第7話 魔法少女は夕ごはんと格闘する
執事のラルがフェルトに声をかける。
「お嬢様、夕食の準備ができました。ご所望の『なっとー』でございます」
「なっとー……」
フェルトはそれをくんくん嗅ぐ。
「なんか……臭くない? 腐ってないこれ?」
「お嬢様、納豆はそういうものなのですよ。食べ方は分かりますでしょうか?」
「知らな……わかるわ! そう『なっとー』ね! 私これ食べたかったの!」
ごくり。ツバを飲み込むフェルト。決して納豆が美味しそうだったからではない。これからゲテモノを食うことになると思ったからだ。
(くんくん……ひどい匂い……これ……絶対ゾンビかグールのお肉だ……)
納豆を手でつかみ持ち上げる。
ねばー。
(ひいぃぃぃぃ、何これ……糸引いてるし……手もべとべと……でもきっと食べたら美味なんだ……きっと……きっと……)
ぱくっ。
納豆を食べる。
でろっぅ。
口から納豆がこぼれる。
「お口に合いませんか……お嬢様」
2秒固まるフェルト。そして苦悶の表情でしゃべる。
「不味……う……ううん……おいじいげど……おいじいげど……ゾンビちゃんがまだ生きていて逃げ出しちゃったみたい……うん……そう……逃げちゃったの……」
「ではお嬢様、お口直しにコーヒーはいかがですか? あ、お嬢様はまだコーヒーは苦手でしたっけ?」
「こーしー? こーしー? 私に苦手なものはないわ! 私には弱点はないの!」
(今度はどんな臭い物が出てくるの? 何が来ても勝ってやるわ!)
そう思っていたフェルトの前にコーヒーが出される。
「これが『こーしー』? どす黒いのね……。何か禍々しい液体。こうくるとは……」
くんくん。
匂いを嗅ぐフェルト。
「これは臭くないわね。でも変わった匂い」
「お嬢様、ミルクと砂糖はお入れになりますか?」
「ミルク? ミルクって牛のおっぱいよね。私はおっぱいは10歳で卒業したの! さとう? 砂糖は知ってるわ。今はいらないわ」
ごくっごくっ。ご……。
コーヒーを飲むフェルト。途中で止まる。
でろっぅぅぅ。
(何これ。苦すぎ。苦すぎ。苦すぎ……)
「ら、ラル……毒を盛られたみたい……これ……にが……」
「お、お嬢様……」
フェルトはこの黒い液体は『毒』だと認識した。
「では、お嬢様『カレー』はいかがでしょうか?」
「かれえ? 何それ? それは臭くない? 黒くない?」
「ええ、臭くも黒くもありませんよ。美味しいですよ」
「じゃあそれを貰うわ!」
カレーが運ばれてくる。
ぱくり。
でろっぅぅぅぅぅぅ。
(か、辛い……。何? 何の攻撃? 口の中にファイアーボールを打ち込まれた感じだわ……)
フェルトはいまだ口に合うものに出会えていない。
フェルトの運が3下がっていた。
◆◆◆
――納豆おいしいですよね。でもフェルトちゃんの口には合わなかったようです。
作者はもっぱらブラックコーヒーです。
あとカレーです。フェルトちゃんも作者も、「カレーと感想は甘口が好み!」のようです。
今日の投稿はここまでです。お付き合いいただき、ありがとうございました。
書き溜めを放出してきました。残りストック1話、書きかけ3話です。さすがに同じペースでは更新できませんので、投稿間隔が開くと思います。




