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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
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小屋の外に出ると、

 夜の空気は冷たく澄んでいた。

 甘ったるい紅茶の香りは、

 もう残っていない。

 アリスだった存在は、

 淡い光となって霧散し、

 やがて完全に消えた。

 クロウさんは剣を地面に突き立て、

 長い間、動かなかった。

 私は小さく祈る。

「……どうか、安らかに」

 誰に向けた祈りなのか、

 自分でもわからなかった。


 焚き火を起こしても、

 会話は生まれない。

 木の爆ぜる音だけが、

 二人の間を満たしていた。

 やがて、

 クロウさんが低く言う。

「……悪かった」

 それ以上、

 言葉は続かなかった。

 私は首を横に振る。

「……正しいとは、言えません」

「でも……

 必要だったんだと思います」

 沈黙が、

 再び落ちる。

夜営 ― 見張りの交代

 簡易の寝床を作り、

 荷物を寄せる。

「先に休んでください」

 私が言うと、

 クロウさんは首を振った。

「……最初の見張りは俺がやる」

「では、

 二刻後に交代しましょう」

 私は横になり、

 目を閉じる。

 焚き火の揺らぎが、

 意識をゆっくり溶かしていく。


 肩を軽く揺すられ、

 私は目を開ける。

「……交代だ」

 短い言葉。

 私は立ち上がり、

 見張りにつく。

 その間に、

 クロウさんは寝床に横になる。

 やがて、

 夜の静けさが深まっていく。

悪夢 ― 屠ってきた者たち

 眠りに落ちたクロウの意識に、

 過去が忍び寄る。

 暗闇の中に浮かぶ顔。

 神父。

 ネクロマンサー。

 死装士。

 屠ってきた相手の視線が、

 一斉にこちらを向く。

「お前も、

 同じだろう」

「奪った命の数を、

 覚えているか?」

 その声に重なって、

 幼い日の記憶がよみがえる。

 血の匂い。

 崩れた家。

 取り返しのつかない選択。

 そして、

 アリスの微笑み。

「一緒にいようよ」

 剣を握る手が震え、

 胸の奥が締めつけられる。

 屠った者たちの影と、

 過去の自分が重なっていく。


 私は焚き火のそばで見張りながら、

 異変に気づく。

 クロウさんの呼吸が荒い。

「……やめろ……」

 歯を食いしばり、

 閉じた瞼の隙間から、

 涙がこぼれていた。

 私は小さく声をかける。

「……クロウさん」

 彼は、

 はっと息を吸い、

 目を開く。

 しばらく、

 何も言えないまま――

 かすれた声でつぶやく。

「……俺は、

 どれだけの命を

 背負ってきたんだ……」

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