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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
3/72

003

朝の空気は冷たく、湿っていた。

 宿屋を出た俺とリリアは、並んで街道を歩いていた。

 昨夜の出来事を引きずっているのか、彼女は何度もこちらを盗み見てくる。

「……本当に、一緒に行ってもいいんですか?」

「好きにしろと言ったはずだ」

「でも、迷惑じゃ……」

「迷惑になるなら、置いていく」

 素っ気なく言うと、彼女は小さく笑った。

「じゃあ、まだ大丈夫ですね」

 よく分からない理屈だ。

 街道の先に、小さな検問所が見えてきた。

 木製の柵と、くたびれた兵士が二人。

「止まれ。通行証を見せろ」

 リリアは素直に荷物を差し出した。

 兵士はそれを一瞥し、問題なく返す。

 次に、俺の番が来た。

 兵士の目が、腰の短剣と黒い外套に留まる。

「職業は?」

「旅人だ」

「……それだけか?」

 疑いの色。

 俺が答える前に、後ろの住民の一人がひそひそと囁いた。

「……あいつ、ネクロマンサーじゃないか?」

 空気が一変した。

 兵士の表情が硬直する。

「おい……まさか……」

 周囲の人々が、俺から距離を取る。

 まるで疫病患者を見るような目だった。

「違います!」

 リリアが思わず声を上げる。

「クロウさんは、悪い人じゃありません!」

 だが、その言葉は逆効果だった。

「擁護するってことは、仲間か?」

「関わるなよ、そいつに……」

「死体を弄ぶ狂人だぞ」

 吐き捨てるような声。

 恐怖と嫌悪が、遠慮なく向けられる。

 兵士は槍を構え、俺を指した。

「ネクロマンサーは町に入ることを禁じられている。

 通過するなら、監視付きだ」

 それが、この国の“常識”。

 ――ネクロマンサーは、人間扱いされない。

 俺は静かに笑った。

「安心しろ。長居するつもりはない」

 兵士は警戒を解かないまま、俺たちを通した。

 背中に突き刺さる視線が、痛いほど重かった。

 検問所を抜けた後、リリアは悔しそうに唇を噛んだ。

「……ひどいです。何も知らないくせに」

「知っているからだ」

「え?」

「ネクロマンサーは、死体を操る。

 魂を縛り、死を踏みにじる存在だと教えられている」

 それは、間違ってはいない。

「……でも、クロウさんは、違う」

「同じだ」

 即答した。

「俺も、死体を使う。

 それだけで、迫害される理由には十分だ」

 リリアは首を振った。

「それでも……私は、あなたが怖くない」

 少し困ったような、けれど真剣な目だった。

 歩きながら、俺はぽつりと口を開いた。

「ネクロマンサーは、この世界で48人いると言われている」

「……そんなに?」

「ああ。そして、全員“危険人物”として記録されている」

「じゃあ……捕まえられたり……?」

「殺されるか、狩られるか、追い詰められるかだ」

 事実を、淡々と告げる。

「俺も、その一人だ」

 リリアの歩みが止まる。

「……じゃあ、あなたも、ずっと追われているんですか?」

「追われる側であると同時に、追う側でもある」

 リリアは、意味を理解できずに首を傾げた。

 俺はそれ以上説明しなかった。

 ――まだ、話すつもりはない。

 

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