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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
24/72

024

鳩時計の小扉が開いた。

 黒い鳥の人形がせり出し、

 ぎこちなく羽を打ちながら時を告げる。

 ――カチ、

 ――カチ、

 ――コトン。

 その音を聞いた瞬間、

 胸の奥が冷えた。

 そして、

 静かに燃え上がった。

 俺は、

 振り返らない。

「……逃がさない」

 それだけ告げて、

 一歩踏み込む。


「おや」

 背後の神父が、

 穏やかに微笑む。

「随分と血の気がお早いですね。

 巡礼殿」

「人を素材扱いする趣味はない」

「残念です」

 肩をすくめる。

「私は、

 “肉の価値”を理解しているだけなのですが」


 神父が指を鳴らす。

 椅子が軋む。

 棚が震える。

 聖卓が、ゆっくりと宙へ浮く。

 縫い合わされた人皮の表面が、

 ぬるりと歪む。

「距離を取れ、リリア」

「……はい!」

 机が横滑りし、

 通路を塞ぐ。

 長椅子が跳ね上がり、

 盾のように道を塞ぐ。

「――鬱陶しい」

 俺は、

 正面から突っ込む。


 短剣を振るう。

 刃が、

 “肉の家具”に食い込む。

 裂ける。

 裂けた断面から、

 乾いた呻き声のような残響。

 気にしない。

 止まらない。

「止められると思うな」

 俺は踏み込み、

 机を蹴り砕く。


「聖よ――!」

 光を帯びた矢が飛ぶ。

 家具の核を撃ち抜く。

 椅子が痙攣し、

 床に沈黙する。

「素晴らしい……」

 神父が、

 本気で感心したように微笑む。

「聖術は、

 やはり“仕上げ”に向いていますね」


 神父の袖から、

 白い刃が滑り落ちる。

 人骨で削られたナイフ。

 薄く、

 美しく、

 異様に整っている。

「では、

 私が直接お相手しましょう」

 床を滑るように接近。

 ――閃き。

 喉。

 腱。

 心臓。

 解体を前提とした角度。

 俺は、

 すべてを弾く。

「聖職者の動きじゃないな」

「職人ですので」

 穏やかに答える。

「“家具にする前の工程”には、

 こだわりがありまして」


 神父は微笑みながら斬る。

「人は、

 死んでも役に立てます」

「棚になれば百年、

 椅子になれば人を支え続け、

 時計になれば――

 永遠に時を刻める」

 鳩時計が鳴る。

 黒い鳥の人形が、

 笑っているように見えた。

「……黙れ」

 俺は踏み込む。


 術式を展開。

 “縁の干渉”

 家具と、

 縛られた魂の繋がりを

 わずかに揺らす。

 棚が悲鳴のような音を立て、

 机が震える。

「ほう……」

 神父の目が細まる。

「あなたは、

 **“縁をほどく側”**ですか」

「羨ましいですね」

「私は――

 縫い止める側ですので」


 指を鳴らす。

 机。

 書架。

 長椅子。

 複数の家具が同時に襲来。

「リリア!」

「分かっています!」

 聖光が走り、

 家具の動きが鈍る。

 だが、

 神父は一歩も引かない。

「今夜は、

 まだ“未完成”です」

「ですが――」

 穏やかに告げる。

「あなたは、

 必ず“逸品”に仕上げます」


 刃と骨がぶつかる。

 家具が砕け、

 鳥の人形が鳴く。

 夜の協会に、

 乾いた殺意が満ちる。

 決着は、

 まだつかない。

 だが、

 狩りは始まった。

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