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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
14/72

014

夜の路地は、息を潜めていた。

 瓦屋根の影。

 濡れた石畳。

 逃げ場のない袋小路。

 ――ここまで追い詰めた。

 父の剣を構え、

 母の槍の気配を背に感じながら、

 俺は“それ”を睨む。

 相手の姿は、

 若い男の顔をしていた。

 だが、その輪郭はどこか曖昧で、

 まるで“仮面を被った肉”のようだった。

「……もう終わりだ」

 俺の声は冷えていた。

「逃げ場はない。

 エルミナ=クロス」

 その名を告げた瞬間、

 相手の口元が歪んだ。

「……へえ。

 もう“そこ”まで知ってるんだ?」

 声が、微かに揺れる。

 だが、

 どこか演技めいている。

「ネクロマンサー狩り。

 趣味が悪いね」

「黙れ」

 刃を向ける。

「お前は街の人間を殺した。

 それだけで、十分だ」

「……正義のつもり?」

 死装の肉が波打つ。

 頬骨がずれ、

 目の位置が僅かに変わる。

「それとも――

 “復讐者”のつもり?」

 胸の奥が、ひくりと疼いた。

「質問に答えろ」

 俺は低く言う。

「二十年前、

 レインハルト村に来たことはあるか」

 一瞬の沈黙。

 敵の視線が、

 わずかに細められた。

「……村の名前、覚えてるんだ?」

 軽い口調。

 だが、

 その反応が、気にかかった。

 俺の内心は冷静だった。

 ――違う。

 能力が合わない。

 当時のネクロマンサーは、

 こんな術は使っていなかった。

 しかも、

 記憶の中では“男”だった。

「答えろ」

 剣先を一歩近づける。

「行ったことはあるか」

 相手は肩をすくめる。

「さあね。

 小さな村はたくさんある」

「誤魔化すな」

「誤魔化してるのは、

 あんたのほうじゃない?」

 死装の顔が歪む。

「……二十年前。

 家族を失った少年。

 泣きながら死体を見ていた子ども」

 その言葉に、

 血の気が引いた。

「――どこで、それを知った」

 声が低くなる。

「噂よ」

 軽い調子。

「ネクロマンサー界隈では、

 案外有名な話」

「……」

「“あの事件をきっかけに狂った男がいる”ってね」

 俺の胸の奥で、

 縁が軋んだ。

 父の剣が、

 わずかに震える。

 母の槍の気配が、

 ざわめいた。

「……お前じゃない」

 ぽつりと零す。

「二十年前の犯人は、

 お前じゃない」

 敵は、

 くすりと笑った。

「さあ、どうかな」

 顔が、

 一瞬だけ“別の誰か”に見えた。

 男にも、

 女にも、

 どちらにも見える曖昧な輪郭。

「でもね」

 死装の腕が、

 刃の形へと変形する。

「――過去に縛られてる人間って、

 だいたい弱いのよ」

 踏み込む。

 斬撃。

 俺は父の剣で受け止める。

 火花が散り、

 金属音が夜に響く。

 母の槍が追撃する。

 相手の肩を貫き、

 黒い煙が噴き上がった。

「……っ」

 膝をつく敵。

 追い詰めた。

 今なら、終わらせられる。

 剣を振り上げながら、

 俺は最後に問いを投げた。

「レインハルト村で、

 何をした」

 敵は、

 血の混じる笑みを浮かべた。

「……知りたい?」

「答えろ」

「だったら――

 殺してから聞きなさい」

 次の瞬間、

 死装の肉体が大きく歪んだ。

 逃走の構え。

 あるいは、

 まだ切り札がある。

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