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蜜柑ちゃんはお外に行きたい!!!

鹿威しの音っていいよね

「蜜柑ちゃん。」


鹿威しの音が聞こえる。


蜜柑は幼い頃からこの音が好きだった。


ちょろちょろと水のせせらぎ

その後にかこーんと聞こえる竹の音

何度何度聞いても耳になじむ


「蜜柑ちゃん。」


よばれってはっと長い睫毛をまたたかせる。


目の前には2人の男の人がいた。


2人とも、きっちりとした和服を着て

難しい表情を浮かべ正座している。


蜜柑は鹿威しの音から

正面の座る男性陣に視線をうつした。


「おじぃちゃま、おにぃさま…」


どうしてそんなお顔をしているの?


と、きょとっと首をかしげる


瞬間


目の前で変な音がして

2人の男の唱和が聞こえた。


「うーんもおキュン死っっっ!!!!」


鹿威しの音がどこかがくっとしたように思えた。


「あ~もうなんで蜜柑ちゃんは今日も今日も可愛いのっっ」


「おじいぃちゃまたった一分しか難しいお顔できなかったでしょ!!!!」


「蜜柑ちゃんはもう16歳なんだから、もっと大人にならなきゃいけないでしょ!」


忍者のように瞬間移動し

両脇から白やわほっぺをすりすりされて


蜜柑は目じりに涙を浮かべながら

小さなお手てで二人の男を押しのけてみせた。


「おじぃちゃまもおにぃちゃまも離れないとキライになっちゃうから!!!」


「うーんもおキュン死っっっ!!!!」



それは困るなぁ


困ったちゃんだなぁと


お前はいくつだというつっこみを

思わず言いたくなるような声音をあげて


2人の男はもとの正座に戻る。


蜜柑は白柔なほっぺを両手でさすりながら

2人の男にきっと告げた。


「蜜柑はもう16になるの!だから、だからお外に行くんだもん!!!」


思えば小さい頃から

なかなかお外に出させてもらえなかった


絵の先生もお歌の先生もお花の先生も

お勉強の先生もいたけれど


全部蜜柑のために作られた

お屋敷の中のお屋敷の中のお屋敷で

教えてもらうだけだった。

(ちなみにお屋敷の中のお屋敷の中のお屋敷は要は蜜柑専用のお屋敷、だった。とても広い。)


たまにお外に行くときも

いつだってお車の中から窓ごしにのぞくだけ。


蜜柑がしたいのはこれじゃない!!

「お買いもの」について一度ご本で読んでからは


そうすればお外に行けるかも!って


珍しく自分から話しかけて(欲しくないものを)欲しいものがあるっておねだりしたけれど


何が欲しいの?みかんちゃんの欲しいもの

「僕に」「私に」「お父ちゃまに」最初に教えなきゃだめですよ!!


って鼻息荒く近づかれて嫌だった。


でも努力のかいあって

せっかく「お買いもの」が実現したのに


結局お部屋の中に人が来て

目の前で色々な(欲しくない)ものを

これでもかってくらい広げられ


せっかく頑張ったのにって涙目になった蜜柑は


全部いらないもんって頬をふくらませて

3人の男をキュン死させ

物陰から見ていた正妻つきの女中頭をくやし涙で泣かせたのだった

(ちなみに女中はスパイとして割とよくのぞいてる。)


余談であるが、この一件はトラック5台で高級商店の品物を運んできた

外商の面々を蒼白にさせた。


(彼らにとって何も売れなかったことや無駄骨に終わったことがショックだったのでなく

白取家のどっからどうみても一番可愛がられている深窓のご令嬢の

ご機嫌を損ねてしまったかもしれないことが一番怖かった。

普段首相さえ顎で使う権力を持つという白取家の当主たちが

別人のように浮かれぽんちに少女を可愛がりたおしているところは見てみないふりをした

なんなら全部ただで差し上げてもよかったのだ。

何一つ手に取ってすらもらえなかった外商たちは心底震えあがった)


「蜜柑ちゃんお外はね、実はこわい虫がたくさんいるんですよ」


「お化けとか殺人鬼とか、雷とか雨とかふっちゃうよ?」


蜜柑ちゃん転んじゃうよね?

勿論そんな時は抱きかかえて雨から守ってあげちゃうけどね?と。


だから「おじいちゃまと」「おにいちゃまと」

お家の中にいるのが一番安全なんですよ

ってゆーかそれ以外選択肢なし!!


と微笑みかけられても、今日の蜜柑はうんざり逃げ出す

もといあきらめることはしなかった


「でもね!蜜柑は学校に行くの!!!!!」


「「学校?」」


2人の男性が唱和する。

あれ?うーん?


「蜜柑ちゃん、どこで学校なんて言葉を覚えたの?」


それはトップシークレットだったはずなのに。

学校なんていけない言葉、うちに蜜柑に教えたつもりはなかったのに。


いつからそんな言葉を覚えちゃったのですか~?


って困りものの子供に対して仕方ないですねって顔で

2人の男は蜜柑を見つめた。


「いやいやい学校は別に悪い言葉でもなんでもないから。むしろいいことだから」

とつっこむ者がだれもいない中


「それはね、内緒なのよ」


蜜柑、内緒の儀式をしたのよ

と。しぃっと可愛らしくポーズしてみせる蜜柑に。

2人の男はぴきーんと青筋を立てた。


瞬間祖父は畳を蹴り上げんばかりに立ち上がり

お兄様は思わず青ざめてふらりと畳に腕をつく


「んなっっっ!!!!!!」

「な、な、内緒の儀式ってもしかして・・・・・」


それは目の前の男どもが

可愛い可愛い蜜柑をだますために

可愛い可愛い蜜柑に


嘘八百で教え込んだ儀式だった

(面倒くさいので内容は割愛する。後日気が向いたらご紹介しよう)


「み、みかんちゃん…?それは誰としたのかな」

さすがは年の功


少し平静さを取り戻した祖父が

笑みを浮かべて蜜柑に尋ねた。


「え…?(誰としたかは内緒?じゃない?)んーとぉ」


蜜柑はちょっとだけ考えたが、気を取り直して大きく告げた


「あのね、お父様!!」


だから、蜜柑、今お父様のことが一番しゅき


ちょっと頬を赤らめながら告げた蜜柑に


殺気立った2人の男の背後から


「よく言った~~~!!!蜜柑ちゃぁぁん❤❤」

とふすまをあけて、(おバカな)父親が登場した。


今にも抱きしめんと両手をあげた父親は


「入学案内」の冊子を見せびらかしながら、むぎゅっと

可愛い可愛い末娘に飛びついたのだった

そろそろ、王子をだしたいですが・・・

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