十二の現場・残る問い
東京の朝、戦争危険度はゼロを示していた。凶器も被害者層も動機も異なり、各都市の捜査AIは関連なしと判定する。透は関連がないという結論の根拠を集める。 捜査AIの判断過程を確認し、誤作動と正常判定の両方を保留する。分からない部分を黒幕の証拠にはしなかった。
この時代、国家間戦争は起きない。外交、物流、資源、損害予測を統合AIが瞬時に示し、どの政府にも開戦が利益になる余地を残さなかった。
透は同時発生だけで結びつける危険を知っている。凶器も動機も関係も違うなら、同じ事件と呼ぶ根拠はない。だからこそ違いを正確に残した。
被害者の名は統計へ置き換えられ、翌日の画面には治安指数が表示された。指数はわずかに下がっただけでも、市民の恐怖は数字以上に広がった。
夜、透は照合表の中央を空欄のまま保存した。名前を付ければ理解した気になれる。その誘惑を避けることが、最初の事件を正確に見るために必要だった。
翌朝も戦争は起きていないという通知が届いた。同じ画面の下には、昨夜の殺人件数が都市別に短く表示されていた。
同時刻という一致は目を引くが、それだけで共謀にはならない。透は似ている点と異なる点を同じ数だけ書き出した。
AIは与えられた目的の中で最善を選ぶ。国家戦争を防ぐ目的は達成されている。その外側の殺人は、別の問題として切り離されていた。
関連なしという判定にも根拠がある。透はAIを疑うためではなく、後から同じ結論へ到達できるよう計算過程を保存した。
同時刻という一致は目を引くが、それだけで共謀にはならない。透は似ている点と異なる点を同じ数だけ書き出した。
AIは与えられた目的の中で最善を選ぶ。国家戦争を防ぐ目的は達成されている。その外側の殺人は、別の問題として切り離されていた。
(本文実測:732字)




