第152節: 北方ドワーフ国家の関心
いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます! 第七巻『外交戦線』その第三十八章『外交の舞台』も、いよいよ佳境に入ってまいりました。
前回 アーク連邦の全権大使エリアーデは、外交サロン『白亜の円卓』で、宿敵リオニス王国の外交官から公然たる侮辱を受けました。しかし 彼女は その屈辱に ケイが託した二つの切り札――『機械式時計』と『魔導銃』を使い あまりにも鮮やかなカウンターを決めました 。 その衝撃的なプレゼンテーションは、サロンに集う全ての外交官たちに アーク連邦の規格外の技術力を強烈に印象付けたのです 。
今回は、その撒かれた餌に 真っ先に食いついてきた ある大国の使節との水面下の駆け引きが始まります。 どうぞ その息詰まる交渉の幕開けをお楽しみください。
サロン『白亜の円卓』で エリアーデ・ウィンドソングが鋼鉄の鎧を銃で撃ち抜いてみせたあの夜 。 あの日を境に 中立都市クロスロードの空気は 一変した。 街の酒場 商人たちの会合 そして各国の使節が密談を交わす全ての場所で たった一つの名前が 熱を帯びた囁き声と共に 語られるようになっていた。 『アーク連邦』。 そして、その指導者『ケイ・フジワラ』。
「聞いたか? あのエルフの女大使 リオニスのバルテルミー侯爵の顔に 水をぶっかけたそうだ」 「ああ。だが、本当の恐怖はその後だ。あいつら 手のひらサイズの『時計』なる魔道具で 時間を正確に刻んでみせたらしい」 「それだけじゃねえ。騎士の鎧を 紙屑のように貫く 新型の『魔導銃』……。辺境伯の軍勢を壊滅させたのは アレの量産品だという噂だ」 「馬鹿な……。そんな技術 どこの国のものだ……」 「だから 言っただろ。『アーク連邦』さ」
嘲笑と侮蔑は 一夜にして 畏怖と、そして強欲な好奇心へと変わっていた。 アーク連邦の使節団が滞在する宿屋の前には その「おこぼれ」にあずかろうとする中小の商人たちが 朝から晩まで群れをなしていた 。 だが、エリアーデは ケイからの厳命を守り それら雑多な商人たちとの接触を 一切断っていた。彼女の翡翠の瞳が待っていたのは、もっと大物。このゲームの盤面を 本気で動かす意志のある 本物の「プレイヤー」だった。
そして、そのプレイヤーは 彼女の予想通り 最も早く その姿を現した。 サロンでの事件から、二日後の夜。 宿屋の部屋を 極秘裏に訪れた者がいた。 「……アーク連邦の大使殿に、お目通りを願いたい。……我が主君からの 親書を お持ちした」 リリナの 猫の耳が その男の声色と 息遣いから 彼が ただの使者ではないことを 即座に 看破していた。 エリアーデが 静かに頷くと リリナは 音もなく扉を開け その訪問者を 中へと招き入れた。
入ってきたのは 三人。 商人風の 地味な外套を羽織ってはいるが、その 外套の下から滲み出る 鋼鉄のような 屈強な体躯。そして 腰まで 見事に編み込まれた その 髭。 彼らが ドワーフであることは 一目瞭然だった 。 先頭に立つ ひときわ 威厳のある 片目のドワーフが フードを取り その 歴戦の勇士の顔を 露わにした。
「……改めて名乗らせていただく。……わしは、『ドルゴ』。北のゴルディア王国にて 王の 片腕を 務めさせてもらっておる者だ」 その 岩が擦れるような 低い声。それは 昨夜 サロンでエリアーデたちを値踏みしていた 他の どの外交官とも 異質な 本物の 戦士の響きを持っていた。 ゴルディア王国。 ケイが この外交戦線における 最大のターゲットとして 指定していた リオニス王国の 宿敵 。 ついに 本命が 食いついてきた。
「……これは これは。……ゴルディア王国 宰相補佐官閣下に 直々にお越しいただけるとは 光栄ですわ」 エリアーデは その美しい顔に 完璧な笑みを浮かべ 優雅に 一礼した。 彼女の その 一言。 ドルゴの 片目が 驚愕に 見開かれた。 「……ほう。……わしが ただの 『商人』ではないと お見抜きになられたか。……噂に違わぬ エルフの ご慧眼 恐れ入ったわい」 彼らの 腹の探り合いは 既に 始まっていた。
「……単刀直入に 伺いましょう、ドルゴ閣下」 エリアーデは 駆け引きを 好まなかった。ケイから学んだ 最も 効率的な 交渉術。それは 相手の 本質的な 要求を 見抜き それに対して 最短の 答えを 提示すること。 「……あなた方が この アーク連邦に お望みのものは 何ですの?」
その あまりにも 真っ直ぐな 問い。 ドルゴは 一瞬 ためらった。だが、彼は この 若く 美しい、しかし 底の知れない エルフの大使を 小手先の 駆け引きで 丸め込める 相手ではないと 即座に 判断した。 「……二つ ある」 彼は その 無骨な 指を 二本 立てた。 「一つ。……貴殿らの その 恐るべき 技術力。……特に あの 『魔導銃』とやら。……あれは 誠に 量産が 可能なのか?」 「二つ」 彼の 声が 一段 低くなった。 「……貴殿らの その 指導者 ケイ・フジワラ。……彼は 本気で あの リオニス王国と 戦争を する つもりか?」
それこそが 彼らの 本題だった。 アーク連邦は リオニス王国を 本気で 脅かし得る 力を持っているのか。そして その 意志を 持っているのか。 ゴルディア王国にとって アーク連邦は リオニスという 共通の敵を 挟撃するための 最高の 『同盟相手』と なり得る可能性を 秘めていたのだ 。
エリアーデは この 問いが 来ることを 完全に 予測していた。 そして ケイから その 答えも 授かっていた。 彼女は 静かに そして 堂々と その 答えを 返した。 「――その 答えは イエス、であり、ノー、ですわ」
最後までお読みいただき、ありがとうございます! ついに アーク連邦の 最初の 交渉相手 ゴルディア王国が その姿を 現しました。 彼らの 目的は 明確。アークの 技術力と 戦争への 覚悟。 それに対し エリアーデが 返した 謎めいた 答え。「イエスであり、ノー」。 その 真意とは 一体 何なのでしょうか。
次回 ついに 両国の 本格的な 秘密会談が 始まります。 ケイから 託された 外交シナリオ。 エリアーデの 華麗なる 交渉術が 今 火を噴きます。 どうぞ ご期待ください。
「面白い!」「ゴルディア王国 来た!」「エリアーデ様の 交渉術 楽しみ!」など、思っていただけましたら ぜひブックマークと ↓の☆☆☆☆☆での 評価を お願いいたします。皆様の応援が アーク連邦の 最初の 同盟を 引き寄せます!




