表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末のネクロマンサー  作者: あああ
死霊王国
57/72

057

崩れた家の中は、静かだった。

 風が壁の穴を抜ける音。

 遠くで獣の鳴き声。

 それだけが、夜の証だった。

 横になる。

 身体は鉛のように重い。

 目を閉じた瞬間、意識が沈む。


 ――あの家だ。

 古い木造の家。

 軋む床。

 暖炉の火。

 笑い声。

「クロウ、走るな」

 父の声。

「ほら、転ぶわよ」

 母の声。

「兄ちゃん!」

 弟の声。

 八歳の俺。

 五歳の弟。

 四人で笑っていた。

 次の瞬間。

 音が、壊れる。

 窓が割れる。

 扉が吹き飛ぶ。

 黒い影が入ってくる。

 人の形をしているのに、

 人の温度がない。

 剣の音。

 骨の砕ける音。

 肉の裂ける音。

 父が倒れる。

 母が倒れる。

 声が出ない。

 喉が動かない。

 弟が、叫ぶ。

「にいちゃ――」

 手が伸びる。

 小さな手。

 黒い腕が、それを掴む。

 引きずられる。

 血。

 床。

 天井。

 俺は――

 動けない。

 声も出せない。

 壊れた箪笥の裏。

 倒れた棚の隙間。

 偶然できた暗闇。

 そこに、縮こまっている。

 足音。

 血の滴る音。

 影が、部屋を見回す。

「……使えないな」

 低い声。

 父と母の死体を見下ろし、

 吐き捨てるように言う。

「壊れている」

 そして去る。

 弟だけを連れて。

 扉が閉まる。

 世界が、止まる。


 ――息ができない。

 身体が跳ね起きる。

 喉が鳴る。

 肺が焼ける。

 汗で全身が濡れている。

「……っ」

 手が震える。

 剣を探し、

 何もない空気を掴む。

「クロウさん……!」

 リリアの声。

 現実。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ