小鳥か天使か
眠れないので投稿します。
「うっ、うえっ、ひくっ」
あれから数分後。
西園寺春間は階段の下、
数刻前黒髪の天使を抱きとめたのと全く同じ姿勢で
腕の中の存在を一生懸命あやしていた。
「うん?小鳥ちゃん?まだこわいのかな?
驚いてしまったね。ごめんね」
いや、階段から勝手に落っこちてきた存在を
瞬時に受け止めてやったんだから、感謝こそされ
謝罪する必要性は全くないだろ!!!!!!
そんな突っ込みを入れたくなる状況下の中。
幼馴染に忠義の厚い、黒髪王子祐天寺楽人までもが
おろおろしながら、様子をうかがっていた。
「春間さん、救命士など、およびした方がいいのでは?」
いやいや階段踏み外しただけだよ。
しかも救命士よぶなら落ちた直後だろ。
冷静沈着な貴公子楽人も
いつもの冷静な判断を失ってしまった
先ほどから、泣き止まない天使をのぞいて
困り果てた顔をしている・・・
祐天寺春人、お前もか!!!
「うん、そうだな。西園寺家専属の医師をここに呼んでくれないか?
驚きのあまり、心臓に負担がかかってしまっているかもしれない」
難しい表情で告げたあと、
赤子のようによしよしとリズムカルな調子であやしていた少女に
ねぇ、小鳥ちゃん
と艶やかな微笑を惜しむことなくさらした
王子の碧眼を一身に向けられ
いまだ嗚咽まじりに実はうとうとしてきていた蜜柑は
涙に溢れた目をぱっちりひらき
さくらんぼのような唇をきゅっととがらせて
異議申し立てた。
「小鳥じゃないもんっ!蜜柑だもんっ」
「うーん、キュン死っっ」
春間さん!と慌てて楽人が駆け寄り、
のけぞりかえった春間を支えた。
「あぁ、いけない。すまない楽人。
今や私は一人の身体ではない。
大切な大切な存在を抱える身。」
気を付けないといけないね、と
いやいや今時妊婦だってそんな言葉はかないよ。
しかも男だろ、お前。
もはやノーコメントとしかいいようのない台詞を真面目な顔で告げる西園寺春間に
祐天寺楽人も諌めるように幼馴染を見て言った。
「そうですよ。あなた一人の身体ではないのです。」
天使さんを抱えているのですよ。気を付けないとなりません!
いや、だからあなたは真面目で冷静な
西園寺春間の右腕的存在ではなかったのですか・・・?
そんな中、
またしても黙っていればいいのに
腕の中にすっぽりおさまった
黒髪のお姫様はのたまった。
「天使じゃないもんっ。蜜柑だもんっ」
何回言えばわかるのですかっ!と、
きっと楽人を睨み付ける蜜柑に
西園寺春間と祐天寺楽人
金髪と黒髪の2人の王子が落ちた。
「うーんっキュン死っっきゅんきゅん」
うーん、小鳥がたぶらかし真っ最中の中
兄は必死で探してるんだな・・・