[プロローグ]
広大な宇宙。その黒い黒い海にポツンと浮かぶ美しい惑星、アトム。
その中にたった一つの大陸の端には、巨大な砂漠があった。
そんな広がる砂漠の最奥、一人の男がゆっくりと立ち上がる。
その髪は燃えるように赤く、日光を照り返してギラギラと輝いていた。
「……?」
照りつける太陽、見渡す限りの砂、砂、砂──
気温は相当に高く、真っ黒の服に身を包んだ全身からは滝のような汗が吹き出した。
「なんだここは……」
頭が痛い、割れる様だ……喉も乾いている、何か飲みたい……
男は訳もわからないまま砂の上をザクザクと音を鳴らして歩く。
「……!?」
ズウン……
不意に地面が大きく揺れ、周囲の砂山が崩れる。
突然のことに動揺していると、爆音と共に後方から巨大な砂煙が吹き上がった。
「なんだアレは……!?」
砂煙の中から現れたのは、まるで天まで届くかと言うほどの巨大な何かだった──
巨大なオレンジ色の体躯をうねらせ、頭に付いた八つの目が感情無くこちらに向けられている。
「お、俺に何か用か?」
男の問いかけにもちろん答えることも無い。
百メートル程の距離で暫し見つめあう両者だったが、不意にそれが起こしていた体を倒し、砂の上を這いずる様にしながら爆進してきた。
「な、なんだよぉぉぉ!?」
男は情けない叫び声を上げながら、とりあえずソイツが向かってくる反対方向へと全力で逃げ出した。