第13話 魔法少女はリモコンの使い方を披露する
放課後、スマホゲーム開発部の部室。
部員の四人が集まっている。
「さて、二人にパソコンの使い方から教えるわね」
部長の吉野川は腰に手を当ててやる気満々。
だがそこにフェルトのカウンターが入る。
「部長さん! その必要はないわ! 私は昨日、運転手のガイラから使い方を教わったの! 完璧よ!」
「まさか、1日でパソコンマスターしたなんて言わないわよね?」
「ふふん、そのまさかよ! マスターしたわ!! この天才魔法使いフェルト・ライアス。どんな魔法でもたやすく会得しますよ!! なんでも聞いて!」
「じゃあ、まずそこのパソコンを使ってこのスマホゲーム開発部のホームページを開いてみてよ」
「ふふん、そんな大きな魔法デバイスを使う必要はないわ!! 秘密兵器! これよ! 見て、この小ささ!」
そうしてフェルトがカバンから取り出した『リモコン』を印籠の如く突き出す。
(私って今日からでも『リモコン』の先生になれるんじゃない!? まずは部長さん、あなたのポジションから狙わせていただくわ!!)
そんなフェルトの企みを知らず、リモコンを見て混乱する部長と高柳。
唯一精神を侵されなかったメガネちゃんこと小田部がつぶやく。
「…………なるほど、『パソコン』と『リモコン』をかけたジョークね……」
そこへ我に返った部長の言葉。
「テレビのリモコン学校に持ってくる子、初めて見たわ」
ま、まあいいわフェルトさんのジョークセンスがわかったところで、とつぶやき部長がターゲットを変更。
「じゃあ高柳君、そこのマウスを使ってホームページを開いてみて」
「わかりました」
高柳がマウスを手に取り、操作しようとしたところフェルトに邪魔をされる。
「ちょ、ちょっと待って! マウス? マウスって、マウスってこれ?」
「ん? マウスがどうかしたの?」
フェルトがマウスを手に取りじーっと見つめる。
(なるほど……鼠を使役したわけね……やはり部長さんはただものじゃないわ)
マウスをツンツンつつく。
(見事な魔法技術ね。ここまで固めるなんて。この鼠、カチコチだわ)
まあこんな感じでフェルトに邪魔をされながらパソコンのレクチャーは大して進まず、この日の部活が終わる。
フェルトは「あれ? おかしいな? 家ではできたのに……」そう言いながら終始リモコンをいじっていた。
◆
今日も空を飛べないベンツで帰宅したフェルト。
「あれ? 家の前にラルの車がある! もしかしてもうトイザラウルスから帰還したの?」
『マジカルステッキ』手に入れてきてくれたのかな? そう思ってウキウキして屋敷の扉を開けて中に飛び込む。
執事ラルの靴を玄関で発見する!
それを見てテンションが上がるフェルト。
「ただいま! ラル!! 『マジカルステッキ』はどうなった!? どうなった!?」
約束のおもちゃを楽しみに待っていた子供のような明るい声。
もうすぐ変身できるものと強く信じている。
だが……
――作者と読者以外は知らなかった。この後に待ち受ける不幸を……。
◆◆◆
――次話いよいよ読者の期待通りの展開が!! 乞うご期待!!




