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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
27/72

027

真名が響いた瞬間、

 影だったものは**“形”を持った。**

 否――

 もはや影ではない。

 鎧を着た骸。

 骨の上に、

 黒鉄の胸甲が“縫い付けられた”かのように現れ、

 朽ちた四肢には戦装束が絡みつく。

 父の骸――

 重装の剣士。

 母の骸――

 長柄槍を携えた騎兵。

 空気が、さらに沈む。

「……段階を進めたか」

 神父の声は、愉悦を帯びていた。

「影の再現ではない。

 実体化した“死の兵”。」

「やはり――

 あなたは傑作だ、ネクロマンサー狩り」

 俺は答えない。

 ただ、手を下げる。

「――制圧しろ」


 父の骸が踏み込む。

 金属の足音が、石床を叩き割る。

 剣が振り下ろされ、

 肉の机を真っ二つに裂く。

 母の骸は側面へ回り込み、

 槍で骨の棚を縫い止める。

 家具が呻き、

 血の塗料が剥がれ、

 神父の“作品”が次々と崩壊していく。

「……美しくない」

 神父が舌打ちする。

「私の芸術を、兵器として消費するな」


 床が鳴る。

 椅子が蠢き、

 戸棚が裂け、

 人骨の刃を生やした家具が一斉に迫る。

 刃が奔り、

 鎧を掠め、

 火花と骨粉が舞う。

 父の骸が防ぐ。

 母の骸が叩き落とす。

 だが――

 数が多い。


 俺は前へ出る。

 鎖のように連なる縁を視認し、

 結び目を断つ。

 家具を操る“核”――

 神父の術式へと、

 干渉を流し込む。

 ――重い。

 ――歪んでいる。

 ――嗜好で死を弄ぶ精神。

 胸の奥が、嫌悪で満たされる。

「……壊す」


 神父が両腕を広げる。

「ならば――

 祭壇ごと、動かそう」

 背後の祭壇が鳴動する。

 肉と骨と木片が融合し、

 巨大な“聖具の怪物”へと変貌する。

 聖人像の顔が歪み、

 肋骨が扉のように開き、

 内側から人骨の刃が展開される。

「これは私の最高傑作だ。

 “祈りで作った屍体”」


 俺は叫ぶ。

「――前へ!」

 父の骸が剣を掲げ、

 母の骸が槍を構え、

 鎧の関節を鳴らして突撃する。

 鋼と骨がぶつかり合い、

 協会が戦場へと変わる。

 そして、

 俺は確信する。

 この戦いは、もう逃げ場のない領域に入った。

 ここで決着をつけなければならない。

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