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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
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カーディナルで、数日を過ごした。

 戦いはない。

 追跡もない。

 ただ、息を整える時間だけがある。

 朝は宿の薄いスープを啜り、

 昼は市場で乾いたパンを買い、

 夜は酒場の片隅で、

 街の声を聞く。

 リリアは弓の手入れをし、

 俺は手帳を閉じたまま、開かない。

 黒く塗り潰された名は、

 増えていない。

 ――静けさは、嫌いじゃない。

 だが、長くは続かない。


 酒場は騒がしい。

 木の床。

 濁った酒。

 笑い声と悪意。

 隣の卓の男たちが、

 ひそひそと話している。

「聞いたか?

 ヴァルケン王国の話」

「ネクロマンサーが統治してるってやつか?」

 耳が、自然とそちらを向く。

「王も貴族も裏に引っ込んで、

 死霊術師が“法”を決めてるらしい」

「死者で軍隊を作ってるとか……

 気味の悪い国だ」

 嘲りの笑い。

 嫌悪の溜息。

 ――ネクロマンサーが、国を治める。

 荒唐無稽だが、

 ありえない話ではない。

もうひとつの噂

 別の男が、声を潜める。

「……ところでよ。

 あの“変わり者の爺さん”の話、知ってるか?」

 胸の奥が、わずかに締まる。

「裏通りの、

 小さな教会の老人だ」

「慰霊ばっかりしてた、

 あの気味悪いやつ」

 ――あの老人だ。

「ネクロマンサーだったんだとよ」

「昨日の朝、

 広場で処刑された」

 笑い声。

 酒の泡。

 無関心。

「やっぱりな」

「化け物は化け物だ」

「街が綺麗になる」

 言葉が、耳に刺さる。


 リリアが、俺を見る。

 何も言わない。

 だが、視線だけでわかる。

 ――聞いてしまった。

 ――知ってしまった。

 俺は酒を飲み干し、

 静かに言う。

「……あの老人は、

 誰も縛っていなかった」

「奪ってもいなかった」

「ただ、

 送り続けていただけだ」

 リリアの唇が、かすかに震える。

「それでも……

 殺されたんですね」

「ああ」

「ネクロマンサーだからだ」


 酒場を出ると、

 街は静かだった。

 灯り。

 石畳。

 遠くの鐘。

 死の臭いが、

 ひとつ増えている。

 俺は空を見上げる。

 ――奪う者。

 ――送る者。

 ――殺される者。

 違いは、

 街にとっては意味がない。


 胸の奥で、言葉が渦を巻く。

 あの老人は、

 俺よりよほど“まとも”だった。

 それでも、

 首を刎ねられた。

 ――なら、

 俺が辿る末路は決まっている。

 リリアが静かに言う。

「……クロウさん。

 この街、

 長く居る場所じゃないですね」

「ああ」

「長く居たいとも思わない」

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