027
真名が響いた瞬間、
影だったものは**“形”を持った。**
否――
もはや影ではない。
鎧を着た骸。
骨の上に、
黒鉄の胸甲が“縫い付けられた”かのように現れ、
朽ちた四肢には戦装束が絡みつく。
父の骸――
重装の剣士。
母の骸――
長柄槍を携えた騎兵。
空気が、さらに沈む。
「……段階を進めたか」
神父の声は、愉悦を帯びていた。
「影の再現ではない。
実体化した“死の兵”。」
「やはり――
あなたは傑作だ、ネクロマンサー狩り」
俺は答えない。
ただ、手を下げる。
「――制圧しろ」
父の骸が踏み込む。
金属の足音が、石床を叩き割る。
剣が振り下ろされ、
肉の机を真っ二つに裂く。
母の骸は側面へ回り込み、
槍で骨の棚を縫い止める。
家具が呻き、
血の塗料が剥がれ、
神父の“作品”が次々と崩壊していく。
「……美しくない」
神父が舌打ちする。
「私の芸術を、兵器として消費するな」
床が鳴る。
椅子が蠢き、
戸棚が裂け、
人骨の刃を生やした家具が一斉に迫る。
刃が奔り、
鎧を掠め、
火花と骨粉が舞う。
父の骸が防ぐ。
母の骸が叩き落とす。
だが――
数が多い。
俺は前へ出る。
鎖のように連なる縁を視認し、
結び目を断つ。
家具を操る“核”――
神父の術式へと、
干渉を流し込む。
――重い。
――歪んでいる。
――嗜好で死を弄ぶ精神。
胸の奥が、嫌悪で満たされる。
「……壊す」
神父が両腕を広げる。
「ならば――
祭壇ごと、動かそう」
背後の祭壇が鳴動する。
肉と骨と木片が融合し、
巨大な“聖具の怪物”へと変貌する。
聖人像の顔が歪み、
肋骨が扉のように開き、
内側から人骨の刃が展開される。
「これは私の最高傑作だ。
“祈りで作った屍体”」
俺は叫ぶ。
「――前へ!」
父の骸が剣を掲げ、
母の骸が槍を構え、
鎧の関節を鳴らして突撃する。
鋼と骨がぶつかり合い、
協会が戦場へと変わる。
そして、
俺は確信する。
この戦いは、もう逃げ場のない領域に入った。
ここで決着をつけなければならない。




