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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
6/72

006

地面が、蠢いた。

 落ち葉の下。

 草の根元。

 倒木の影。

 埋もれていた骨と肉が、掘り起こされるように浮き上がる。

 鹿。

 狼。

 野犬。

 人間。

 腐敗の進んだ屍が、次々と立ち上がっていく。

「数えてみようか、クロウ?」

 狂人ネクロマンサーは、指を折りながら楽しげに笑う。

「……一、二、三……

 ああ、だいたい三十体くらいかな」

 舌なめずりする。

「森ってさ、死体の宝庫なんだよ。

 捨てられた人間、狩られた獣、行き倒れ……」

 腕を広げる。

「ぜんぶ“材料”だ」

 屍の群れが、円を描くように俺を囲む。

 腐臭が濃くなる。

 視界の端で、リリアの息を呑む気配を感じた。

 ――まだ来るなと言ったはずだ。

「君は“質”で戦うタイプだよね?」

 狂人は言う。

「剣の達人の父。

 槍の達人の母。

 精鋭二体で、綺麗に戦う」

 目を細める。

「でもさ、僕は**“量”が好き**なんだよ」

 指を鳴らす。

 三十の屍が、一斉に踏み出した。

 地面が揺れる。

 俺は影を踏み、父と母の残滓を引き寄せる。

 剣閃。

 槍撃。

 一体、二体、三体と屍を断ち、貫き、崩す。

 だが、倒したはずの死体が、別の死体の一部として“再利用”される。

 腕を失った屍が、別の胴体に縫い付けられる。

 頭を潰された獣が、別の脚で這い寄る。

「無駄だよ。

 壊すたびに、“部品”が増えるだけ」

 狂人は笑う。

「君は綺麗すぎる。

 もっと汚く戦わなきゃ」

 俺は舌打ちし、踏み込む。

 影が脈打つ。

 父の剣が、正確に関節を断ち切る。

 母の槍が、術式の核を貫く。

 だが、数が減らない。

 三十という“数”が、じわじわと圧をかけてくる。

「疲れてきた?」

 狂人の声が、頭の奥に刺さる。

「ねえクロウ……

 君ってさ、一人で何人殺した?」

 嘲る。

「五人?

 十人?

 それとも――“もっと”?」

 俺は答えない。

 答える価値もない。

「でもさ……

 殺しすぎなんだよ、君」

 くすくす笑う。

「罪悪感で潰れそうなくせに、

 それでも殺すのをやめない」

 歪んだ目。

「……君も、僕と同じ穴の狢だよ」

 その瞬間だった。

「クロウさん!」

 背後から、聞き覚えのある声。

 振り返る前に、胸の奥が冷えた。

 ――来るなと言った。

 リリアが、森の縁から駆け寄ってくる。

 顔色は青い。

 だが、目は逸らさない。

「危ないから、離れてって……!」

「馬鹿か!」

 思わず怒鳴っていた。

「来るなと言っただろ!」

 声が荒れる。

 死体の一体が、彼女の方へ向きを変えた。

 俺は踏み込み、影を引き裂く。

 屍は、崩れ落ちる。

「……邪魔をするな」

 冷たく言い捨てたはずだった。

 だが――

 リリアと目が合った瞬間、

 表情が一瞬だけ、緩んでいた。

 自覚はない。

 だが、狂人は見逃さなかった。

「……あは」

 低く、笑う声。

「いいもの見ちゃった」

 指を差す。

「君、その子には優しいんだね?」

 楽しそうに目を細める。

「死体には冷たいのに。

 同業には容赦ないのに。

 生きてる女の子には、甘いんだ」

 舌なめずり。

「いい弱点だよ、クロウ」

 囁く。

「――壊しがいがある」

 死体の群れが、一斉にリリアの方へと向きを変えた。

 俺の胸の奥で、何かが弾けた。

「……やめろ」

 低く、震える声。

 狂人は両腕を広げ、陶酔したように叫ぶ。

「守ってみなよ!

 家族の死体と、

 生きてる女の子と、

 どっちを選ぶか……!」

 俺は影を踏みしめる。

 父と母の残滓が、前へ出た。

 剣と槍が、リリアの前に立ちはだかる。

 ――守る。

 それだけは、譲れない。

 狂人の笑い声が、森に響き渡った。

 「最高だよ、クロウ……

 君の“人間らしさ”、もっと見せてくれよ……!」

 屍の群れが、襲いかかる。

 戦いは、さらに激化していった。

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