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[いざロマリ]

 

  翌日、ヒカリ達は出発の為の準備を整え、ミヤコ城の中庭へと訪れていた。軒先にはダイコクとミナヅキ、そしてジュリが見送りの為に集まっている。


「うむ、お主ら準備に抜かりは無いな?」


 ダイコクが、各々荷物を抱えた四人を見渡して話す。


「はい、もちろんです……本当に色々とお世話になりました。ミナヅキ姫も、研究所ではご迷惑をおかけしまして……」


「いいんですよ、お陰でこちらもピースメイカーの情報が多少なりとも手に入ったのですから」


 ミナヅキは上品に微笑みながら丁寧な口調で返す、ダイコクが居るからかバッチリと公務モードだ。


「でもよ、本当にそんなに大量のプロト……じゃなくてフォルンシリーズだっけ?が存在してんのかな、もしいるなら少しは噂になりそうなモンなのによ」


「それを確かめるのもお前たちの仕事だろうが」


 ガロンの疑問にジュリがつっけんどんに答えると、ガロンも眉を顰めて睨み返した。昨日カムイに色々と言われたものの、この二人の関係は簡単には直らないようだ。


「調査に出かけるのは私達だけなんですか?」


 その空気を消そうとしたのか、ツカサが問いかける。


「いいえ、ジュリ大尉をリーダーにしてヤマト軍人のチームも後日向かわせます。もっとも目的地は別の場所ですが」


「それがどこかっていうのは聞いても……?」


 ヒカリが尋ねると、ミナヅキはどうすべきかという表情で隣の父を見やる。


「構わぬぞ。ジュリ達に行ってもらうのは聖ナイツ帝国だ、同盟国では無いゆえ、お主らではなく軍人に行かせるよう決めた」


「我が国の正式な特使では無い貴方達を行かせて、下手に刺激して危うい事態になっても困りますからね」


 ダイコクの言葉を受けてミナヅキが続けるが、ヒカリは初めて聞く地名に首を捻る。


「聖ナイツ……?」


「ヒカリは初耳のようですね。まぁどんな国かは、道中仲間たちに聞いてみてください」


「よし、ではロマリへの地図と路銀を……そうだな、ツカサ嬢に預けておく。一番しっかりしてそうだからな」


 流れを切るようにダイコクが着物の袖から巻紙と小さな袋を取り出し、ツカサに渡す。


「こんなに……よろしいんですか……?」


 受け取った袋のズッシリとした感触にツカサがおずおずと聞く。


「四人もいればこのくらいは必要であろう、まぁ無駄遣いはせん様にな」


「もちろんです!しっかり管理しておきます!」


 ツカサは元気よく答えると背負ったリュックに地図と袋を詰め込む、もちろんギッシリと金の詰まった袋は一番奥にして。


「それではお主ら、国の西門から出るが良い」


「おうよ、絶対にアイツらの尻尾を掴んでやるぜ!」


 そう言いながら己の尻尾を振るのはワザとなのか否か、それを見たミナヅキは思わず微笑を溢す。


「期待していますよ……ただ、くれぐれも無茶は為さらぬ様に」


「はい!」


「よし!行って参れ!」


 四人はしっかりと返事をすると、踵を返して中庭を後にした。



 城を出て小一時間ほど歩くと、一行の目の前に巨大な純白の門が現れた。土作りなのか表面はザラザラとして鈍く光を反射している。

 二つの小高い山の間に聳えるように建っているそれを、一行は見上げる。


「来る時は列車だったから気付かなかったけど、メチャクチャでっけーなー」


 まだ門まではそれなりに距離が有ったが、それでもわかるほどの大きさに思わずガロンが呟く。


「アンタ、こんなモノでも大きかったらワクワクするの?」


「あん?ただの門に興奮するわけねーだろ、アホかお前」


「……男の子って……ふしぎ……」


「だから興奮しねーって……」


 ツカサとリュナをジト目で見やるガロンの横でヒカリが不意に前方を指差す。


「あ、あれカムイさんじゃないかな?」


「ホントだ、見送りに来てくれたのかな」


 門の側で佇んでいたカムイの姿をツカサも確認すると、カムイもこちらを見つけて走り寄ってくる。


「やぁ、体調は大丈夫そうだね」


「お陰様でね……」


「まぁまぁそんな顔せずに。今回も私は事情があって同行できないが、昨日の君達のチームワークを見るに心配する必要も無さそうだ」


 嫌味っぽく返すツカサにも優しく笑って返すと、全員を見渡す。


「そう言ってもらえると俺たちも安心です」


「うむ、だが昨日私が言った事は常に頭の中に置いておくようにね。各々、トレーニングも欠かさないようにね」


「おうよ!次に会うときはカムイさんよりも強くなってやるぜ!」


「その意気だ、では気をつけて行って来なさい」


「しばらく帰れないこと、お母さんには上手く言っておいてね」


 ツカサは家に一人残っている母のことを思い、カムイに言伝を頼んだ。


「大丈夫さ、きっとツカサの成長を喜んでくれるよ……ヒカリ君!」


 カムイは不意にヒカリへと向き直り、ガシッと肩を掴む。


「は、はい!?」


「他の二人も居るから大丈夫とは思うが……ツカサのこと、くれぐれも頼むよ?”く れ ぐ れ も”」


 突然の事に素っ頓狂な声をあげたヒカリに、カムイは謎のプレッシャーを放つ。


「え、あ、わかりました……?」


「ちょ、ちょっと!変なこと言わないでよお父さん!」


 訳も分からず、勢いに押されて同意したヒカリの横で、言葉の意味を察したツカサは一人赤くなっていた。


「さ、アホどもは置いといて行こうぜリュナ」


「……ん……」


「ま、待ちなさいよ!誰がアホよ!」


 そんな三人を放ってさっさと歩き出したガロンとリュナを小走りでツカサが追いかける、


「それでは行ってきます……自分の力の使い方、きっと見つけてみせます」


「うん、頑張るんだ。君ならきっと大丈夫だよ」


「はい!有難うございました!」


 気を取り直して礼と決意を述べたヒカリに、カムイも静かに微笑んで返す。頷いたヒカリも、先に行った三人を追いかけて走り去っていく。


「頑張れ若者達……君達なら、フュージョンを見つけられるだろう。その時に君達が何を掴めるか……期待しているよ」


 そんなヒカリ達の背中に向かってカムイは優しく言葉を投げる。

 いつしか四人の姿は門の影に隠れて見えなくなっていった。


[いざロマリ]終

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