第10話 魔法少女はお嬢様学校の授業を受ける
念のため書いておくが、フェルトは中学生ではない。高校生だ。
がらっ。
フェルトは1年1組のクラスの扉を開ける。
「みんな! 昨日の魔法を使えるって話。あれはなかったことにしてね!!」
フェルトの第一声を聞いて一瞬固まるクラスメイト。
第三者が見たらメデューサにでも睨まれて石になったかのようだった。
だが、時はすぐ動き出す。
『え、えぇ……フェルトさん。フェルトさんが『すべてを焼きつくす』なんて野蛮なことされるとは思いませんわ』
『魔法を素早く詠唱……きっとフェルトさんは早口言葉がお上手なのね。将来はアナウンサーなんかいいのではないかしら?』
『ごうれむをしょーかん……難しくてわかりませんでしたが、ゴーレムって石のお人形さんですわよね? さすがにお人形遊びはおやめになられたら?』
クラスの誰もフェルトが魔法少女だとは思っていない。
(そうか、私が魔法少女の装備をしていないから誰もわからなかったのね! じゃあ高柳も部長さんもメガネちゃんも大丈夫かな?)
「はい、授業を始めるわよ。みなさん席に着いてちょうだい」
いつの間にか『タンニン』がクラスに侵入していた。
(は!? 気配を感じなかったわ。タンニンって忍者か何かの上級職かしら……。いったいどんな魔法授業をしてくれるの? でも私が魔法少女ってことを秘密にしておかなきゃってことはクラスのみんなはきっと駆け出しの魔法使い。大した授業じゃなさそうね)
「はーい、じゃあ英語の授業を始めるわよー」
そして始まるフェルトの理解できない言語の授業。
フェルトの知力が1下がる。
フェルトは混乱する。
別の教師がクラスに来る。
「はい、では数学の授業を始めます」
フェルトは理解できない。
フェルトの知力が1下がる。
フェルトはさらに混乱する。
また別の教師がクラスに来る。
「物理の授業を……」
理解できない……
フェルトの知力が……
フェルトはさらにさらに混……
「……の授業を………………」
……理解でき………………
…………フェルトの知力………………
……フェルトの知力はすでにマイナス………………
某ゲームのメダパニを超える《メガ・パニック》状態に陥る。
いやその上の《ギガ・パニック》、いやさらに上の《テラ・パニック》、もっと上の《ペタ・パニック》……
可愛いから略して《ペタパニ》にしておこう。
『ペタパニ』なフェルトはがっつり落ち込む。
(……。ち、違った……。私が未熟なんだ。このクラスのみんなが相当高度な知識を持つ魔法使いなんだ……。私は……私は……最強じゃなかったんだ……。わたしは……)




