051
王城を出てからも、
胸の奥の違和感が消えなかった。
整いすぎた死。
穏やかすぎる骸。
秩序として並べられた終わり。
――あれは、共存じゃない。
管理だ。
王都の外れ、
死体花を売る露店の老婆がいた。
骸骨の台車を操りながら、
誰にともなく呟く。
「王様は、優しいよ」
「戦争を、
ずっと望んでおられる」
足が止まる。
「……どういう意味だ」
老婆は、骨の指で空を指す。
「死体が足りないのさ」
その一言で、
全てが繋がった。
裏通りの書庫。
焼け残った王族名簿。
隠された年代記。
そこにあった事実。
・二十年前、王族が皆殺し
・死因:原因不明の疫病
・遺体:すべて消失
・即位:現在の王(身元不詳)
――疫病ではない。
ネクロマンスだ。
王を支える“四人”は、
・戦場死体の回収担当
・魂の縛り手
・疫病と大量死の演出者
・記録改竄と記憶操作の術者
国家運営ではない。
戦争製造装置だ。
あの男は王ではない。
ただの――
死霊術に取り憑かれた狂人だ。
王族を殺し、
玉座に座り、
国を操り、
戦争を起こし、
死体を増やし、
屍兵を増やし、
無限の軍勢を作ろうとしている。
そのための国。
そのための平和。
そのための“共存”。
力は責任だ
王国の死になれ
逃げ場になる
違う。
お前も部品になれ
死体を集めろ
兵器になれ
そういう意味だった。
背中に、冷たい汗が流れる。
迫害の国は地獄。
だが、
この国は――
地獄を育てる箱庭だ。
「……王様ごっこか」
吐き捨てる。
王の椅子。
死体の山。
操り糸。
それを“秩序”と呼ぶなら、
俺はその秩序の敵だ。
リリアが、静かに言う。
「……止めないと」
「ああ」
「だが正面からじゃ無理だ」
「この国そのものが、
巨大なネクロマンス陣だ」




