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第9話

私は、その数年前、中国の工場で働いてくれている通訳の女の子と他、数人で旅順の観光地を回っていた。

此処は、乃木将軍と言えば、歴史の好きな人達ならピンとくる、日露戦争の舞台にもなった場所である。多くの人がここで命を落とした。

小高い場所から私が今見ている湾内には、数百年前、バルチック艦隊がいたのだ。

あの頃、ここにいた人達は、今の私を想像する事ができただろうか。


多くの観光客がいた。もちろん、多くの日本人も。

清の末期、中国は列強国等の争いの場となっていた。それを中国の人達も歴史で学んでいるのである。その中に日本の存在があったことも。


歴史はほぼと言っていいほど、勝ったものが正義であり、負けたものが悪と語られているように感じる。ただ、負けた方はその悔しさを自国の歴史で語るのである。


私が、韓国を併合していた歴史とちゃんと向き合ったのは、社会人になってからではないかと記憶している。

第二次世界大戦、太平洋戦争と言えば、真珠湾攻撃、世界初めての被爆国、二つの原爆である。

日本人の多くは、受けた悲しみを語ってきたように感じる。与えた痛みを教科書でちゃんと向き合ってきただろうか。

それは、中国も同じだった。



豪の中を歩いている時に、ふと私は素朴な質問を通訳の子にした。

「よく中国は日本に歴史認識をして、謝罪しなさいってこと伝えてるけど、実際に学校では、どう学んでいるのでの?」

私は、ゴールデンタイムと呼ばれる時間帯に今もなお、反日運動が多かった第二次世界大戦前のドラマが多く放映されていることに、少し不安を感じていた。


「多くの中国人は学校で学びます。だから、私も思います。日本人には謝罪が必要です」

予測はしていたが、やはり辛い答えだった。

「そうだね。その頃の日本がとった行動を肯定するつもりはないよ。でも戦後、それは充分に日本は叩かれてきたんじゃないかな?謝罪よりも、今は二度と起こさない約束が必要なんじゃないのかな?」

そう言っても、彼女は納得しない様子だった。

多くの中国人が殺された。そうなのだ。学校で学ぶ以上、それは後にも語り続けられるのだ。


「では、逆に聞くけど、中国がチベットにしたことは、どう習っているの?」

「なんのことですか?」


同じだった。

日本が中国、東南アジア諸国で行った軍事活動が自国で一部、肯定されるように、中国だけでなく他国の殆どが「自国が悪いわけではない」

そのスタンスなのだ。

日本も例外ではない。韓国の併合。満州国の建国。一時期は東南アジア諸国を傘下にしていたのである。

戦争はあってはならないが、第二次世界大戦中のドイツ、ユダヤ人の迫害などはもちろんのこと、止めなければいけないものである。


戦時中は誰もが狂気と化すのだろうか。その時代に生きていない自分が多くは語れない気がする。でも、伝えていかなければならない事実。私達に近い祖先、彼等、彼女等はどう生きようとしたのか。


私の祖母は?


そう強い人だった…

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