表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
31/72

031

馬車が門をくぐると、

 街の音が一気に押し寄せた。

 商人の呼び声。

 荷車の軋む音。

 金属と硬貨のぶつかる乾いた響き。

 レインフォールは、生きている街だった。

 露店には果実が並び、

 香辛料の匂いが漂い、

 子どもたちが笑いながら駆け回る。

 人は多い。

 金は巡っている。

 死の気配は――

 ごく自然な量だけ。

 墓地の匂いも、

 病人の匂いも、

 貧民街の腐臭も。

 異常な濃度はない。

「……普通の街ですね」

 リリアが呟く。

「だからこそ、調べる価値がある」

 俺は答える。

違和感が“ない”という違和感

 術式を薄く展開し、

 縁を辿る。

 死者はいる。

 霊も漂っている。

 だが――

 歪みがない。

 魂は抑留されていない。

 無理に縛られた痕跡もない。

 ここには、

 ネクロマンサー特有の爪痕は見当たらない。


 俺は思い出す。

 若き神父の術式。

 死体を家具に加工し、操る能力。

 もし、

 二十年前に村を襲った犯人と同一なら――

 父と母の遺体は、

 道具として利用されていたはずだ。

 だが、

 あのときは違った。

 父と母は使われなかった。

 弄ばれもしなかった。

 “捨てられた”。

 結論は静かに落ちる。

「……別人だ」

 口には出さない。

 だが、確信している。


 犯人は、

 もっと“違う歪み”を持っていた。

 死を嗜好としてではなく、

 “目的”として扱う者。

 あるいは――

 “執着”のために使う者。

 あのネクロマンサーは、

 道具ではなく

 “探し物”をしていた。

 そして、

 弟だけを持ち去った。

 理由は、まだ不明だ。


 リリアが歩きながら言う。

「……ここ、

 本当に事件があるんでしょうか?」

「ない方がいい」

 俺は即答する。

「だが、

 “ない街”ほど、輸送拠点に向いている」

 死体は目立たない場所を通る。

 平穏な街ほど、

 隠しやすい。


 俺は街を見渡す。

「倉庫街を調べる」

「商人の流れを追う」

「検問の情報を集める」

「戦いはまだ先だ」

 そう告げて歩き出す。


 レインフォールは今日も賑やかだ。

 誰もが金を数え、

 未来を語り、

 死のことなど気にも留めない。

 だが俺は知っている。

 “死体は、こういう街を通って運ばれる”

 ということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ