匿う
二度目の目覚めははっきりとしていました。窓は覆われて、ほのかに燭台が灯っていました。
横たわったまま首をめぐらせると、ベッドの傍らに人影が見えました。
「おはようございます、ロザリー様」
私はそう申し上げてゆっくりと起き上がりました。
「おはよう、イラ。……具合はどうだい」
私は自分の体の調子を確かめて、「問題ございません、ロザリー様」とお返事いたしました。ロザリー様はほっと笑顔を見せられました。
「それは何よりだ。最初に比べればずっと落ち着いた様子で、私も少し安心していられたよ」
「私は……、どのくらい眠っていたのですか?」
「一晩が明けて……、今はどれだけ日が高くなっているかな。窓を閉めてしまったから……」
以前のように3日間眠り通しというわけではなさそうで、私は胸を撫で下ろしました。
「それでは、少し外の様子を見てまいります」
ベッドから下りようとすると、ロザリー様は腕を伸ばされました。
「イラ、休んでいなくて平気なのかい」
「ええ。もう充分に休ませていただきました」
「……私が見に行ければよいのだけれどね。くれぐれも無理をするのではないよ」
ロザリー様は少しお顔を曇らせておっしゃいました。
「ありがとうございます、ロザリー様。お茶と……、何か食べるものを用意して戻ってまいりますね」
台所には太陽の光が高くから射し込んでいました。
お茶を淹れ、新鮮な果物をむいて私は自室へ戻りました。幾度か瞬きして目を薄暗さに慣れさせます。
「お待たせいたしました、ロザリー様」
「ああ、ありがとう」
私はロザリー様にカップをお渡ししました。
「今は正午をいくらか過ぎた頃のようでございます」
「そうか……」
ロザリー様は頷かれた後にお茶を一口召し上がりました。
「それなら、日が落ちるまでこの部屋にこもっていてもいいかい?」
「ええ、もちろんでございます」
蝋燭の柔らかい灯りの中で温かいお茶を飲んでいると、心が穏やかになるようでした。
「助かるよ。けれどもひとりでは退屈だな。……イラ、しばらく私の話し相手になってくれるかい」
そのお言葉はロザリー様の素直なお気持ちだったのか、私を気遣ってくださったものかはわかりませんでした。けれどもロザリー様の真意がどちらであったにせよお断りするはずもなく、私は「かしこまりました、ロザリー様」とお返事を申し上げました。
「イラ、食べなさい。昨晩の夕食もあまり食べていなかったろう」
ロザリー様は果物をほとんど私にくださいました。みずみずしい甘みに活力をもらい、ロザリー様とお話をする幸せな時間を過ごすうちに、いつの間にか日はすっかり暮れていました。
その後も幾度となくロザリー様から血を頂きましたが、体がなじんできたのか、その頻度は下がり、味わう苦痛も次第に弱くなっていきました。
最近では気を失うこともなくなり、高熱を出したときのような火照りと寒気を感じる程度に留まっています。
それでもロザリー様はやはりご心配なようで、血を頂いた後には私が眠りに就いてから明け方に目を覚ますまで、一晩中私を見守っていてくださるのが今では常のこととなっています。