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王都へ続く街道は整備され、
死の気配はさらに濃くなる。
だが――
不思議と不快ではない。
この国では、死が隠されていない。
道端には小さな慰霊碑が並び、
枯れた花と新しい花が混ざって供えられている。
生と死が、
時間の差なく並んでいる。
「……王都は、もっと異様でしょうね」
リリアの言葉に、
俺は小さく息を吐く。
「ああ。
だが、目を逸らすつもりはない」
王都は高い城壁に囲まれている。
だが、
聖印も、処刑台もない。
門番は俺を見ると、
即座に姿勢を正した。
「ネクロマンサー……ですね?」
否定しない。
肯定もしない。
だが、
それだけで態度が変わる。
「謁見を手配します」
――捕縛ではない。
――警戒でもない。
“招待”だ。
王城の奥。
広い玉座の間には、
五つの席が並んでいる。
中央に王。
そして左右に――
四人のネクロマンサー。
王は若くも老いてもいない。
生と死の境目に立つような存在だ。
「ようこそ、旅の死霊術師よ」
その声は穏やかだった。
それぞれが異なる“死”を纏っている。
・戦場の骸を操る者
・魂の対話を司る者
・疫病と腐敗を制御する者
・記憶と死を編む者
そして王は――
“終わりそのもの”を統べる者。
俺は視線を逸らさない。
王が言う。
「この国では、
ネクロマンサーは迫害されない」
「力は恐れではなく、
責任として扱われる」
「お前の力を、
我々に貸してほしい」
四人のネクロマンサーも続く。
「王国の一席を与えよう」
「自由も、地位も、保護もある」
「二度と追われることはない」
――甘い条件だ。
心が揺れる。
迫害から解放される未来。
追われない人生。
力を“罪”とされない世界。
だが――
胸の奥が拒絶する。
俺は、王の犬にはならない。
誰かの死を、国家の道具にはしない。
俺は答える。
「……断る」
玉座の間が静まり返る。
「俺は王国の死にはならない」
「俺は、
俺自身の贖罪を生きる」
四人のネクロマンサーが
興味深そうに微笑う。
王は怒らない。
「……ならば、旅人であれ」
「だが覚えておけ。
この国は、
お前の“逃げ場”にもなり得る」
王城を出た後、
リリアが小さく息を吐く。
「……断って、
後悔はありませんか?」
「あるさ」
「だが、
選ばなかった後悔の方が軽い」
俺は歩き出す。
街では、
骸骨の街灯守が灯りをともしている。
子供が死霊に本を読み聞かせている。
花屋には、
“墓前用の花束”と
“帰還祝いの花束”が並んでいる。
死が、完全に日常だ。
だが、
心はまだ安らがない。




