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第92節:民の総意:法治国家の誕生

『元・社畜SEの異世界再起動』に、多大なる、ご声援を、誠に、ありがとうございました。

皆様の、応援の、一つ一つが、アークシティの、血肉となり、礎となっております。

今後も、ケイと、その、仲間たちの、壮大な、物語を、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。


リーダーたちの、合意を、取り付けた、革新的な、法典、『アーク憲章』。

その、是非を、ついに、この都市の、全ての、民に、問う、歴史的な、『住民投票』の、物語です。

彼らは、果たして、どのような、未来を、選択するのか。

それでは、第四巻の第十九話となる第九十二話、お楽しみください。

新年が明けた、アークシティは、静かな、しかし、確かな、熱気に、包まれていた。

それは、単なる、年の、始まりを、祝う、熱気ではなかった。

それは、自分たちの、手で、自分たちの、未来を、決定するという、歴史的な、瞬間に、立ち会う、市民たちの、厳粛な、興奮だった。

『アーク憲章』。

その、草案が、リーダーたちの、合意を得て、全住民に、公開されてから、一週間。

都市の、様相は、一変した。


ケイの、指示の下、ドゥーリンの工房では、印刷機(これも、ケイが、前世の、グーテンベルクの、知識を、元に、ドゥーリンに、作らせた、簡易的な、活版印刷機だ)が、休むことなく、稼働し続けていた。

そこから、刷り出されるのは、難解な、条文の、羅列ではない。

ケイが、それぞれの、種族の、子供たちでも、理解できるように、平易な、言葉で、書き直し、そして、リリナの、絵心のある、仲間たちが、可愛らしい、挿絵を、加えた、何百部もの、『アーク憲章、かんたん解説パンフレット』だった。

その、パンフレットが、都市の、全ての、世帯に、配布された。

文字の、読めない、者のためには、ガロウの、部下たちが、あるいは、エリアーデの、弟子たちが、夜毎、集会所を、開き、その、内容を、読み聞かせ、そして、質疑応答の、場を、設けた。


都市は、一つの、巨大な、議論の、広場と、化した。

食卓で、親子が、法の、意味を、語り合う。

酒場で、友人たちが、刑罰の、重さについて、熱く、議論を、交わす。

誰もが、この、新しい、ルールを、「自分ごと」として、捉え、考え、そして、悩んだ。

それは、ケイが、最も、望んだ、光景だった。

トップダウンで、与えられるだけの、ルールではない。

ボトムアップで、全ての、民の、理解と、納得の、上に、築き上げられる、生きた、法。


そして、運命の、日。

アークシティが、その、産声を、上げてから、初めての、春の、満月の日。

第一回、『アークシティ市民総選挙』が、執り行われた。

議題は、ただ、一つ。

『アーク憲章を、我らが、都市の、最高法規として、承認するや、否や』。


中央広場には、ドゥーリンが、一夜にして、作り上げた、荘厳な、投票所が、設置されていた。

その、入り口には、ケイの、手によって、こう、記されている。

『汝の、一票が、この、都市の、未来を、創る』。


夜明けと、共に、投票は、始まった。

最初に、投票所に、姿を現したのは、ガロウだった。彼は、その、傷だらけの顔に、これまでに、見せたことのない、緊張の、面持ちを、浮かべ、自らの、手で、削り出したという、木製の、投票用紙に、震える、手で、『賛成』の、印を、刻み込むと、厳粛な、面持ちで、それを、投票箱へと、投じた。

それに、続くように、住民たちが、一人、また一人と、列を、作り始めた。

年老いた、ドワーフが、若い、狼獣人に、肩を、借りながら。

幼い、子供の、手を引いた、猫獣人の、母親が。

まだ、この都市の、言葉さえ、おぼつかない、蜥蜴人の、若者が。

誰もが、その、一票の、重みを、噛み締めながら、自らの、意志を、示していく。


ケイは、その、光景を、庁舎の、バルコニーから、ただ、静かに、見守っていた。

彼の、隣には、ルナリアと、エリアーデが、静かに、寄り添っている。

「……すごい、光景ですね、ケイ」

エリアーデが、感嘆の、息を漏らした。

「彼らは、もはや、ただの、難民では、ありません。……自らの、国の、未来を、自らの、手で、決定する、誇り高き、『市民』の、顔を、しています」

「ええ……」

ルナリアもまた、その、真紅の瞳を、潤ませながら、頷いた。

「……これが、ケイが、創りたかった、世界の、始まり、なのですね」


ケイは、答えなかった。

だが、その、青い瞳は、どこまでも、優しく、そして、誇らしげに、その、歴史的な、光景を、見つめていた。

彼の、脳内では、《アナライズ》が、投票に、訪れた、住民たちの、感情パラメータを、リアルタイムで、集計していた。

『感情パラメータ:希望、92%。責任感、88%。そして、……リーダーへの、信頼、99.8%』


投票は、日没と、共に、締め切られた。

そして、ガロウと、各部族の、リーダーたちが、見守る中、厳正な、開票作業が、始まった。

広場は、再び、静寂に、包まれた。

誰もが、固唾を飲んで、その、運命の、瞬間を、待っていた。


やがて、集計を、終えた、ガロウが、その、傷だらけの顔を、上げ、震える、声で、その、結果を、告げた。

「――投票総数、二百十七票!」

「――うち、『賛成』……!」


彼は、そこで、一度、言葉を切り、込み上げてくる、感情を、必死に、押し殺した。

そして、その、腹の底から、絞り出すような、歓喜の、声で、叫んだ。


「――二百十七票ッ!!!!」


棄権、ゼロ。

反対、ゼロ。

全会、一致。


その、言葉が、響き渡った、瞬間。

静寂は、爆発した。

これまでの、どの、歓声とも、比較にならない、魂の、底からの、歓喜の、咆哮が、夜空を、引き裂き、天まで、届いた。

抱き合う、者。泣き崩れる、者。そして、ただ、天を、仰ぎ、神に、感謝を、捧げる、者。

アーク憲章は、今、この、瞬間、単なる、紙の上の、理想から、二百十七の、魂の、総意によって、命を、吹き込まれた、生きた、法典と、なったのだ。


フロンティア村は、この日、死んだ。

そして、その、亡骸の上に、感情や、慣習、あるいは、一人の、カリスマの、支配ではなく。

ただ、絶対的な、『法』によって、治められる、大陸初の、そして、唯一の、多種族共栄法治国家、『アークシティ』が、確かに、産声を、上げたのだった。


ケイは、その、歴史的な、歓声の、渦の中で、静かに、目を閉じた。

彼の、プロジェクトは、また一つ、大きな、そして、後戻りのできない、フェーズへと、移行した。

だが、彼の、心は、不思議なほど、穏やかだった。

なぜなら、彼は、もはや、一人では、ないのだから。

彼の、背後には、二百十七人の、頼もしすぎる、仲間たちが、いるのだから。


その、歓喜の、夜は、いつまでも、いつまでも、続いた。

だが、その、祝福の、灯火が、まだ、この世界の、ほんの、片隅の、小さな、小さな、光でしかないことを、まだ、誰も、知らなかった。

そして、その、あまりにも、異質で、そして、あまりにも、眩しい、光を、遥か、東の、丘の、闇の中から、冷たい、冷たい、瞳で、見つめている、者たちの、存在に、まだ、誰も、気づいてはいなかった。

最後まで、お読みいただき、誠に、ありがとうございました!


ついに、『アーク憲章』は、民の、総意を得て、可決されました。

アークシティは、真の、法治国家として、その、歴史的な、第一歩を、踏み出しました。

感動的な、住民投票の、シーンが、少しでも、皆様の、心に、響いていれば、幸いです。


さて、法は、制定されました。

次回より、物語は、いよいよ、第24章『都市の胎動』へと、突入します。

完成に、近づく、都市の、輝かしい、姿。

そして、その、光が、強ければ、強いほど、色濃くなっていく、外の世界からの、影。

ついに、ギュンター辺境伯の、斥候が、その、姿を、現します。


この、壮大な、国創りの、物語を、どうぞ、よろしくお願い申し上げます!

「面白い!」「住民投票、感動した!」「ついに、法治国家、誕生!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の、一票が、アークシティの、未来を、創ります!


次回もどうぞ、お楽しみに。

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