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終末のネクロマンサー  作者: あああ
死霊王国
48/72

048

日が傾き、

 森の縁で馬車を止める。

 焚き火。

 硬いパン。

 薄いスープ。

 簡素な食事。

 それでも、

 生きている証だ。

 リリアが言う。

「ヴェルケン王国って……

 本当にネクロマンサーが治めているんでしょうか」

「ああ。

 噂だけではない可能性が高い」

「もし本当なら、

 ここまで迫害される必要は……」

 言葉は続かない。

 希望を口にするには、

 この世界は残酷すぎる。


 俺は火を見つめながら言う。

「迫害される者が支配するなら、

 そこは楽園にはならない」

「だが、

 地獄とも限らない」

 奪う側に立てば、

 奪われる側の痛みは薄れる。

 だが、

 それは正しさではない。

「確かめたいだけだ」

「ネクロマンサーが“裁く側”になったとき、

 どんな国が生まれるのか」

 それは、

 未来の自分を覗く行為でもある。


 夜。

 森は静かだが、

 完全ではない。

 枝の折れる音。

 遠くの獣の唸り。

 誰かが見ている気配。

 俺は眠らない。

 剣を膝に置き、

 火を見張る。

 ふと、

 過去の声が蘇る。

 ――斬った者たちの顔。

 ――呪詛。

 ――断末魔。

 ――泣き声。

 目を閉じれば、

 死者が並ぶ。

 それでも、

 眠りはやってくる。


 夢の中で、

 俺は処刑台に立っている。

 首を刎ねられるのは、

 自分だ。

 群衆の中に、

 あの老人の姿がある。

 静かに言う。

「あなたは、

 奪う者ですか?」

「それとも、

 送る者ですか?」

 答えは出ない。

 目を覚ましたとき、

 額は冷たい汗で濡れていた。


 夜明け。

 灰色の空。

 湿った風。

 馬車は再び動き出す。

 道はさらに荒れ、

 国境へ近づいていく。

 検問所の影。

 見張り台。

 翻る国旗。

 ――ヴェルケン王国は近い。


胸の奥で、

 静かな期待が芽生える。

 迫害のない国。

 死霊術師が支配する街。

 敵か、

 あるいは――

 鏡か。

 俺は呟く。

「……見せてもらうぞ」

「ネクロマンサーの国が、

 どんな“答え”を出したのか」

 馬車は、

 境界へ向かって進む。

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