第19話 不和の種
ファイルとクリップボード片手に、第二応接室に足を踏み入れた淳は、出入り口の正面に座っている相手を眺めて、些か拍子抜けしてしまった。
(こいつが? 本当にあの桜査警公社の幹部社員? 替え玉じゃないのか?)
あまりにも平凡な容姿と、穏やかな雰囲気を醸し出している彼に、思わずそんな考えが頭に浮かんだものの、そんな事をしても意味は無いと自分に言い聞かせながら、淳は何食わぬ顔で彼の向かい側に座った。
「はじめまして、小早川先生。小野塚和真と申します」
「こちらこそ、ご指名頂きありがとうございます」
挨拶しながら名刺交換を済ませ、淳は改めて手にしたそれを確認すると、前回置いていった物と全く同じで、思わず眉を寄せる。しかし余計な事は言わずに、仕事に徹する事にした。
「それでは、本日こちらに出向いて頂いた用件をお伺いしたいのですが。どう言ったご相談でしょうか」
「それが……、少々外聞をはばかる話なのですが……」
如何にも困った様に口を濁した和真に、淳は営業スマイルで促した。
「安心して下さい。依頼人の情報は、外部には漏らしません」
「それは信頼しております」
そう言って頷いてから、和真は真顔になって話し出した。
「実は……、最近入籍した妻が妊娠中で、もうじき出産予定日なのですが、お腹の子供は私の子供では無いんです」
「それは……」
クリップボードで固定した所定の記録用紙に、早速ボールペンを走らせていた淳の手の動きが止まった。それと同時に(こいつがここに来たのは偶々か?)という疑念と、(夫婦間の問題なら、俺は普段担当していないんだが?)という疑問を覚える。すると手と口の動きを止めた淳を見て、何やら感じたのか、和真は苦笑しながら弁解してきた。
「ああ、勿論、彼女が妊娠中なのは分かった上で入籍しましたので、妻との離婚を考えているとか、慰謝料請求の相談に来たわけではありませんので、誤解の無いようにお願いします。相談内容は、その子の父親に関する事なんです」
「と仰いますと?」
不思議そうに問い返した淳に、和真は一転して沈痛な表情で話し出す。
「その男は妊娠中の妻に愛想を尽かされ、彼女の家族に毛嫌いされて絶縁されても、妻と子供は自分の物だと図々しく主張した挙げ句、生活範囲内に頻繁に出没して妻に付きまとい、子供が生まれたらDNA鑑定させて、父親としての権利を主張するつもりだと、周囲に触れ回っているとか」
「それは……、他にもお伺いしたら色々迷惑行為が出て来そうですが、確実に精神的苦痛を与えられたとして、十分損害賠償請求や接近禁止令要求訴訟の対象になりますね」
考え込みながら、真剣に語られた内容を箇条書きにしていた淳だったが、続く和真の台詞で再び手の動きを止めた。
「ええ。『婚姻中の妻が妊娠した子は夫の子と推定する』という嫡出推定の規定も頭に無いとは、法律の専門家としての能力を疑います。まあ、それだけその男が、妻に執着しているとも言えますが」
「子供の父親は、法曹界に属する人間ですか?」
「ええ、弁護士なんです。同業者として、そこら辺を小早川先生はどう思われますか? 忌憚のないご意見を伺いたいのですが」
にこやかに笑いながら言ってのけた和真に対し、淳は完全に表情を消して、目の前の人物を見据えながら恫喝した。
「……美実の事を言っているのか?」
しかし和真は、しれっとして言い返す。
「まだ妻の名前は、口にしたつもりはありませんでしたが、さすがに小早川先生は優秀でいらっしゃる。しかし人妻の名前を呼び捨てにするのは、倫理上如何なものかと」
「あいつとお前が、入籍している筈が無いだろうが!!」
机を拳で叩きながら淳が怒声を浴びせたが、和真は飄々とした態度を崩さずに言ってのけた。
「今、現在ではそうですね。何ヶ月か後のご相談を、ちょっと前倒ししてみただけです」
「あまりふざけた事を口にすると」
「実は今度の土曜日に、藤宮邸に呼ばれていまして。上司の指示で、彼女と見合いをする事になっています」
そう和真が告げてきた為、流石に淳は顔色を変えた。
「上司って……、まさか……」
「誤解の無いように一応お断りしておきますが、あなたのご友人夫婦ではありませんよ?」
「そうなると、あの妖怪夫婦か。どうして連中が、俺達の事に首を突っ込んでくるんだ?」
「さぁ……、どうしてでしょうか?」
そこで無言で睨み合う事、暫し。和真が小さく笑ってから、淡々と裏事情を口にした。
「あのお二人が珍しく、随分と気前の良い事で。会長の妹さんと首尾良く結婚したら、小さな会社を一つ任せて頂ける事になりました。それで彼女と子供の事は可愛がる事にしているので、一応、子供の父親のあなたにも、事前にご挨拶をと思いまして」
それを聞いた淳が、盛大に歯軋りする。
「……挨拶だと?」
「はい」
「ふざけるな! 明らかに牽制だろうが! それに資産狙いだと公言する奴に、美実と子供を渡せるか!!」
「正直にお話ししたのに、お気に召しませんでしたか? 困りましたね……」
ガタッと椅子を引き倒す勢いで立ち上がった淳が吠えたが、対する和真は無音で静かに立ち上がる。しかしそれと同時に数瞬前の彼の穏やかな雰囲気は霧散し、その全身から殺気が漂ってきた。
「だが、これは既定路線だからな。指を咥えて黙って見てろ。ヘタレ野郎」
「……っ!?」
(こいつ……、できる。踏み込む隙が無い。倒すどころか、下手すればこっちが切り込まれる!)
なまじ腕に覚えがあり、学生の頃からそれなりに場数をこなしていただけに、淳には目の前の相手の物騒さが、実際に手合わせをしなくとも分かってしまった。理解できた上で手を出す勇気は無かった淳を見て、和真が微かに満足そうに笑う。
「どうやら馬鹿では無いみたいですね。分別があって結構です。それでは失礼します。相談料は後から指定口座に振り込みますので、金額を請求して下さい」
そして微笑みながら一方的に告げて和真が応接室を出て行ってから、淳は魂が抜けた様に元通り椅子に座り込んだ。そしてそのまま数分微動だにしないでいると、様子を見に来た各務が、困惑しながら声をかけてくる。
「小早川先生? 小野塚さんがお帰りになりましたが……。先生?」
「……各務さん? どうかしましたか?」
漸く我に返った淳が顔を向けると、各務は当惑した様に言葉を継いだ。
「それはこちらの台詞です。依頼人がお帰りになっても、先生が出て来られないし、来てみたら黙って座り込んでいらっしゃるし。顔色が良くありませんが、大丈夫ですか?」
「ええ……、大丈夫です」
「そうですか。それで小野塚さんのご依頼の件は……」
「彼の話は聞きましたので、もう来る事は無いと思います。次回の予約も入れていませんし」
「え?」
当惑する各務の前で淳はゆっくりと立ち上がり、自分の机に向かって歩き出した。
「相談料は、後で指定口座に振り込むそうです。規定の金額を私から連絡しますので」
「あの……、小早川先生!?」
どこかふらついている感じの淳を見て、各務は慌てた様に声をかけたが、淳はそれに気が付かないまま足を進めた。
(何でよりにもよって、あんな物騒な奴が美実に近付いてるんだ!? 美子さんもそうだが、秀明も普段あいつを可愛がってるくせに、何をやってやがる!)
行き場の無い怒りに淳が眩暈すら覚えていると、少し離れた席から、淳が属する民事部門を統括している梶原が声をかけてきた。
「小早川君、さっき所長が呼んでいたぞ?」
その声に瞬時に我に返った淳が、足を止めて梶原の方に身体を向ける。
「そうでしたか。どんな用件でしょうか?」
「いや、それは聞いていないが、手が空き次第、所長室に来て欲しいそうだ」
「分かりました。今から行ってきます」
それに了解したと頷いた梶原に背を向け、淳は所長室に向かって歩き出した。そして同じフロアの奥まった所に在るドアの前に立つまでには、淳は平常心を取り戻していた。
「小早川です。入っても宜しいでしょうか?」
「構わない。入ってくれ」
「失礼します」
ノックに続いて室内に向かってお伺いを立てると、渋い声が返ってくる。それを確認してから淳はドアを開け一礼してから、自身が所属している榊総合弁護士事務所の所長、榊亮輔の机の前に進んだ。
「所長。お呼びと伺いましたが」
「ああ、実は君に縁談が三件あってな。この写真と釣書を、見て貰いたかったんだが」
きちんと整理された、大きな机の片隅に置かれた封筒を取り上げた亮輔は、それを何気なく淳に向かって差し出したが、途端に淳は顔を強張らせて断りを入れた。
「所長……、誠に申し訳ありませんが、今現在私には、交際中の女性がおりますので、そう言ったお話はお受けできません」
「それは小耳に挟んでいたが、最近その女性と別れたと聞いたぞ?」
「……どなたからの情報ですか?」
不思議そうに言われて、淳は僅かに眉根を寄せながら問い返した。それに亮輔が困惑しながら答える。
「曙重工業の渡部社長からだ。それで傷心の君を慰める為に、骨を折ってみたと彼が言っていたが……。彼と知り合いでは無いのか?」
「はい、全く。渡部社長のお名前は存じ上げておりますが」
「それは変だな……。私はてっきり、彼と君が個人的な知り合いなのかと思ったんだが……」
そう言って顎に手をやりながら亮輔が考え込んだが、淳もこのタイミングで降って湧いた縁談に、胡散臭い物しか感じなかった。
(曙重工業……、ここが法律顧問になっている大企業の社長が、なんだってそんな個人的な話を持ち込むんだ。それに美実との事も知ってるなんて……)
そこまで考えた淳は、何年か前に秀明に頼まれた内容を思い出した。
(そういえば、以前加積老の事を調べた時に、奴の息のかかった有名どころの企業の中に、曙重工業の名前が無かったか?)
その事実に気付いた淳の顔から、一気に血の気が引いた。
(奴が来た事と言い、この縁談と言い、あの妖怪夫婦が糸を引いているって事か。……突き詰めれば、それだけ美子さんを憤慨させたって事なんだろうが)
淳が立ったまま無意識に両手の拳を握り込むと、そんな彼を観察していた亮輔は、目の前の部下の異変を察知して慎重に問いかけてきた。
「小早川君、どうした?」
その声で淳は常よりは幾分硬い表情ながら、何でも無いように言葉を返した。
「何でもありません。それより所長。誠に申し訳ありませんが、私は彼女と別れた事実も別れるつもりもありませんので、この話はお断りして頂きたいのですが」
その申し出に、亮輔が尤もだと言う様に頷く。
「君にその気がないなら、無理に勧めるつもりはない。丁重に断りを入れよう」
「ありがとうございます。ついでに厚かましいお願いがあるのですが」
「何かな?」
「もしかしたら今後も、顧問契約をしている企業の関係者から、同様の話を持ち込まれる可能性があるのですが、可能な物は全てお断りして頂きたいのですが」
それを聞いた亮輔は僅かに驚き、次に難しい顔になって確認を入れてくる。
「……それは、あれか? 君と恋人の結婚に反対する人間、もしくは集団や組織が存在していると?」
「はい。簡単に言えばそういう事です。規模に関しては、はっきりとは分からないので明言はできませんが」
正直に述べた淳に向かって、亮輔は即座に真顔で了承した。
「分かった。可能な限り断る。しかしどうしても無理な物は、君自身で対応して貰うからそのつもりで」
「それで構いません。宜しくお願いします」
「それでは戻って構わない」
「はい。失礼します」
そして一礼して所長室を出た淳は、半分安堵し、半分腹を立てながら自分の席へと向かった。
(契約を盾に取られたら、普通だったら素通りだろうが、あの所長がそうそう論戦で負ける筈も無いしな。しかし確実に幾つかは、俺が直に突っぱねるしかないか。立て続けに手を打ってきやがる)
その淳の読み通り、彼はそれから暫く嫌がらせの波状攻撃に晒される事になった。
※※※
珍しく昌典も秀明も早く帰宅し、一家揃って和やかに食べていた夕食の席で、美子が思い出した様に言い出した。
「あ、そうそう、美実。この前話したお見合いの件だけど、今度の土曜日に先方が家に出向いて下さる事になったの」
「そうなの? 何か申し訳ないわね」
それを聞いた美実は神妙に答えたが、寝耳に水だった美野と美幸は「お見合いって!?」と明らかに動揺した。テーブルの向こう側に座っているそんな義妹達を眺めながら、秀明はどこか面白く無さそうに食べ続けていたが、彼の隣に座っている美子は、上機嫌に話を続ける。
「本当にね。電話で直接お話ししたけど、とても礼儀正しい方よ? 美実の体調を心配して下さって、『変に緊張させたくはないので、できればそちらのお宅で、顔を合わせたいのですが』と申し出て下さって」
「そうなんだ。じゃあ服装はどうしようかな……」
少し困った様に美実が首を傾げると、美子は益々機嫌良く説明してくる。
「それも『無理に身体を締め付ける様な装いにする必要はありません。私もカジュアルな服装で出向かせて頂きます』って言ってくれたから。そろそろ普通の服がきつくなってきたでしょう? 無理にスーツは着ないで、ワンピースにしなさい」
「それなら良かったわ。正直、心配してたの」
「本当に、お相手の方が、細かい所まで配慮が行き届く様な方で良かったわ」
にこにこと嬉しそうに感想を述べる美子に向かって、ここで秀明が不機嫌そうに口を挟んできた。
「美子。あっさり丸め込まれるな」
「何? 丸め込まれたりなんか、していないわよ?」
少々気分を害した様に言い返した美子だったが、秀明ははっきりと渋面になって彼女を叱る。
「どこがだ。たかが数分電話で会話した位で誉めちぎって。こんな時に世間知らずぶりを発揮するな」
「何を言ってるのよ。数分話しただけでも、分かる事は分かるわよ。あなたと初めて会った時に数分話して、どうしようもないろくでなしだって分かったもの」
「……何だと?」
売り言葉に買い言葉状態で、剣呑な空気を醸し出してきた姉夫婦を見て、向かい側の妹達は揃って狼狽した。
「あの……」
「美子姉さん? 秀明義兄さん?」
「えっと、少し冷静に」
控え目に宥めようとした彼女達など目もくれず、美子達の言い合いは忽ちヒートアップする。
「そのろくでなしと結婚した女が、言う台詞じゃないと思うが?」
「ええ、そうね。自分の馬鹿さ加減を公言している様な物ですしね」
「普段は大人しく鷹揚に構えているくせに、どうしてお前はとんでもないタイミングで、とんでもなく面倒で厄介な連中に取り憑かれたり、中に引き込んだりするんだ!」
「失礼ね! 人を超ド級のトラブルメーカーや、悪霊憑きみたいに言わないでくれる!?」
「事実をきちんと認識しろと言ってるんだ! だいたいあの妖怪夫婦に見込まれた時点で」
「秀明!! 美子!!」
つい加積夫婦の事に言及しそうになった秀明と、頭に血が上っている美子を纏めて盛大に叱り飛ばした昌典は、底光りする視線を二人に向けた。
「……いい加減に止めろ。飯が不味くなる」
厳しい表情で制止されて瞬時に冷静さを取り戻した二人は、素直に謝罪の言葉を口にした。
「失礼しました」
「気を付けます」
それからは静まり返った室内で全員食事を済ませ、美子は後片付けを、昌典と秀明が仕事の話でもあるのか連れ立って姿を消した為、美実は妹達と美樹を連れて居間に移動した。そしてソファーに落ち着くなり、緊張の糸が切れた様に呟く。
「さっきのあれ……、びっくりした……」
「うん。ママ、パパ、ぷんすこー!」
「ああいう夫婦喧嘩っぽいのって、結婚以来、初めて見たかも」
「だよね~。やっぱりお義兄さんって優しいよね~」
なにやら美幸が場にそぐわない能天気な事を言い出した為、美実と美野は揃って怪訝な顔を向けた。
「はぁ? 何、それ?」
「美幸。さっきのあれで、どうしてその結論に達するわけ?」
「だって、美子姉さんとの口論のそもそもの原因って、今度美実姉さんとお見合いする人を、美子姉さんが誉めたからでしょう?」
「それはそうね」
「それで?」
まだ言われた意味が分からない二人がなおも尋ねると、美幸は変わらずにこにこしながら話を続けた。
「きっと秀明義兄さんは、私達の事を本気で可愛がってるから、横からかっさらっていく可能性のある男の人が、どんな人であろうと気に入らないんじゃない?」
ここで美野は首を傾げ、軽く反論した。
「でも、美幸? 美実姉さんと小早川さんが付き合っていた時、お義兄さんが文句を言ったりした事は無かったんじゃない? 美実姉さんは何か言われてたの?」
「いいえ? そういう事は特に何も無かったけど……」
「だって元々小早川さんは、お義兄さんの紹介で知り合ったんでしょう? だから滅多な男に渡すのは嫌だけど、『こいつなら仕方がないから認めてやる』みたいな心境だったんじゃないのかな?」
訳知り顔で美幸がそんな事を口にした為、姉二人は(それはそうかも)と納得してしまった。
「なるほどね。それなのに美実姉さんが小早川さんと揉めた挙げ句に、近付いてきた見ず知らずの男性を美子姉さんが誉めちぎったから、面白く無かったわけか……」
「ちょっと嬉しいね。お義兄さんにしっかり妹認定されて、愛されてる感じがして」
ちょっと照れくさそうに、嬉しそうに言ってきた美幸を見て、美実と美野も笑顔になる。
「本当ね。散々色々力になって貰ってるし。私達が好き勝手できるのも、お義兄さんが居てくれるお陰よね」
「私も結婚する時は、相手に色々難癖つけてくるのかな? お義兄さんに負けない人を探さないと」
「うわ、それって無理! 美野姉さん、結婚できなくなるって!」
「ちょっと! さすがにお義兄さん以上の人はそうそう居ないかもしれないけど、向こうに回して負けない人位だったら居るわよ!」
「えぇ~? それでも無理だと思う~」
秀明は単に物騒過ぎる人間を藤宮家に近付けたく無かっただけだったのだが、結果として自身の知らない所で、義妹達の信頼と尊敬を上積みする事になった。そしていつも通り美野と美幸が言い合いを始めたところで、黙って話を聞いていた美樹が、くいくいと美実の袖を引いて、少々心配そうに見上げてくる。
「みーちゃん。パパ、ママ、ニコニコする?」
見慣れない物を見て、ちょっと心配になったらしい姪に対して、美実は明るく笑って答えた。
「大丈夫、大丈夫。二人とも、今頃は機嫌を直してるだろうし。少し遊んだら、姉さん達の所に連れて行くからね」
「うん」
太鼓判を押されて安心したのか、にっこり笑って頷いた美樹に癒されながら、美実は頭の片隅で、近々やって来る見合い相手の事を考えていた。




