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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
13/72

013

嫌な予感は、的中した。

 街外れの路地に踏み込んだ瞬間、

 空気がわずかに歪む。

「……クロウさん?」

 リリアの声が、半拍遅れた。

「止まるな」

 言い終えるより早く、

 地面の影が蠢いた。

 影の中から伸びた“腕”。

 肉でも骨でもない、

 変形途中の死装の腕が、俺の足首を掴もうとする。

 俺は即座に跳び退き、

 父の剣を展開する。

 刃が影を裂き、

 腐った肉片が宙を舞った。

「……罠だ」

 リリアが息を呑む。

「待ち伏せか……!」

「違う」

 俺は周囲を睨む。

「狩りの反転だ。

 俺たちが“獲物”にされた」

 次の瞬間、

 四方の路地から“人影”が現れる。

 若い男。

 中年の女。

 門番。

 浮浪者。

 ――全員、同じ死の匂いをまとっている。

「……分身?」

「いや……

 着替えだ」

 敵は一体ではない。

 姿を変えながら、街全体を“身体”のように使っている。

 同時に襲いかかる攻撃。

 腕が斧へ。

 脚が鎌へ。

 肋骨が刃へと歪む。

 街中でなければ、

 遠慮なく薙ぎ払える。

 だが、ここでは違う。

「リリア、離れるな!」

 俺は前に出る。

 母の槍が顕現し、

 突進する影を貫いた。

 貫かれた“身体”は、

 ぐにゃりと崩れ、

 別人の顔へと縫い変わる。

「……本当に、気持ち悪い術だ」

 俺は舌打ちする。

 背後から気配。

 振り向くより早く、

 変形した腕の一撃が迫る。

 ――避けきれない。

 だが。

 ネクロマンスの縁が震えた。

 父の剣が、

 俺の意思より先に動いた。

 自律的な防御。

 火花が散り、

 衝撃が腕を痺れさせる。

「……成長しているな」

 小さく呟く。

 縁の干渉。

 ネクロマンス体は、

 戦闘を通じて“順応”している。

「クロウさん、右!」

 リリアの矢が放たれる。

 聖光を帯びた一射が、

 死装の肩を穿つ。

 黒い煙。

 肉の焦げる音。

 敵は一瞬だけ後退した。

「……今だ」

 俺は距離を取る。

「撤退する。

 ここは、敵の庭だ」

「……追われますよ!」

「だからこそだ」

 走る。

 狭い路地を抜け、

 人混みのある通りへ。

 死の気配が、

 背後から追い縋ってくる。

 ――追われる側になった。

 角を曲がった瞬間、

 俺は外套の内側から一冊の手帳を取り出した。

 革張り。

 使い古され、

 角は擦り切れている。

 ページを開く。

 そこには――

 ネクロマンサーの名と、能力の記録。

 そして、

 すでに始末した者の名は、黒く塗り潰されている。

 七つの黒塗り。

 その下に、

 まだ塗られていない名前。

 俺は指でなぞる。

 「エルミナ=クロス」

 能力:死装(肉体偽装・死体変形・外見転写)

「……間違いない」

 胸の奥で、

 名を噛みしめる。

「八人目だ」

 リリアが、息を整えながら訊く。

「……その手帳、何なんですか?」

 一瞬だけ、迷う。

「……“狩る相手の記録”だ」

 嘘ではない。

 だが、全てでもない。

 背後で、

 死の気配が再び近づく。

 追跡は続いている。

 敵はまだ、

 俺たちを試している。

 俺は手帳を閉じ、外套に戻す。

 次にこの名を開く時は――

 黒で塗り潰す時だ。

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