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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
33/72

033

久しぶりに、

 血の匂いがしない街だった。

 レインフォールの大通りには屋台が並び、

 焼いた肉の香りと、

 甘い菓子の匂いが漂っている。

「……いい匂いですね」

 リリアが目を輝かせる。

「好きなものを頼め」

 俺は言う。

「え、いいんですか?」

「戦闘続きだった。

 今くらいは、休め」


 木製のテーブルに並ぶ料理。

 焼きたてのパン。

 香草をまぶした鶏肉。

 具沢山のシチュー。

 果実酒を薄めた甘い飲み物。

 リリアは、

 どこか遠慮がちに口に運び――

 やがて、素直に笑った。

「……おいしいです」

「味がするうちは、生きている証拠だ」

 俺の言葉に、

 彼女は少し苦笑する。

「クロウさんは、

 もう少し普通のことを言ってもいいと思います」

 返事はしない。

 だが、

 料理の温かさだけは、確かに感じていた。

街のざわめき

 周囲では、

 商人や旅人が酒を飲みながら話している。

「――聞いたか?」

「また消えたらしいぞ」

 小さな声が、

 耳に引っかかる。

 俺は何気なく視線を向ける。


「カーディナルへ向かう街道沿いに、

 小さな小屋があるらしい」

「泊まった旅人が、

 帰ってこないんだと」

「強盗か?」

「いや……

 荷も金も残ったままだったって話だ」

 空気が、

 わずかに冷える。

「……つまり?」

 リリアが小声で尋ねる。

「盗賊ではない」

 俺は即答する。

「金を取らない失踪は、

 もっと厄介だ」


 皿の上の料理を見つめる。

 さっきまでの温かさが、

 少しだけ遠のく。

「……次の目的地は?」

 リリアが問う。

 俺は答える。

「カーディナルだ」

「街道の小屋も、

 通り道になる」

 視線を上げる。

「確かめる価値はある」


 レインフォールは、

 今日も賑やかだ。

 笑い声。

 乾杯の音。

 商談の声。

 だが、

 その賑わいの外れで――

 旅人が、静かに消えている。

 次に馬車が走る道には、

 “事件の匂い”が待っている。

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