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終末のネクロマンサー  作者: あああ
ネクロマンサー狩り
12/72

012

夜のヴァルグレイは、静かすぎた。

 灯りに照らされた通りを歩く人々の足音が、

 どこかぎこちなく響く。

 ――紛れている。

 群衆の中に、

 死の気配が溶け込んでいる。

 ネクロマンスの縁が、微かに震えた。

「……近い」

 俺が低く呟くと、

 リリアも息を潜める。

「でも……

 誰なのか、まったく……」

「それが、狙いだ」

 敵は、

 “街の一部”になっている。

 広場の片隅で、

 一人の男がよろめいた。

「……う、腕が……」

 次の瞬間、

 背後から伸びた“何か”が、

 男の肩を貫いた。

 ――刃。

 だが、

 それは武器ではなかった。

 腕そのものが、斧へと変形していた。

 血が噴き上がる。

 悲鳴が上がる前に、

 男の身体は地面へ崩れ落ちた。

「来るぞ!」

 俺が踏み込む。

 人々が悲鳴を上げ、

 四散する。

 その混乱の中、

 敵の姿は――溶けた。

 次の瞬間、

 別の人間の背中に、

 “同じ死の匂い”が宿る。

「……っ、移動した!?」

 リリアの声が震える。

「違う……

 “着替えた”んだ」

 死装。

 顔。

 体格。

 歩き方。

 声。

 すべてを、

 死体のように作り替えている。

 俺の視界に映る通行人の中で、

 “誰が敵か”を判断できない。

 背後。

 気配。

 振り返ると、

 老婆が杖をついて立っていた。

 ――だが、縁が軋む。

 次の瞬間、

 杖を持つ腕が、刃へと歪んだ。

 振り下ろされる斬撃。

 俺は父の剣を展開し、受け止める。

 火花が散った。

「……ネクロマンサー狩りか。

 趣味が悪いね」

 掠れた声。

 だが、

 その声すら、偽物だ。

 次の瞬間、

 相手の顔が崩れた。

 皮膚が波打ち、

 骨格が歪み、

 別人の顔へと“縫い変わる”。

「……死装しそう

 なるほどな」

 俺は睨む。

「顔を捨て、

 肉体を着替える術か」

 敵は笑ったように見えた。

 だが、それも

 演技か、本心か分からない。

 突然、

 横合いから別の攻撃。

 今度は腕が槌へと変形し、

 地面を砕いた。

 建物の壁が削れ、

 破片が飛び散る。

「クロウさん!」

 リリアの矢が放たれる。

 淡い聖光を帯びた矢が、

 敵の肩を掠めた。

 肉が焦げ、

 黒い煙が上がる。

 だが――

 その瞬間、敵は別人の姿へと“切り替わった”。

「……ちっ」

 深追いはできない。

 街中だ。

 一般人を巻き込む。

 敵はそれを理解している。

 だからこそ、ここを狩り場にしている。

 数秒後、

 死の気配は霧のように薄れた。

 逃げられた。

 沈黙。

 割れた石畳。

 血の跡。

 泣き声。

 俺は拳を握る。

「……姿を自在に変えるネクロマンサー」

 リリアが震えた声で言う。

「街の中で戦うには……

 最悪の相手ですね」

「ああ」

 俺は答える。

「だが――

 必ず捕まえる」

 縁が、軋む。

 父の剣が低く鳴り、

 母の槍の気配が揺れた。

 ネクロマンス体が、

 わずかに“順応”し始めている。

 ――追う準備は整っている。

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