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第98節: 腐敗した宮廷

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

前回、アークシティの脅威を認識したギュンター辺境伯は、王都へ使者を送り、正規軍の派兵を要請しました。

今回は、その舞台をリオニス王国の首都、レオングラードへと移します。亜人の反乱という、誇張された報告。それを、腐敗した宮廷の貴族たちは、どう受け止めるのか。

アークシティの運命を左右する、王の決断。どうぞ、ご覧ください。

リオニス王国の首都、レオングラード。その中心にそびえ立つ白亜の王城は、建国以来五百年、一度も敵の侵入を許したことのない、絶対的な権威の象徴だった。だが、その、あまりにも長い平和は、獅子の紋章を掲げるこの国を、内側から、ゆっくりと、しかし、確実に蝕んでいた。


玉座の間。

高い天井には、巨大なシャンデリアが下がり、床には、磨き上げられた大理石が、贅を尽くした装飾を映し込んでいる。その、あまりにも華美な空間で、国王オルティウス七世は、退屈そうに、玉座の上で、頬杖をついていた。

彼の、たるんだ顎。虚ろな瞳。そして、女物の、香水のように、甘ったるい匂い。その、どれもが、かつて、建国の祖王が持っていたという、獅子の、勇猛さの、かけらさえも、感じさせなかった。


彼の、玉座の前には、色とりどりの、絹の服に、その身を包んだ、大貴族たちが、列をなしている。彼らの議題は、もはや、国政に関する、真剣な議論ではない。次の、宮廷舞踏会の、余興は、何にするか。誰の、娘が、一番、美しいか。そんな、中身のない、虚飾に満ちた、おしゃべりだけが、その場を、支配していた。


その、あまりにも、退廃的な、空気を、切り裂いたのは、一人の、伝令兵の、甲高い、声だった。

「申し上げます!


東部辺境伯、ギュンター様からの、緊急の、使者が、到着いたしました!」


その、場違いな、緊張感に、貴族たちの、おしゃべりが、ぴたりと、止む。

国王オルティウスは、面倒くさそうに、眉をひそめた。

「……ギュンター、だと?


……また、予算の増額の、陳情か。……あるいは、新しい、魔物の剥製でも、献上しに来たか。……通せ」


やがて、玉座の間に、通されたのは、長旅の、埃にまみれた、一人の、辺境騎士だった。彼は、その場に、深々と、膝をつくと、ギュンターからの、親書を、恭しく、侍従へと、手渡した。


侍従が、読み上げる、その、大仰な、美辞麗句に、彩られた、文章。

最初は、退屈そうに、聞いていた、国王と、貴族たちだった。だが、その、内容が、核心に、近づくにつれて、その、顔色を、変えていった。


『――見捨てられた土地に、突如として、出現せし、亜人の、武装集団。古代文明の、遺物を、悪用し、王国に対し、反旗を、翻す、兆候あり。……辺境の、安寧を、揺るがす、この、反乱の芽、一刻も早く、摘み取らねば、いずれ、王国全土を、脅かす、大火となるは、必至。……つきましては、陛下の、獅子の、ご威光の下、正規軍の、一部を、この、ギュンターに、お貸し与えいただき、逆賊どもを、討伐する、栄誉を、賜りたく……』


「……亜人の、反乱、だと……?」

誰かが、呆れたように、呟いた。

「……はっ!


何を、大袈裟な。あの、獣どもに、そんな、度胸が、あるものか」

「ギュンター卿も、いよいよ、耄碌したか。手柄欲しさに、話を、盛りすぎだ」

貴族たちの間から、くすくすと、嘲笑が漏れる。


だが、その、嘲笑の、中で。

何人かの、目の、血走った、貴族たちの、瞳の色が、変わっていた。

宰相の、オルデウス公爵。

財務大臣の、バザラード侯爵。

彼らは、この国の、富を、実質的に、牛耳る、最も、欲深い、ハイエナたちだった。


(……亜人の、反乱。……見捨てられた土地)

オルデウス公爵の、脳が、高速で、そろばんを弾く。

(……あの土地には、手付かずの、鉱物資源が、眠っている、という。……そして、亜人は、最高の、奴隷になる。……反乱、鎮圧、という、大義名分があれば、その、全てを、合法的に、手に入れることができる……!)


(古代文明の、遺物、だと……?)

バザラード侯爵の、唇が、貪欲に、歪む。

(……もし、それが、真実ならば。……その、価値は、計り知れん。……ギュンターの、田舎者に、独り占めさせるには、あまりにも、惜しい、宝だ……)


二人の、大貴族は、目と目で、合図を、交わした。

そして、オルデウス公爵が、一歩、前に出た。

「……陛下」

その、ねっとりとした、蛇のような、声。

「……これは、あるいは、ギュンター卿の、杞憂やもしれませぬ。……ですが、万が一、ということも、ございます。……亜人共が、増長し、王国の、権威に、泥を塗るような、真似を、許しておくわけには、参りません。……ここは、ギュンター卿の、忠義に、免じて、彼の、願いを、聞き入れてやるのが、王者の、度量というもの、では、ございませんかな?」


その、言葉に、バザラード侯爵も、すかさず、同調する。

「左様。……それに、辺境の、兵士たちも、長らく、平和に、浸かりすぎて、おります。……この、機会に、少しばかり、実戦の、経験を、積ませてやるのも、一興かと」


その、二人の、有力者の、言葉。

それは、この、腐敗した、宮廷においては、絶対の、決定力を持っていた。

他の、貴族たちも、長いものには巻かれろと、ばかりに、次々と、その意見に、賛同していく。

「いかにも!」

「反乱の芽は、早めに、摘むべきですな!」


玉座の上で、国王オルティウスは、退屈そうに、あくびを、一つした。

彼にとって、亜人が、どうなろうと、辺境の土地が、どうなろうと、どうでもいいことだった。

ただ、目の前の、面倒な、議論が、早く、終わってくれれば、それで、よかった。

「……うむ。……分かった。……では、宰相の、言う通りに、せよ」

その、あまりにも、軽い、一言が、遥か、東の、辺境の、小さな、理想郷の、運命を、決定づけた。

「……ギュンターに、許可を、与える。……正規軍の中から、一個、騎士団を、彼の、指揮下に、入れよ。……それで、よいな?」

「ははっ!


ありがたき、幸せに、存じます!」


宰相と、財務大臣は、その、欲望に、満ちた、顔に、満面の、笑みを浮かべて、深々と、頭を下げた。

こうして、アークシティ討伐軍の、派遣は、あまりにも、安易に、そして、あまりにも、愚かな、理由で、決定された。

彼らは、まだ、知らない。

自分たちが、今、目覚めさせようとしているのが、ただの、亜人の、集落などではなく、この、大陸の、勢力図を、根底から、塗り替える、恐るべき、眠れる、獅子であることを。

そして、その、愚かな、決断が、やがて、自分たちの、その、腐りきった、王国そのものを、滅びの、淵へと、追いやる、引き金になることを。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

リオニス王国の、腐敗した、宮廷の、様子が、少しでも、伝わりましたでしょうか。

彼らの、愚かで、貪欲な、決断によって、アークシティは、ついに、国家からの、本格的な、軍事介入を、招くことになりました。

次回、その、あまりにも、理不尽な、要求を、携えた、王国の、使者が、アークシティへと、やって来ます。

その、侮辱に、満ちた、要求に、ケイと、仲間たちは、どう、答えるのか。

物語は、いよいよ、開戦前夜へと、突入します。

「面白い!」「腐敗した宮廷、胸糞悪い!」「開戦、どうなる!?」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援が、アークシティの、戦士たちの、士気を、高めます!

次回もどうぞ、お楽しみに。

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