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青い鳥

作者: WAIai
掲載日:2026/10/14

初夏、太陽の日差しが強くなってきた頃、1羽の鳥が飛んでいた。

スズメくらいの大きさなのだが、青い色をしており、お腹は白かった。

名前をコルリと呼び、鳴き声はコマドリに似ている。

夏の鳥として、日本に渡ってくるのだった。

太陽の光を受け、ますます身体の青色を濃くし、夏空よりも目立っていた。

雲の中を通ると、綿のように柔らかく、涼しさを感じる。

コルリは飛行を楽しんでいると、急に大声が聞こえてきた。

「ー助けて!!」

少し下降して見れば、マンションのベランダから落ちそうになっている子どもがいる。

歳は6つくらいだろうか。

必死に叫んでいるのだが、皆、無視しているように歩いていく。

ー全く。これだから人間は。

コルリは腹を立てると、子どもに近づく。

その際、身体が輝き、人間の姿となる。

青い髪に、背中には白い羽が生えていた。

まっすぐに少年の元へ向かうと、

「助けてやる」

ぶっきらぼうに言うと、少年の身体を抱きしめ、ベランダへ戻してやる。

少年は涙で顔が汚れていたが、コルリを見て、ぼそりと言う。

「天使…?」

「さあ? もう危ないことはするなよ」

少年の頭を撫でると、コルリはベランダから飛ぶ。

少年が「あ」と声を上げたが、また鳥の姿へと戻り、マンションを離れていく。

皆、唖然としたようだが、すぐ忘れるとコルリは冷めきっていた。

ー日本人は忙しすぎる。しかも子育てしないで、親は何をしているんだ!!

腹を立てながら飛んでいると、雲を口に含む。

冷たいキャンディーみたいな感じで、喉が渇いていたので、ちょうど良かった。

ーん? 今度は何だ?

コルリがカーテンの開いている部屋に注目すると、若い女性が中にいた。

顔も優しそうな感じで、好みのタイプだった。

ーもう危ないな。

何が危ないのかというと、下着を着替えているようだった。

誰も見ていないだろうと思っているのかもしれないが、コルリはじっくり見てしまった。

ー助けてやるか。

コルリはベランダに降りつつ、人間の姿となると、窓をノックする。

中の女性はびっくりしたらしく、悲鳴を上げたようだった。

コルリは心外だとまた窓をノックすると、女性は部屋を後にする。

ー何だ、つまらない。

青い髪を払うと、鳥として行こうとしたのだが、女性が戻ってきて、フライパンを手に持っている。

ーなるほど。面白い女。

ふと笑うと、ベランダの窓が開き、女性が怒鳴ってくる。

「た、誰、あなた!!」

「誰って…コルリだ。知っているか?」

「は? コルリ? 外国人ってこと?」

「違う、違う。…あ、でも違わないか。日本を離れる時もあるからな」

「何を言っているの? 誰か分からないんですけど!!」

女性がフライパンを振ってきたので、コルリは余裕で受け止めると、女性の胸に触れる。

「きゃ!! エッチ!!」

「じゃあ、ちゃんと服を着ろ。しかも誰かが見ていないと思わず、カーテンを閉めろ。そうじゃないと、襲われるぞ」

「え…。何? どういうこと」

「言うことは言ったからな。…これで許してやる」

女性の唇にキスすると、コルリはふふと笑い、ベランダの手すりに乗る。

女性は固まっているので、コルリは一声かけてやることにした。

「下着姿、素敵だったぜ。子どもを作りたかったら、また呼べ」

「!!」

ようやく動き出した女性だが、フライパンが攻撃するよりも速く、鳥となって飛んでいく。

唇は甘く、女性がつけている口紅が良い香りがするのか、コルリはくちばしを動かして味わう。

ーフライパンを持ってきて、戦おうとする女は嫌いじゃない。

ニヤニヤとする代わりに、さえずると、スズメ達が近づいてくる。

「ー何か良いことがあったのか、コルリ?」

「何でもない。お前らは勝手に飛んでいけ」

「そうかよ。じゃあな」

鳥同士の会話は、チュンチュンとか、人間にはそう聞こえるらしく、誰も注目しない。

コルリもそのほうが気楽なので、いつも1人でいるのだった。

ーん? 今度は良い香りがする。

太陽の光が眩しく、少し休もうと思い、一軒家に立ち寄る。

すると母親らしき人物が肉を焼いており、鼻歌を歌っている。

コルリは顔を歪める代わりに、手すりに掴まった足を動かす。

ー何の肉だ? 仲間のか?

立ち去ろうとしたその時、スマホが鳴り、母親がキッチンから離れていく。

その隙に人間の姿となると、開いた窓からそっと中に入り、肉を確認する。

ーこれは…。豚肉みたいだな。

少し切って舌で確かめると、塩胡椒の味がしっかりついており、脂ぎっていた。

胃もたれをおこしそうだと、食べるのをやめると、冷蔵庫を開く。

野菜室を開くと、コルリは「わお」と言葉をもらす。

レタスやキャベツといった、コルリの主食になるものが入っていた。

ーまだ来ないな。

確認すると、レタスを手に取り、葉を口にしていく。

自然の植物には勝てないが、瑞々しく、パリッとした食感も楽しかった。

満足そうに食べていると、足音が聞こえてきたので、レタスを手放し、鳥の姿になってキッチンから出る。

しばらく様子を窺うと、母親が嬉しそうに入って来た。

「嬉しい!! 嬉しいわ!! 子どもができたなんて」

どうやら鳥でいう交尾の末にできた子どもらしい。

めでたいと思いつつ、まだ見ていると、落ちているレタスに、母親が気づく。

「あら。私、しまわなかったかしら…?」

不思議そうに首を傾げると、冷蔵庫を開く。

コルリからすると、冷蔵庫は魔法の道具で、1台欲しいと思ってしまう。

ー何日、入れても悪くならないらしいしな。

コルリも餌を保存しておきたいと思うのだが、渡り鳥なので、置いておく場所がない。

仕方なく諦め、飛び立つと、来た方角が騒がしい。

どうやら人間が喚いているようだった。

ーこの声は…。さっきの女か。

どうやらコルリのことを探しているらしく、ベランダに出ているようだった。

自分から近づいたことなので、責任を取るかと、また戻っていくと、フライパンで手すりを叩いていた。

ー怖っ。…でも魅力的だ。

あははと笑うと、人間の姿となる。

女性はびっくりして、目を大きく見開く。

コルリは冷静で、フライパンを取り上げる。

「あ!! それ…!!」

「こんなものはいらない」

ベランダから捨てると、コルリは魅力的な声を出す。

「私を呼んでいただろう? わざわざ来てやったぞ」

「変質者!! 泥棒!!」

「はあ…全く、うるさいな」

面倒くさいので、黙らせようと、女性の身体を引き寄せ、深いキスをする。

女性の身体が傾がり、その場に腰を抜かす。

コルリは濡れた唇をそのままに、女性に言う。

「私と交尾するか?」

「は…? こ、交尾? …っていうか、その羽!! 天使なの?」

「何とでも言え。とにかく名前を教えろ」

「いや!! その、2回もキスするなんて…」

「ー言え。じゃないと、襲うぞ」

少し凄むと、女性は静かに名乗ってくる。

「…すず。あなたは…?」

「コルリ。人間にはそう呼ばれている」

「コルリ…? 珍しい名前」

「後で調べてみろ。じゃあな、すず。また来るかもしれないから、よろしく」

そう言うと、コルリはすずの頬を指で弾くと、鳥の姿となり、飛んでいく。

「あのー!! コルリ!! コルリってば…!!」

すずはまだ用があったらしいが、コルリは無視して飛んでいく。

すると今度は興奮した子どもの声が聞こえてくる。

ーさっきの子どもか。うん?

手に何か持っているようで、近づいていくと、少年が笑って近づいてくる。

「天使さん!! やったあ!! 来てくれた!!」

「何だ? 何の用だ?」

「あのね、お礼。助けてくれたお礼」

ビスケットを持っており、1枚、差し出してくる。

コルリは迷った末に、いただく。

「…うん、美味しいな」

「たくさん食べてもいいよ」

「駄目。お前のおやつだろう? ゆっくり食え」

コルリは1枚、食べ終わると、指をなめる。

その動作は魅力的で、太陽がコルリを呼ぶように、背中が熱くなる。

「じゃあな。もう1人でベランダに出るなよ」

「え…!! もう行っちゃうの!!」

「私のことは内緒な。じゃあな」

ベランダから飛び立つと、少年が「また来てねー!!」と叫んでくる。

悪い人間ではないので、一応、覚えてやるかと思いつつ、コルリは自由に飛んでいく。

ー気持ちがいい。

風の吹く方向に身を任せていくと、色んな人間が見えてくる。

買い物から出てきた者、病院から暗く出てきた者、様々だった。

コルリは飽きることなく、見ていく。

ー人間は誰にも見られていないと油断しがちなんだけれど、ちゃんと私達が見ているんだよな。

無防備は命を落とすことになるのだが、毎回、コルリが助けるわけにはいかなかった。

ーそれと、私の名前はコルリじゃないし。

コルリとは人間がつけた鳥の名前で、本当の名前は内緒だった。

ーさて、次はどこに行こうか。

コルリは翼を広げると、ぐんと上昇し、雲の中へ姿を消したのだった。


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