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終末のネクロマンサー  作者: あああ
死霊王国
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夜を選んだ。

 ヴェルケン王国の夜は、異様に明るい。

 屍兵が街灯の代わりに燐光を放ち、

 通りには人と骸が同じ比率で歩いている。

 俺とリリアは外套を深く被り、裏門から入った。

 検問はない。

 この国では、死者が出入りしても誰も疑わない。

 胸の奥がざらつく。

 街全体が、巨大な術式陣だ。

 地面の下で、無数の縁が絡み合っているのが見える。

 王へ。

 四人の側近へ。

 軍勢へ。

 死体保管庫へ。

王都西区。

 屍兵の集積所。

 崩れた神殿を改造した軍営。

 そこにいた。

 黒い軍服。

 腹の出た体躯。

 白髪交じりの短髪。

 冷えた目。

「……生きていたか」

 グラーフ・ネーデル。

 草原で、軍勢を操っていた男。

「いやぁ、驚いたよ」

 笑う。

「千の部隊を溶かされるのは初めてだ」

 周囲の屍兵が動く。

 百体ほど。

 だが、あの時の軍勢とは比べ物にならない。

「王が興味を持っていてね」

「君を“第五席”に、だとさ」

 吐き捨てる。

「……断る」

「残念だ」


 グラーフが杖を突く。

 屍兵が一斉に走り出す。

「父よ」

「母よ」

「アルベルト」

「セレスティア」

 真名を呼ぶ。

 二人が顕現する。


「……二十年前」

「お前は、どこで何をしていた」

 グラーフが眉をひそめる。

「ほう?」

「ずいぶん昔の話だな」

「小さな村だ」

「一家四人が殺され」

「五歳の子供の死体だけが消えた」

 グラーフは一瞬だけ考え込み、首を振った。

「知らんな」

「私は当時、王都の地下墓地の管理をしていた」

「軍の指揮権を与えられたのは、十年ほど前からだ」

 嘘ではない。

 縁が、そう告げている。

「……子供の死体を回収した覚えは」

「ない」

 即答だった。

「確かに私は多くの死体を集めた」

「だが、無差別ではない」

「王の命令書がなければ、魂には触れん」

 胸の奥が、冷える。

「……そうか」

 怒りは消えない。

 だが、標的ではなかった。

「お前は、俺の家族を壊した奴じゃない」

 グラーフは薄く笑う。

「復讐相手を探しているのか」

「哀れだな」

「だが残念だ」

「王の下には、

 二十年前から“魂を集めていた者”がいる」

 心臓が跳ねる。

「四人の側近の一人だ」

「私ではない」

「……名前は」

「教えん」

「君が辿り着く」

「生きていれば、だがな」

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