真っ白な翼がトレンドマーク。

これまたいろいろあって、俺と一つ屋根の下に暮らしている。

 

「どうでもいいが、短めに頼むぞ?ワタシは眠いのだから

な?」


そして最後に、眠そうな視線を送ってくるこの幼女は、ク シャナ・L・ナイトメア。

夜を支配する大魔王にして、不老不死の象徴。

七つの異名を持ち、世界中のありとあらゆるものから畏怖される混沌の主。

しかし、こうして見ている分にはただの幼女にしか見えない。

またまたいろいろあって、俺と一つ屋根の下に暮らしている。

 

さて、なにがどういろいろあってこんな美少女たちと俺が一緒に暮らしているのかは追々話していくとして、今は会議についてだ。

どうにも三人とも思い当たる節はないらしい。

だが俺は知っている。

犯人はこの中にいることを。

 

「会議の内容だが、……俺のプリン食ったのだれだ?」


昨日俺はあまりにも暇を持て余していたので、四つプリンを作った。

当然一人ひとつずつ渡る計算である。

しかし、今保冷庫にプリンはなく代わりに流しにプリンの容器が四つ置かれていた。

これが意味すること、それ即ちこの三人の内誰かが余分に 一つ食べたということだ。

 

「シャル」


この話題に入ってから明らかに挙動がおかしくなったシャルを呼ぶと、びくっと小さく跳ね上がり、油の切れた機械 のような動作でこちらを向いた。


「お前何か知らないか?」


あくまで笑顔で聴く。

少しでも俺が怒っているいる動作を見せれば、シャルは必ず誤魔化そうとするからだ。


「………………知りません」


「嘘吐け!なんだよ今の間は!というか本当に知らないというのなら俺の目を見て言え!」


「黙秘します」


「それが通ると思うのか?」


「無理にでも通すので」


そういってぷいっとそっぽを向いた。

なんとも生意気な…………。

まあいい。シャルは後にして次の容疑者だ。


「で、何を自分は関係ないって顔してるんだよ。マール」


「な、何のことでしょうか?ヨウさんの言っている意味が解りません。天界語で話してください」


……………普通に怪しい。


というかむしろ自分が犯人ですと言っているも同然の態度だ。


「だ、第一私は天界人ですよ?そんな他人様のものを勝手にに食べるなんて悪行するわけがないじゃないですか」


目が泳いでいる。

額にも汗をかいており、明らかに挙動がおかしい。

特にいちいち言葉に詰まるところがよけい怪しい。


「……………。そうだな。仮にも天界人様であるマール・

エマールさまが他人のものを勝手に食べるわけによな。と

いうかもしそんなことしていたのなら天界人の尊厳にかかわるもんな~。うんうん」


「そ、そうですよ。その通りです。ま、まあわかってもらえたのならいいです」


うん、間違いなく『黒』だ。

それこそ流石は天界人。嘘が吐けなさすぎだ。

さて、ここまで来たらさすがの俺だって予想がついてきた。

おそらく、次に聞く奴もおかしな挙動をするだろう。

 

「クシャナ、お前は何か知らないか?」


「うむ、ワタシが食った」


……………………あっさり自白しやがったぁぁぁ!

しかもさも自分は悪くないといわんばかりの態度。

こいつ絶対反省してない。

じっと睨んでいると、それに気づいたクシャナはすっと立ち上がった。


「ヨウ、お前にとってワタシとはなんだ?」


「手の掛かる妹」


思ったことをそのまま言った。


実際こいつの普段の姿を見ていると、夜を支配する大魔王・不老不死の象徴・混沌の主。そんな大層な人物には見え

ない。


むしろただの我がままな幼女だった。


「違うだろ!主だ!あ・る・じ!まさかワタシへの大恩を忘れたとは言わせんぞ!下僕の物は主の物、つまりワタシがお前のぷりんを食らうことに何の問題もないということだ」


素晴らしいまでのジャイアニズム。

でも、主云々は置いとくとして、仮にクシャナが犯人だったとしてあの二人の態度は一体何だ?


「ちなみに誤解のないように言っておくと、ワタシが食おうとしたときには既に半分も残っていなかったがな」


そう言いながら、クシャナはシャルとマールに流し目を送った。

すると二人は部屋を出ていこうとしているところだった。

どうやら俺の予想は当たっていたようだ。


「お前ら、俺のプリン食ったな?」

「「…………はい」」


その後、二人はあっさり自供した。

結論から言えば、三人とも犯人だった。

 

最初はシャルだったらしい。

一口だけと言い訳して口に運んだ結果、気が付いたら思った以上に減ってしまっていたため、容器を戻して自室に逃げたらしい。

 

次にマール。

シャルが食っているところを偶然にも目撃した彼女はつい出来心で俺のプリンを口に運んだ。

どのみちシャルが食べた後だ。少しくらい食べてもシャルに罪を押し付けられると踏んだらしく、一口、もう一口と食べ進めていった。

そして気が付けばプリンは半分以下に。

さすがにやばいと焦ったマールは自室に逃げ込んだ。

 

そしてクシャナ。

プリンの味が大層気に入ったらしく、俺の分も食べてしまえと思って保冷庫を開けた。

そこには半分も残っていない俺のプリンがあった。

クシャナはたったこれっぽちかと一気飲みしたと言う。

こうして俺のプリン消失事件は幕を閉じた。


あまりのバカバカしい落ちに拍子抜けした俺は、また作ればいいさとプリンをあきらめたのだった。

初めまして。ユメヤです。

今、異世界が熱い!ということでその流れに便乗しました。

異世界といったらチート、無双、冒険!

それらの常識を全て取っ払ったものがこの作品です。

ゆっくりのんびりやっていこうと思っています。


ではまた会いましょー

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