第2話 魔法少女の初登校
「はい、ではみなさん一人ずつ自己紹介をお願いします。特技がある方は特技もお願いね」
そう発言した彼女は「タンニン」という職だそうだ。それはフェルトが初めて聞く職だった。
『私は神宮寺さなみと申します。趣味はピアノとお習字です』
『私は西園寺ともなです。お花とお茶を習っております。特技は……』
『私は……』
そうしてフェルトの自己紹介の順番が回ってきた。
「私はフェルト・ライアス! 私の特技は高位魔法を素早く詠唱すること。
得意技は炎系魔法よ。すべてを焼きつくすわ! 趣味はゴーレムの召喚ね!
アンデッド系も召喚できるけどあいつらは臭いから嫌いです! みなさんよろしくね!」
つかみはバッチリだった。はずだ。
クラス中が40秒ほど固まった後、自己紹介は続いた。
このクラスの生徒全員のスルー能力が+1上がった。
最後に男の子が一人自己紹介した。クラスに唯一の男子だ。
「僕は高柳秀人。趣味はスマホゲームです。この学校にはスマホゲーム開発部があると聞いているので興味を持っています。よろしくお願いします」
(スマホ? 私の持っているこの魔法デバイスと同じ? 後で確認しなきゃね)
そうフェルトは考えていた。
◆
昼休み、高柳がフェルトに声をかけてきた。
「フェルトさんだっけ? 君、面白い自己紹介していたね」
「あなた高柳ね。面白い? 何のこと? 私の魔法デバイスのこと探りに来たのね」
「魔法デバイス? 何それ?」
「これのことよ!」
腰に手を当てて、びしっとスマホを突きつけるフェルト。
「魔法知識は私の方が上よ! なんたって私は最強の魔法使いなんだから! ふふん、あなたご存知? 『デンワ』魔法では最初に『もしもし』って言うのよ!」
「は?」
「聞こえなかった? も・し・も・し!! そう! そしてこれは! このスマホは通信魔法が込められた我が家の秘宝!
こんな小さな物に通信魔法が込められているなんて! どう? すごいでしょ!!!! あなたのなんてきっと50cmくらいあるんでしょうね!」
「これのこと?」
そういってスマホを取り出す高柳。
「は、あ、あ、あれね。あなたの家も相当な魔法技術が発達しているようね!」
「魔法技術? 新しいスマホのゲームかな?」
「スマホでゲーム? ゲームって何よ。1つのデバイスに込められる魔法は1個! これ常識よ!」
「いやゲームできるから。ちょっと貸して」
……………………。
「…………。えええ!? 何これ? なんかピコピコ動いているし。通信魔法以外に込められたこの魔法は何? 何? 何!?」
混乱しながらも素早く思考を巡らすフェルト。
(……視覚情報を転写する魔法? 確か失われた古代魔術にそんなものがあった気もする。
盲点だった。古代魔術は探求していない。私でも難しすぎるんだ、あれは。おそらくはその古代魔術を独自に発展させたのね。それにしてもこれほどはっきりと映し出すなんて……。なんて魔法技術が発達しているのかしら)
「だから、魔法とかじゃないって。いいや、もう魔法でいいか」
高柳の忍耐力が+1上がる。
「ところで、フェルトさんってゲームやったことないの?」
「ないわよ……あ、あるにきまってるでしょ? 私を誰だと思ってるの? 最強の『魔法少女』よ」
「…………」
スキル《痛い子の会話はスルーLV1》を使った高柳が『魔法少女』をスルーして会話を続ける。
「……なんか初めてっぽかったけど、まあいいや。ねえフェルトさんさ、スマホゲームを作ってみたくない?」
「え? これを私が? 作れるの? え? 古代魔術……ぜひっ、ぜひぅ 未知の魔法の会得はよだれがでるほどよ。うんうん、これ会得したい! 会得したい!」
(私もついに古代魔術の世界に足を踏み入れるのか……)
「じゃあさっ! いっしょにスマホゲーム開発部を見に行ってみようよ!」
「スマホゲーム開発部?」
(いったいどんな組織なの? 新しいギルドか何か? それとも悪の秘密結社?……)
二人は放課後になるのを待ち、スマホゲーム開発部の部室へと向かった。
◆◆◆
――こんなくだらない話がまだ残っています。読者のダメージもきっと少なくないでしょう。
この日、読者のHPが150下がった。
読者の知力が20下がった。
代わりに読者の忍耐力は+10上がった。
ちなみにこの作品への評価は最新話の一番下から入れることができるようですよ。
知っていましたか?