061
床の魔法陣が赤黒く光る。
壁が割れ、床が裂け、屍兵が這い出す。
鎧の兵。
農具の兵。
骨の露出した兵。
百体。
同時に、剣へ術式を流す。
視界が歪み、世界が糸で縫われたように見える。
屍兵とグラーフを繋ぐ、無数の縁。
「……斬る」
縁断ちの刃
アルベルトが踏み込み、剣を振るう。
刃は肉体を裂く前に、
縁を断つ。
一体が砂のように崩れる。
復活しない。
セレスティアの槍が唸る。
縁ごと貫き、十体が同時に消える。
屍兵の波が削れていく。
だが、まだ多い。
「効いているが……足りんな」
グラーフが笑う。
切り札
杖を高く掲げる。
地面が震え、巨大な骸骨兵がせり上がる。
象ほどの体躯。
「王国の資産だ」
能力を引き上げる。
胸が締め付けられる。
視界の端で、
アルベルトとセレスティアの縁がさらに太くなるのが見える。
(……また、深く縛る)
「……すまない」
それでも剣を構える。
断絶
跳躍。
距離を詰め、剣を振るう。
骨ではない。
魔力でもない。
存在を繋ぐ縁そのものを斬る。
巨大骸骨兵は音もなくほどけ、塵になる。
決着
グラーフが後退る。
「待て……!」
「王に仕えれば貴様も――」
「興味ない」
剣を振る。
縁が切れる。
グラーフ・ネーデルという存在が、
肉も、魂も、死体も残さず、
世界から消えた。
戦後
膝が震える。
剣を支えに立つ。
アルベルトとセレスティアが、無言で立っている。
縁は、さらに太く、重い。
「……また、縛ったな」
胸の奥が軋む。
強くなるほど、
この二人を世界に縫い付けてしまう。
リリアが小さく言う。
「さっきの話……幼い魂を集めていた側近……」
「ああ」
「そいつか、王か……」
拳を握る。
「弟がどうなったのかは、まだ分からない」
「だが――」
「この国の中枢に、必ず繋がっている」
剣を下ろす。
「王を斬る前に」
「残り三人の側近を、消す」
死霊王国ヴェルケンの夜は、まだ深い。




