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第96節: 市民社会の産声

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。 皆様の温かい応援に支えられ、アークシティは、ついに、その、魂の、形を、得ようとしています。


前回、迫り来る、王国の、脅威に、対抗すべく、アークシティは、その、法と、秩序の、番人たる、『警備隊』を、設立しました。 都市の、内なる、守りは、固まった。 今回は、いよいよ、その、守るべき、理念の、象徴が、形となります。 第四巻『都市計画と法の制定』、堂々の、最終話。 どうぞ、その、歴史的な、瞬間を、お見届けください。

春の、最後の、雪が、名残惜しそうに、舞い散る、その日。 アークシティは、荘厳な、そして、晴れやかな、祝祭の、空気に、包まれていた。 中央広場の、中心。 そこには、この、数週間、ドゥーリン・ストーンハンマーが、その、魂の、全てを、注ぎ込んで、彫り上げていた、一つの、巨大な、芸術品が、白い、布に、覆われて、静かに、その時を、待っていた。 その、周囲を、二百人を超える、全ての、市民たちが、固唾を飲んで、見守っている。 彼らの、顔には、これから、始まる、歴史的な、瞬間に、立ち会う、誇りと、そして、厳粛な、緊張の色が、浮かんでいた。


やがて、庁舎の、バルコニーに、ケイ・フジワラが、その、姿を、現した。 彼の、両脇には、ガロウ、ドゥーリン、エリアーデ、ルナリア、リリナ、そして、新しく、警備隊長に、任命された、ハク。 アークシティの、未来を、担う、全ての、リーダーたちが、勢揃いしていた。


「――本日、ここに、集まってくれた、アークシティの、全ての、同胞たちよ」 ケイの、静かな、しかし、全ての、魂に、響き渡る、声が、広場に、響き渡る。 「我々は、この、数ヶ月。自らの、血と、汗と、そして、時には、涙を、流しながら、一つの、奇跡を、創り上げてきた。……この、アークシティという、我らの、新しい、故郷をだ」


彼の、言葉に、住民たちは、深く、頷いた。 その、脳裏に、これまでの、苦難の、道のりが、蘇る。 飢えと、寒さに、震えた、あの日々。 ゴブリンの、大群に、全てを、奪われかけた、あの、絶望の、夜。 そして、それらの、全ての、困難を、仲間と、共に、乗り越えてきた、誇らしい、記憶。


「我々は、家を、建てた。道を、作り、畑を、耕した。そして、鉄を、生み出し、法を、制定した。……だが、それだけでは、まだ、足りない」 ケイは、そこで、一度、言葉を切った。 そして、その、青い瞳に、深い、深い、決意の光を、宿らせた。


「我々には、魂の、拠り所が、必要だ。我々が、何者で、何を、信じ、そして、どこへ、向かうのか。その、揺るぎない、道標となる、永遠の、象徴が」


彼は、広場の中央、白い布に、覆われた、巨大な、何かを、指さした。 「――本日、ここに、我らが、アークシティの、魂の、礎が、完成したことを、宣言する!」


彼の、その、言葉を合図に、ガロウと、ドゥーリンが、バルコニーから、飛び降り、その、白い布の、両端を、掴んだ。 そして、二人が、同時に、力強く、その布を、引き剥がした、瞬間。


広場から、地鳴りのような、感嘆の、息が、漏れた。


そこにあったのは、一つの、巨大な、石碑だった。 高さ、五メートルを超える、黒曜石の、丘から、切り出された、一枚岩の、花崗岩。 その、鏡のように、磨き上げられた、表面には、この、世界の、どの、文字とも、違う、美しく、そして、力強い、文字が、びっしりと、刻み込まれていた。 それは、ケイが、この、都市のために、創り上げた、新しい、共通言語の、文字。 そして、そこに、刻まれていたのは、彼らの、未来の、全てを、照らす、あの、希望の、言葉だった。


『アーク憲章』


その、荘厳な、題字の、下に。 『第一条:全ての、市民は、法の下に、平等である』 その、革命的な、一条から、始まる、全、九十九条の、条文が、ドゥーリンの、神業によって、一文字、一文字、魂を込めて、刻み込まれていた。


それは、もはや、ただの、石碑ではなかった。 それは、この、都市の、全ての、民の、誓いと、理想が、結晶した、聖櫃アークそのものだった。


「――今日、この日より」 ケイの、声が、その、神々しい、モニュメントを前に、呆然と、立ち尽くす、市民たちの、心に、染み渡る。 「我々は、単なる、亜人の、寄せ集めでも、あるいは、力に、すがる、部族でもない。……我々は、この、アーク憲章という、共通の、魂の、下に、集う、一つの、『市民社会』となったのだ」


彼は、その、小さな、身体から、放たれる、全ての、カリスマを、解き放ち、最後の、言葉を、紡いだ。 「種族を、誇るな。血筋を、誇るな。個人の、力を、誇るな。……我らが、誇るべきは、ただ、一つ!


この、アーク憲章の、下に、生きる、『アーク市民』である、という、その、一点のみだ!


その、誇りを、胸に、我々は、これから、始まる、全ての、試練に、立ち向かう!


そうだろ、同胞たちよ!」


その、魂の、叫び。 それが、最後の、引き金となった。 次の瞬間、広場は、これまでの、どの、歓声とも、比較にならない、建国の、産声の、咆哮に、包まれた。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」


その、地鳴りのような、歓声は、いつまでも、いつまでも、春の、青空へと、響き渡っていった。 それは、アークシティという、新しい、都市が、その、肉体だけでなく、確かな、魂を、手に入れた、歴史的な、瞬間だった。 そして、その、あまりにも、力強く、そして、あまりにも、異質な、産声の、響きが、遥か、東の、王都にまで、届くことになるのを、まだ、この時、彼らは、知る由もなかった。


――第四巻・了――

最後までお読みいただき、誠に、ありがとうございました! これにて、第四巻『都市計画と法の制定』は、完結となります。


フロンティア村は、アークシティへと、その、名と、姿を、変え、そして、ついに、その、魂となる、『アーク憲章』を、手に入れました。 都市と、法。 国家の、礎は、ここに、築かれた。 感動的な、石碑の、除幕式が、少しでも、皆様の、心に、響いていれば、幸いです。


さて、次回より、物語は、いよいよ、第五巻『独立への試練』へと、突入します。 アークシティの、その、あまりにも、急激な、成長と、その、輝かしい、理想の、噂。 それは、ついに、リオニス王国の、獅子の、プライドを、逆撫でし、本格的な、軍事介入を、招くことになります。 ギュンター辺境伯が、率いる、王国の、正規軍。 その、圧倒的な、文明の、暴力を、前にして、産声を、上げたばかりの、この、理想郷は、果たして、生き残ることが、できるのでしょうか。


もし、この、物語の、続きが、気になる、ケイたちの、独立戦争を、応援したい、と思っていただけましたら、ぜひ、ブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、何卒、よろしくお願い申し上げます。 皆様からの、応援が、作者が、第五巻の、激戦を、描き切るための、何よりの、力となります。


それでは、また、新しい、章で、お会いしましょう! 本当に、ありがとうございました!

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