第80節: 全住民参加(フルコミット)の一大プロジェクト
いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。
皆様の温かい応援に支えられ、アークシティ建設計画は、ついに、その、具体的な、一歩を、踏み出そうとしています。
前回、ケイの、最初の、仲間たちが、それぞれ、この、歴史的な、大事業において、重要な、役割を、担うことを、誓いました。
ドゥーリン、エリアーデ、そして、ガロウ。最強の、ドリームチームの、結成です。
今回は、いよいよ、その、壮大な、プロジェクトの、最初の、タスクが、実行されます。
ケイの、ユニークスキルが、今、この、大地そのものを、相手に、その、真価を、発揮します。
それでは、第四巻の第八話となる第八十話、お楽しみください。
アークシティ建設計画の、ドリームチームが結成された翌日の、夜明け前。
フロンティア村の、全ての住民――老いも、若きも、男も、女も、そして、子供たちさえもが、まだ、朝霧に包まれた、中央広場に、集結していた。
彼らの顔には、眠気など、微塵もなかった。
そこにあるのは、自分たちが、これから、歴史的な、大事業の、第一歩に、参加するのだという、強い、興奮と、そして、誇りの、光だけだった。
広場の、中央に組まれた、演台の上。
そこには、ケイと、彼が任命した、三人の、部門責任者たちが、静かに、立っていた。
「――皆、集まってくれたな」
ケイの、静かな、しかし、その場の、全員の、心に、響き渡る、声が、夜明け前の、冷たい、空気を、震わせた。
「本日、これより、『アークシティ建設計画』の、最初の、タスクを、実行する。……それは、この、僕たちの、故郷を、一度、僕たちの、手で、『解体』することから、始まる」
解体。
その、衝撃的な、言葉に、住民たちの間に、微かな、動揺が、走った。
自分たちが、血と、汗と、そして、時には、涙を、流しながら、築き上げてきた、この、愛すべき、フロンティア村を、壊す、と。
その、動揺を、読み取ったかのように、ガロウが、一歩、前に出た。
「うろたえるな、てめえら!」
その、雷鳴のような、一喝。
「大将の、言葉を、聞け!
俺たちは、過去に、しがみつくために、ここに、いるんじゃねえ!
未来を、創るために、ここに、いるんだろうが!」
その、魂の、叫び。
住民たちの、動揺が、静まり、彼らは、再び、ケイへと、その、真剣な、眼差しを、向けた。
ケイは、静かに、頷いた。
「そうだ。僕たちは、過去を、壊すのではない。未来を、創るための、更地を、作るんだ。……そして、その、記念すべき、最初の、一歩は、僕の、手で、行わせてもらう」
彼は、その場で、再び、目を閉じた。
そして、彼の、ユニークスキル【ワールド・アーキテクト】の、権能を、解放する。
だが、それは、これまでの、どの、使い方とも、違っていた。
「《アナライズ》、および、《プロジェクト・マネジメント》、同時起動。……対象、この、フロンティア村、全域。……これより、都市建設のための、第一次、タスク分解を、開始する」
瞬間。
ケイの、視界が、神の、それへと、変わった。
彼の、目の前に広がる、フロンティア村の、全景が、巨大な、三次元の、設計図へと、変換される。
そして、その、設計図の上に、彼が、昨日、夢の中で、完璧に、仕上げておいた、未来都市『アークシティ』の、青写真が、半透明の、レイヤーとなって、重ね合わされた。
(……誤差、修正。……現行の、井戸の位置を、基準点とし、全体の、座標軸を、再設定。……よし)
彼の、脳内で、二つの、異なる、時代の、設計図が、完全に、一つに、統合される。
そして、彼は、その、統合された、設計図の上で、これから、始まる、途方もない、建設作業の、全ての、工程を、シミュレーションし、そして、分解していく。
(……フェーズ1:インフラ整備。……タスク1-1:上下水道管の、敷設ルートの、確保。……担当、工務部隊、第一班。……必要リソース、鋼鉄製シャベル、五十。測量杭、三百。……期間、七日間)
(……タスク1-2:水道管の、製造。……担当、工務部隊、第二班、および、ドゥーリン殿、直属の、弟子たち。……必要リソース、高品質な、粘土、十トン。釉薬の、原料となる、鉱石……)
(……フェーズ2:区画整理。……タスク2-1:現存する、住居の、計画的、解体、および、資材の、再利用……)
何千、何万という、膨大な、タスク。
それらが、彼の、神の如き、思考速度によって、瞬時に、分解され、最適な、リソースが、割り当てられ、そして、完璧な、スケジュールが、組まれていく。
それは、もはや、人間の、領域の、作業ではなかった。
一つの、世界を、創造する、神の、シミュレーション、そのものだった。
やがて、ケイは、ゆっくりと、目を開けた。
彼の、青い瞳には、この、世界の、全ての、過去と、未来が、宿っているかのような、深い、深い、光が、湛えられていた。
そして、彼は、その、小さな、両の手を、再び、天へと、掲げた。
だが、それは、幻影を、見せるためではない。
それは、この、村に住む、全ての、仲間たちへと、その、魂に、直接、語りかけるための、儀式だった。
「――聞け、アークシティの、最初の、市民たちよ」
その声が、響き渡った、瞬間。
広場にいた、全ての、住民たちの、脳内に、直接、一つの、「仕様書」が、叩き込まれた。
それは、先日の、防衛戦の時と、同じ、魂の、コマンド。
だが、その、情報量は、比較にさえ、ならなかった。
『――ガロウ率いる、総務警備部、第一部隊は、これより、住居区画となる、東側エリアの、整地を開始せよ!
地ならしに、必要な、道具は、倉庫の、第三区画に、用意されている!』
『――ドゥーリン殿率いる、工務部隊は、二手に、分かれよ!
一方は、下水道の、本管を、掘り進める!
もう一方は、新しい、陶器用の、窯を、建設し、水道管の、試作品の、製造に、取り掛かれ!』
『――エリアーデ殿率いる、魔術部は、中央公園となる、この広場の、土壌の、浄化と、活性化を!
未来の、市民たちの、憩いの場に、相応しい、聖域を、創り上げるのだ!』
『――そして、リリナ率いる、斥候部隊は……』
一人、また一人と、全ての、住民に、その、魂に、直接、語りかけるように、具体的で、そして、完璧な、タスクが、割り振られていく。
戦士も、職人も、女も、子供も、年寄りも。
誰一人、例外なく。
この、都市建設という、巨大な、プロジェクトにおける、自らの、役割が、与えられた。
彼らの、頭の中に、流れ込んでくるのは、単なる、命令ではない。
自分が、これから、行う、作業の、具体的な、手順。
仲間と、どう、連携すべきかの、最適な、方法。
そして、何よりも、その、一つ一つの、地道な、作業が、あの、光り輝く、未来都市の、どの部分を、創り上げることになるのか。
その、壮大な、全体像と、自らの、役割の、重要性。
その全てを、彼らは、完全に、理解した。
彼らの、顔から、迷いも、不安も、完全に、消え去っていた。
そこにあるのは、自らに与えられた、誇り高い、役割を、必ずや、成し遂げてみせるという、開拓者たちの、燃えるような、決意の、光だけだった。
「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」
夜明け前の、静寂を、切り裂いて、二百人を超える、魂の、雄叫びが、上がった。
それは、戦いの、咆哮ではない。
創造の、産声だった。
その、地鳴りのような、雄叫びを、合図に。
フロンティア村の、全ての住民が、まるで、一つの、巨大な、そして、完璧に、統率された、生命体のように、動き始めた。
彼らは、それぞれの、持ち場へと、嵐のような勢いで、駆け出していく。
その、動きには、一切の、無駄も、淀みも、ない。
庁舎の、バルコニーの上で。
ケイは、その、あまりにも、美しく、そして、あまりにも、力強い、創造の、始まりの光景を、静かに、見つめていた。
彼の、プロジェクトは、ついに、その、実装フェーズへと、移行した。
それは、単なる、建物の、建設ではない。
様々な、種族が、一つの、理想の下に、手を取り合い、自らの、手で、未来を、築き上げていく、新しい、社会の、「システム」そのものを、構築していく、壮大な、実験の、始まりだった。
東の、空が、ゆっくりと、白み始める。
新しい、一日。
そして、新しい、時代の、夜明け。
その、最初の、光を、浴びながら、アークシティは、確かに、その、最初の、産声を、上げたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに、アークシティ建設プロジェクトが、本格的に、始動しました。
ケイの、神の如き、プロジェクトマネジメント能力によって、村の、全ての住民が、一つの、巨大な、生命体のように、動き始めます。
これにて、第20章『青写真』は、完結となります。
次回より、物語は、いよいよ、第21章『石と水』へと、突入します。
壮大な、都市建設プロジェクトの、具体的な、作業が、描かれていきます。
ケイが、前世の、知識を、解放する時、この、異世界に、どのような、驚くべき、技術革新が、もたらされるのか。
どうぞ、ご期待ください。
「面白い!」「プロジェクト始動、熱い!」「全住民参加、すごい!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援が、アークシティの、最初の、礎石を、積み上げる、力となります!
次回もどうぞ、お楽しみに。




