第15話 魔法少女はお誘いを受ける
フェルトは屋敷を飛び出した。
誰だって『マジカルステッキ』の代わりに『カールドライヤー』を渡されたら、悲観して家出でもしたくなってしまうだろう。
いつの間にか夜の公園を歩いていた。
真っ暗な中をトボトボ1人で歩いていた。冷たい風が吹き抜ける。
歩みが遅くなる。
そして立ち止まる。おもむろに木の枝を拾う。
枝を振ってみた。
『まじかる……、まじかる……、らるるるる……』
魔法少女ラルルの真似をしてみた。
もちろん単なる木の枝では変身できないことはわかっている。
でもフェルトはどうしても諦めきれなかったのだ。
『まじかる……、まじかる……、らるるるる〜〜〜〜……』
そして
ぴたっ。
変身ポーズを決めた。薄っすら目に涙をためて。
フェルトが変身ポーズを取ったまま感慨にふけっている、その時だった……
突然目が合う。
見覚えのある男子と。
「あれ? フェルトさん。 こんな時間に公園で何しているの? もう夜だよ?」
ポーズを決めたまま一瞬だけ硬直するフェルト。
すぐ我に返り「ささっ」と変身ポーズをやめ、とっさに木の枝を後ろに隠す。
「な、な、な、何でもないよ! 高柳君!! 高柳君こそこんなところで何してるの?」
「ん? 僕はそこのコンビニまで行くところだけど。フェルトさん、何かさっき『まじかる』とか言ってなかった?」
「い、い、い、言ってないよ! まじ狩ろうかな? って言ったんだよ! 夜だし、ゾンビとかグールとかヴァンパイアとかいたら『まじ狩ろう』って言ったんだよ!!」
「ふーん、そうなんだ。フェルトさんそういうの好きなんだ? なら明日の土曜日お化け屋敷にでも行ってみる?」
「土曜日?」
ファルトが首をかしげる。
「うん、学校お休みだしさ」
「え? 学校にお休みなんてあるんだ。明日も学校行っちゃうところだったよ」
「フェルトさん土曜日はお休みって知らないんだ。そっか、教えておいてよかったね。じゃあ、明日遊園地のお化け屋敷に行こうよ」
「ゆーえんち……」
フェルトはまたもや聞いたことのない言葉だったが思考を巡らす。
(これはアンデッドの討伐に行こうってことよね。パーティのお誘いってことね? 幽怨地……。名前だけで恐ろしい場所ね。きっと凶悪なアンデッドがいるのね)
「わかったわ。装備を揃えて幽怨地へ向かいましょう」
(落ち込んでいる場合じゃない、私は本物の魔法少女。変身できないくらいで落ち込むな! 変身なんかできなくっても魔法は使えるんだ! 魔王だって倒せるほどの私。私を頼ってくれる人がいるんだ……)
フェルトは久しぶりに奮い立った。
「ちょっと落ち込むことがあったけど、もう大丈夫だよ! 高柳君もちゃんと装備を固めてきてね」
「じゃあ明日、遊園地の前で待ち合わせね。僕はコンビニ行くから。また明日ね」
手を振って立ち去る高柳。
その姿を見送り、「あなたは私が守ってあげるからね」そう思いながら両手を固く握りしめて奮い立つフェルト。
そして……
こ、これは!?
『でぇと』なのか? 『でぇと』なのか!?
そして、
そして!
フラグなのか? フラグなのか!?
――そして……読者はデジャブを見た気がした……
読者の予想1:前回同様フラグがへし折られる
読者の予想2:デートがご破産になる
読者の予想3:フェルトが日記を書いてさっさと寝る




