低い事件数
殺人件数は減っても、市民が払う安全費は下がらない。戦争危険度ゼロと高い平和指数の下で、日常だけが細かく課金される。 朝、透は国ごとに異なる書式を同じ時刻基準へ直す。変換前の数字も残し、整形によって都合のよい一致を作らない。
調査班を英雄にする報道も断った。四人が外されても同じ照合が続くよう、手順、反証、誤りの履歴まで複数機関へ渡した。
監視端末を解約した家庭には、子供を危険へさらすのかという通知が届く。脅迫ではない定型文が、各家庭へ同じ罪悪感を植えつけた。
契約の金額より更新期間が重要だった。最初は安くても解約時の危険を強調し、十年単位で保守費を取れば、事件が止んだ後にも利益は残る。
四人の班に各国への命令権も逮捕権もない。できるのは正式提供された記録を照合し、同じ事実を別々の法域へ残すことだけだった。
夜、透は循環図を保存した。線は増えても中央は空欄で、名前を置けば理解した気になれる誘惑だけが残った。
反対意見は循環図の外へ捨てず、同じ大きさの欄へ残した。後で仮説が崩れた時、どこから組み直せるかを示すためだった。
時刻の一致だけでは共謀にならない。予約処理、時差変換、通常の需要予測を除いた後にも残る部分だけが、次の調査対象になった。
平和を壊すのではなく、平和に値札を付ける仕組みが見え始めていた。それでも誰か一人の計画だと示す記録はない。
透は報告書から断定的な形容を削った。恐ろしい、巨大な、完全なという言葉より、日付と金額のほうが長く検証に耐える。
調査が進んでも殺人そのものの捜査を従属させない。犯人、動機、手段は各地の警察が追い、四人は利益循環との間に未確認の線を残した。
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