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白取園無と宝主という存在

これは前後編です。ちょいシリアス?

白取園無は白取家の長男だった。

美麗だった。

優秀だった。


しかし白取家にはただ美しく優秀な息子なんていらない。


常に頂点でいなければならぬ。

常に精神を強くあらねばならぬ。

次期当主として言葉を覚える前から繰り返し繰り返し周囲にささやかれ続けた言葉


重圧は一般庶民には想像だにしないもの。


そんな彼が見つけた宝物。


「蜜柑・・・・」

常に冷静沈着で感情を見せない鉄面皮を持つ白取家の長男は

今日もうっとり蕩けそうな瞳で妹のつややかな黒髪をなでる


白取園無には腹違いの妹がいた。


白取家の現当主、白取宝主。

彼の正妻は天皇家の血筋のものだ。

正室、白取薫子は、皇室から降嫁し

嫁いだ白取家の跡取り息子を大変愛していた。

宝主も正妻である薫子を大事に扱った。

薫子の熱い想いには叶わないが

自らの正妻として、慣れない臣籍としての生活に、

白取家の嫁としての務めに苦労ないよう、薫子を大変大事に扱った。


「薫子さん、よいのですよ。そんなに毎日根を詰めなくって」


薫子は園無のDNAをたどれば自明の理だが

大変美しく芯が強かった。


そして、宝主も同じように

女性が見惚れる美麗さと男性が傅く強さがあった。


白取家の当主には当たり前のこと。


正室は宝主に会うや否や夢中になった。


しかし、薫子の幸せは長くは続かなかった。


宝主がまだ生まれたばかりの

真珠のように美しい赤子を連れ帰った時


彼女の思い描いていた幸福に溢れた生活は音をたてて崩れたのだ・・・・


継子は宝主が昔愛した女性との間にできた子だった。


彼女は、白取の家を思い、

宝主には別の男が好きだと言い

彼の前から姿を消した。


彼女を心から愛していた宝主も

彼女が自ら別れを告げた時

愛していたからこそ、身を引いた


だから、知らなかった。

彼女が子供を産み落として死ぬまで

彼女が自分を思って去ったことを。


それから薫子は狂った。

夫に対しても、息子に対しても。


勿論、血のつながらない継子も憎しみの対象でしかなかったが

見越した前当主と宝主の命で

彼女はとっくに手が届かない場所に移されていた。


「可愛い可愛い我が息子。あなたは白取家の長男。」

「この偉大な白取家を継ぐ貴方はそれにふさわしい優秀な優秀な子」


まるで園無が逃げ出すかのように

毎朝毎昼毎晩と

鎖のように母は告げた。


夫を罵り、泣いて愛していると縋り

園無を抱きしめては離さない。


気持ち悪いくらい執着を見せる母という存在


幼い園無にとって

愛とはまるで煌びやかな衣装を纏った

醜悪な存在でしかなかった。


気持ち悪い気持ち悪い。


親の決めた美しい許嫁を

心から愛した母親


その許嫁には、

一生分の想いを傾け愛し

愛しつくした存在がいた。


その女性に向けられる底のない憎悪。


宝主は彼女を心の底から愛していた


園無の母親を

薫子を不幸せにしたかったわけではない


ただ、愛しく愛していた。


彼女を永遠になくしてから知る。


愛してやまない彼女がお腹に宿していた我が子


すでに他界した彼女がこの世に残してくれた


唯一の忘れ形見


白取蜜柑。


宝主が

彼女に最初に出会った時

数分前に知った彼女の母親の死と隠された真実に


彼は珍しくぼうっとしていた。

話しかけられる声も現実のものに思えなかった。


その時



誰かが隣室がそれを連れてきたのだ


光がほうっと輝くのを感じた。


彼女はすやすやと腕に抱かれ眠っていた。

それから目を開けて宝主を視界にとらえた(ように思えた)



美しい美しい黒い瞳


彼女と同じ、光のある人だと思った


その香りは驚く位


甘い。


赤子は首をかしげた(ように見えた)


それから


あーあーと


目の前に座り込む宝主を見上げた


宝主にはわかっていた


あぁこの子は自分の宝になると。


思わずその手を差し出していた。


赤子を抱く乳母が理解した顔で

宝主に蜜柑をそっと差し出した。


やわらかい


あたたかい


なんて・・・・・・・あぁなんて・・・・


綿のように軽く

砂糖菓子のようにあまやかで


消えてしまいそうなほど幻のようなのに

確かにそこにいる存在


宝主の眦に透明なものが光った


「。。。。。」


思わず愛しい女性の名を呟いて。


そして言った


ありがとう。この宝石を。






次回園無を掘り下げます!ヤンデレお気に入りキャラ。

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