病
翌朝、私はひどい喉の渇きを感じて目を覚ましました。体を起こすと大きく頭が揺さぶられるようです。皮膚のすぐ下に刺し入るような寒気を感じながらも、私はベッドから下りました。
部屋の端まで行き、扉を開けて廊下を歩くその間にも足元がふらついて、まっすぐ歩けているのかもわかりません。
何が起こったのだろう、と私はぼんやりする頭で考えていました。
台所までたどり着き、私は朝食の支度をはじめました。肉と卵を乗せるお皿を出そうとしたとき手が滑り、大きな音を立ててお皿は割れてしまいました。私はあわててしゃがみ込み、破片を拾い集めようとしました。
「イラ、どうかしたかい?」
慌てた足音を立ててロザリー様がいらっしゃいました。
「申し訳ありません、ロザリー様。お皿を割ってしまって……」
「それよりも君のことが先だろう。ひどく体調が悪そうだ」
ロザリー様は散らばったお皿の破片を踏んで、私に近づかれました。急いで立ち上がると、また血の下がるような思いがして鈍痛とともに頭が振れました。
とっさにつかんだのは、ロザリー様の腕でした。
「失礼いたしました、ロザリー様……」
「いいからじっとしていなさい、イラ。熱があるじゃないか」
ロザリー様は私を抱え上げると、有無を言わさずに廊下へ出て、私の部屋までいらっしゃいました。
「外出をしたり縁談があったりと、ここ数日は君にとって刺激が強かったのだろう。とにかく今日は休んでいなさい」
ベッドに私を寝かせ、ロザリー様はそうお申し付けになりました。
「はい、ロザリー様……」
身を横たえるとぐったりと体が重くなるのがわかりました。私のお返事を聞いたロザリー様は、「何かあればお呼び」とおっしゃって部屋を出て行かれました。
申し訳なさをいっぱいに感じながらも、すぐに私は浅いまどろみに飲み込まれました。
物音を感じて、私は目を開けました。
「すまない、イラ。起こしてしまったね」
「いいえ、ロザリー様」
ロザリー様は水差しを手に、ベッドの脇に立っていらっしゃいます。
「薬草を煎じたものだよ。飲めるかい?」
私が身を起こすと、ロザリー様はカップに水差しの中の液体を注いで手渡してくださいました。
それは緑がかった金色をしていて、手に温かさを伝えました。顔を近づけると頭の中に溜まっている熱を吹き払ってくれるような、爽やかな香りがしました。
カップを口に運び、私は思わずむせこんでしまいました。
「イラ!?」
ロザリー様が私の背に掌を添えてくださいます。
「申し訳ありません、ロザリー様……。少し、渋くて、驚いてしまって……」
「濃い方が効き目があるかと、煮出しすぎてしまったようだ。飲みやすくなるよう、蜂蜜でも入れてこようか」
ロザリー様は私のカップに手を伸ばされましたが、私は両手でカップを包み、それを拒みました。
「いいえ、ロザリー様、大丈夫です。それよりも……、もうしばらく、ここにいらっしゃってはいただけませんか」
「……ああ」
私がカップの中の薬を飲み終わるまで、ロザリー様は側についていてくださいました。
「水差しはここに置いておくよ。なるべくこまめにお飲み」
「はい、ロザリー様」
「それでは、もう一眠りするといい」
私は再び横たわり、毛布をかぶって目を閉じました。ロザリー様の気配が静かに動き、私の額にひんやりしたものが当てられました。少し考えて、それがロザリー様の掌だと思い至りました。
ロザリー様が近くにいらっしゃるという安心感と発熱を和らげてくださっている心地よさとで、私はぐっすりと眠り込むことができました。




