第11話 魔法少女は初めて!?パンを口にする
昼休み、フェルトは落ち込んでいた。
そこへ高柳が声をかけてくる。
「フェルトさん。なんか落ち込んでる?」
「高柳……。私……授業わかんない……」
「そっか。異世界人にはこの世界の勉強は難しいよね。魔法の授業じゃないもんね」
高柳は『冗談』で慰めたつもりだ。
「え、高柳……。あれ? ん? 『魔法の授業』じゃなかったの?」
「……」
「……」
「え?」
「え?」
え? がハモる二人。
目をパチクリさせるフェルト。
「ま、まあフェルトさん。今日からは午後も授業があるし、購買で『パン』でも買って食べようよ。お腹いっぱいになれば悩みもなくなるって」
ぐー、腹がなるフェルト。
昨日から何も食べていない。
昨日の朝、食パンをくわえていたことは作者も読者もフェルトも忘れている。
「お腹減った……。昨日から何も食べてないんだった。『ぱん』? 『ぱん』って何?」
「まさかフェルトさん『パン』食べたことないとか? そっか。フェルトさんもお嬢様なんだねきっと。僕が庶民のパンっていうのを教えてあげるよ」
念の為に断っておく。お嬢様学校にただ一人いる男子とはいえ、高柳は庶民サンプルではない。(なんかそういう小説があった気がする)
一応設定上は裕福な家の息子だ。
◆
――購買部
高柳がフェルトにパンを買ってあげる。
焼きそばパンだ。
その焼きそばパンをフェルトに渡そうとする。
「ねえ……『臭く』ない? 『黒く』ない? 『辛く』ない?」
受け取ろうとしないフェルト。
「ん? 臭くも黒くも辛くもないよ。おいしいよ。食べてみて」
恐る恐る焼きそばパンを手に取り、口にする。
ぱくり。
「うううう、うま〜〜」
この世界に来て一番の幸福を感じる。
「なななな何これ、もふもふしてて、むにゅむにゅしてる」
フェルトはむしゃむしゃ、頬張る。
「周りのこの白いふかふかの部分が、ぱふぱふ、もふもふ、してておいしい! 中のこの茶色くて細いの、つるつる、むにゅむにゅしてるのおいしい!」
「フェルトさん、焼きそばパン食べたことないの?」
「やきそばぱんってゆうんだこれ……」
(こんな凄い食べ物、金貨何枚するんだろう……)
フェルトはお礼に『怪鳥のフライドチキン』を食べさせてあげようと決意した。
「『高柳君』、ありがとう……」
そして……
ぱんぱかぱーん♪
『高柳』の称号が『高柳君』に昇格していた!
こ、これはフラグなのか!? フラグなのか!?
◆◆◆
――さて、パンを知らないのにフライドチキンがある世界……
「なんてご都合主義なんだ」と読者は思ったが、すでに寛容力が+10ほど上がっていたためダメージはなく次話へと進む。




