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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
5/72

005

死体の塊が、地面を削りながら迫ってくる。

 鹿の脚が不自然に捻れ、人間の腕がぶら下がり、狼の顎が噛みつこうと開閉を繰り返す。

 ――醜悪な集合体。

 俺は踏み込み、刃を振るった。

 肉を裂き、骨を断ち、腱を断つ。

 だが、切り落とした部位は地面に落ちる前に、再び引き戻される。

「いいねえ……いいよぉ……!」

 狂人ネクロマンサーは、陶酔した声で笑う。

「普通の人間は、こんなの見たら吐くんだよ?

 でも君は……眉一つ動かさない」

 死体の腕が伸び、俺の肩を掴もうとする。

 俺は影に触れ、その“縁”を引き剥がした。

 腕は力を失い、泥のように崩れる。

「……ほう?」

 男の目が細まる。

「ただ操るだけじゃない……

 他人のネクロマンスに干渉できるタイプか」

 鋭い観察力。

 こいつは狂っているが、頭は切れる。

「君、どれくらい“殺した”?

 五人? 十人?

 それとも――もっと?」

 挑発するように、指を鳴らす。

「普通さ、ネクロマンサーは同業を避けるんだよ。

 だって“仲間”だから」

 口元が歪む。

「なのに君は、狩っている。

 まるで――“掃除”でもするみたいに」

 図星だ。

「なぜだい?

 復讐?

 使命?

 それとも……趣味?」

 俺は低く答える。

「黙れ」

「あはは……効いてるねえ」

 楽しそうに肩を揺らす。

「君の影、すごいんだよ。

 死体が“使われ慣れている”」

 男は、俺の背後を指差した。

「普通のネクロマンサーはさ、

 死体を“道具”としてしか見ないんだ」

 舌なめずりする。

「でも君の影は違う。

 あれ、家族みたいだ」

 胸の奥が、ひび割れた。

「……何が言いたい」

 男は、心底楽しそうに笑った。

「君が使ってる死体……

 父親と母親だろ?」

 空気が凍る。

 世界が、音を失う。

「剣の名手と、槍の名手。

 かなり“癖のある動き”だよ」

 目を細める。

「戦い方に、感情が残ってる。

 あれは他人じゃない――血の繋がった死体だ」

 俺は、短剣を握り締めた。

 殺意が、喉元まで込み上げる。

「……黙れ」

「図星だねえ……」

 男は、うっとりと呟く。

「いいなあ……

 家族を使うネクロマンサー……

 最高にロマンがある」

 嘲笑。

「環境で壊れた連中とは、やっぱり違うよ君。

 君はもう……選んで狂ってる」

 死体の塊が、再び迫る。

 俺は影を踏み込む。

 背後に、**二つの“気配”**が浮かび上がる。

 剣を構える父の残滓。

 槍を構える母の残滓。

 狂人の目が、大きく見開かれた。

「うわあ……本物だ……

 夫婦で戦う死体とか、最高すぎる……!」

 興奮で声が裏返る。

「ねえクロウ、貸してよ。

 君の“家族”」

 両腕を広げる。

「もっと美しく使ってあげる。

 君より、ずっと上手に」

 俺は、影を引き寄せる。

「……触るな」

 低く、噛み殺す。

「これは――俺の罪だ」

 男は、恍惚とした表情で呟いた。

「いいね……

 罪を背負って、死体を使って、同業を殺して……」

 歪んだ笑み。

「君こそ、

 最高のネクロマンサーだよ」

 死体の群れが、一斉に距離を詰める。

 俺も、一歩踏み出す。

 影が、父と母の形を取る。

 剣と槍が、かすかに揺れた。

 視線が交錯する。

 殺意と狂気が、ぶつかり合う。

 ――だが、決着はまだ遠い。

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