王子様は退屈です
やっと王子登場
西園寺春間は退屈していた。
この退屈は、昨日今日に始まったことではない。
幼稚舎から大学まで一貫教育の某都内私立学園。
日本の名家・および成金(と、やや庶民)が
とりあえず地位とか金ないと入れないよ的なステータスとか求めてやってくる学園。
(まぁ金持ちの寄付金で奨学制度が成り立つからそこは協同関係的な、ね)
その頂に君臨するのは生徒会と言われる組織
(大学で言うといわゆるフラタニィとかソロリティ的な
ヒエラルキーのわかりやすい構造ね)
の、TOPに君臨する西園寺春間は
常に退屈していた。
彼はその実
家柄だけでなく、その容姿も完璧に王子様だった。
日本人離れした体格。
白人の母親を持つゆえの
白い肌、蒼い目、金髪
(父親の要素あんまりなかったりする)
登下校では常に女性諸君からきゃーきゃー言われ。
勿論プライドも高いから成績も学年TOPだし
英語もしゃべれちゃうよ。第二外国語のイタリア語はちょっと勉強中だけどね
西園寺春間は今日も金ぴかな特注生徒会室でため息をつく
そんな毎度ながらの光景を見て、
彼の幼馴染である
祐天寺楽人がふっと苦笑する
「春間さん、せっかくの紅茶が覚めてしまうよ?」
「…ああ。」
黒髪の幼馴染にいさめられ、
春間はフォートナム・アンド・メイソンのダージリンティを
美しい口元に含ませた。
「外部生の初登校じゃん!面白い掘り出しものがあるかもよ!」
無邪気に笑いながら
ソファから身を乗り出すのは
天然パーマの赤毛の少年。
こう見えて由緒正しい茶道の名門の息子である。
「外部から優秀な人材を迎えることは重要なことだ。
身内びいきのバカな世間知らずがこれ以上繁殖されても困るからな」
辛辣な言葉を述べるのは、
歴代日本を牛耳ってきた政治家一家の跡取り息子
達凍と書いてタチコゴエである。
子供に凍という漢字をつけるとは…変わっているが
筆頭息子として、総理大臣を務めた祖父にも可愛がられている
「外部生を迎えるにあたり、そろそろ講堂に向かわないといけません」
そう気遣わしげに述べるのは黒髪の幼馴染、祐天寺楽人だ。
怜悧な見た目にそぐわず、この生徒会室を金ぴかにした
成金一族の次男坊である。
彼の見た目が成金という言葉から100kmほどは乖離があるが。
「楽人がそういうならいかないとな」
ふっと男性でも思わず見とれてしまう色香を持ったため息を放って
西園寺春間は椅子から立ち上がる。
長い脚で、楽人がすかさずあけた扉に向かった。
「お前たちも、式の開始までには来るんだぞ。
生徒会役員が遅刻じゃしめしがつかない」
「は~い」
「当たり前だ」
音程も全く異なる2つの返事が重なり
春間はため息をつくと
講堂に向かって歩き出した。
しかしまだヒロインに会えませんが